温泉の健康効果を医学的見地から解き明かした『医者が教える最強の温泉習慣』が話題を集める医学博士の一石英一郎氏。『ホンマでっか!?TV』への出演も話題となった一石氏が語る「健康効果を効果的に得る温泉の入り方」とは? 今回は夏こそ知っておきたい「サウナの利用法」を解説。(以下、一石氏の寄稿)


◆むちゃな入り方は、温度差で血管にダメージ

 サウナをよく利用するという方はいらっしゃるでしょうか? 私も温泉や銭湯を利用するときに見かけますが、サウナから水風呂に直行して、しばらくすると再びサウナに戻ることを繰り返している人がいます。

 こうした行為を私自身は試したことはないのですが、おそらく気持ちいいのでしょう。しかし、100度を超えるサウナから20度程度の水風呂に飛び込むわけですから、温度差は約80度にも達し、ある意味、自ら温泉事故を引き起こしているようなもの。医師としては厳に慎んでいただきたいと思います。

 なぜ急激な温度変化が危険なのでしょうか? それは血圧の急変や血管が壊れることに繋がるからです。たとえ体力のある若い頃に耐えられたとしても、年齢を重ねて体力が低下すると、やはり失神など大きな事故につながりなりかねません。

 ですから、こうした危険な行為が習慣になってしまう前にやめておいた方が賢明でしょう。水風呂で“天国”のような快感を得ることができたとしても、その先は“地獄”かもしれないわけですから……。

◆「サウナ5分、水風呂1分」×3がいい。いきなり飛びこまないこと!

 しかし、サウナや水風呂は、正しく利用すれば、むしろ健康にメリットをもたらしてくれる可能性があります。たとえば、水風呂とサウナを交互に入ることで、血管が広がったり狭くなったりしますから、ポンプのようにはたらき血流はかなりよくなるといったことです。

 ここでポイントになるのは、“間隔”です。ポンプを押すときのように、正しいタイミングを意識することで、健康メリットを安全に享受することができます。逆に、急いでサウナと水風呂を往復すると、急激な温度変化に耐えられず「血圧サージ」という血圧急変を起こしてしまいますから、これはまさに力任せにポンプを使って壊してしまうのと同じです。

 それでは、具体的にサウナと水風呂を利用する手順を説明しましょう。まず、サウナから水風呂に移るときには、かけ湯と同じ要領で手足の末端から、胸などの中央部まで、少しずつ水をかけて水温に慣れてください。水風呂に入る前に、いったん“ぬるめの”お湯に浸かるのもお勧めです。

 水風呂に浸かるときにも、いきなり肩までザブンと入るのではなく、まずは腰まで浸かり、そこから1分以上かけて、ゆっくりと胸元まで浸かるペースをイメージしましょう。また、水風呂に長く浸かりすぎると身体が冷え切ってしまいますから、あまりゆっくりせず1分以内に外に出るようにしてください。

 サウナと水風呂のサイクルについては、論文発表があります。これは日本人を対象にしたサウナ研究なのですが、「サウナ5分」と「水風呂1分」を1クールとして、これを3回続けると疲労回復や気分転換にいいようです。

◆血管の破裂を招く“寒暖差”は、こうして防ぐ

 このように、温泉にせよサウナにせよ、利用するにあたっては、寒暖差に気をつける必要があります。それでも、なかには真冬の露天風呂の風情を楽しみたいという方もいるかもしれません。そうした場合は、羽織るものを1枚持っていくことを勧めます。お湯から出るときに身に着けておけば急激な温度変化を避けることができ、温泉事故のリスクを減らすことができるでしょう。

 ただし、体力の弱い高齢者や子ども、あるいは不整脈や高血圧などの持病がある方は、血管が弱っている可能性が高く、弱った血管が寒暖差の刺激によって壊れてしまうかもしれません。血管に作用する降圧剤や血管拡張剤などを常用されている方も同様のリスクがありますので、そうした人はサウナや水風呂、真冬の露天風呂はやめておきましょう。

それでは、脱衣所が寒かったり、温泉から宿に帰る途中の道が寒かったりなど、避けられない状況のときは、どのようにすればいいのでしょうか? そのときは、まずはタオルでちゃんと身体を拭くことを心がけてください。水分の蒸散を防ぐことにより、体温が失われるのを阻止してくれます。入浴後に温かい飲み物で水分補給をするのも効果的です。

 最後に、私が中学校の頃に先生から教わった「足に冷水をかける」という方法もご紹介したいと思います。私は医師になってからこのメカニズムを検証したのですが、足などの末梢部から体温が逃げていくのを、あらかじめ冷水をかけて毛穴を収縮させておくことで防止できるようです。

 冷水をかけるといっても、身体はポカポカ温かくなっていますから、それほど冷たさは感じないでしょう。シンプルな方法ですが、効果は確かですのでぜひやってみてください。

【一石 英一郎】
1965年、兵庫県生まれ。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授。日本内科学会の指導医として医療現場の最前線を牽引する一方、伝統医療と西洋医療との知見の融合にも造詣が深い。温泉入浴指導員の資格も有するなど、温泉を活用した健康増進にも精通する。著書『医者が教える最強の温泉習慣』が発売中