経済的メリットはなし、健康被害も大。EU諸国では「脱サマータイム」の声が高まっている
筆者が住むヨーロッパでは、現在サマータイムを採用している。3月の最後の週から2番目の週末の日曜夜中2時に時計の針を1時間進ませて3時にする。夜中の2時に態々起きて時計の針を進ませることは面倒。寝る前に針を1時間進めておくのが一般化している。だからいつも一定の時間に起床する人はその日は1時間睡眠時間が少なくなる。
冬時間に戻すのは10月の同じ最後の週から2番目の週末に同じ作業を行うのであるが、今度は3時になった時点で時計の針を2時に戻すのである。だから、その日は1時間余分に寝ることができる。
この様な面倒な作業を欧州共同体の加盟国が一致して行うようになったのは1981年からである。
もともとヨーロッパでサマータイム制度を広く設けるようになったのは第一次世界大戦中の1916年であった。石炭の消費を節約するのが目的であった。その後も賛否両論分かれていたが、1970年代の石油危機が発生してから石油消費の節減というのが主要課題となって1974年にヨーロッパ全域でサマータイム制度が普及するようになった。
◆欧州ではサマータイム廃止の声が高まる
ところが、最近になって時間変更に反対する意見が多くなっている。
この制度の廃止に向けて欧州議会で審議するように要請したのはサマータイム制度反対に7万7000人の署名を集めたフィンランドであった。フィンランドの夏は日没時間は僅かで、冬になると逆に日照時間がほんの僅かとなる。このような環境下でサマータイムの採用は省エネという面においても意味がないのである。むしろ、体調管理に弊害があることが問題視されている。
結局、フィンランドが提案した動議は欧州議会で賛成384、反対153、棄権12という採決となり、これについて調査委員会が設けられることになっている。その前に、欧州委員会は加盟国の市民の意見を聞きたいとして8月16日までネットを通して市民が賛成か反対かの意見を伝えることができるようになっている。これで集めた意見を参考にしてサマータイム制度を廃止するか否か同委員会の方針を決めたいとしている。(参照:「Bolsamania」、「SER」)
◆ポーランドはすでに脱サマータイムを決定
しかし、この決定を待つまでもなく、欧州委員会の反逆児ポーランドは、来年からサマータイム制度を採用しないという方針を固めている。
同様に、ヨーロッパの中央部から北部に位置するドイツ、ベルギー、オランダ、スェーデンそしてフランスも省エネへの効果は少なく、むしろ体調管理に弊害が多いとしてこの時間変更制度に反対してサマータイムの廃止に強い関心を示している。(参照:「Bolsamania」)
南欧でもサマータイムの採用に反対する意見が次第に増えている。
スペイン時間合理化委員会(Arhoe)の会長ホセ・ルイス・カセロは、欧州共同体でのサマータイム制度の廃止を主張している。彼は「時間の変更は健康維持に有害であり、それを専門家も裏付けしている」と述べ、更に、「経済面以上に、市民の福祉が大事で、ヨーロッパ市民の健康と休息が最も重要である。24時間の生活の周期を変えるということは全ての人間に悪影響を及ぼすものだ」と強調した。(参照:「El Economista」)
◆サマータイム制で危惧される健康被害
2008年のスェーデンでの研究では、サマータイムに変更して最初の3日間で、心臓発作が生じる可能性が5%高くなるということが明かにされているという。
また、別の研究では、時間を変更した翌日月曜は交通事故に合う可能性が高いという報告もあるそうだ。(参照:「El Pais」)