第5節 界宝の真実
キリトは俺が倒す。
一体どういうことだ…?
ここは異世界。
前世の俺が創ったアイテムが存在するはずがないのだ。
しかし、存在しているのは事実だしファンネが言った能力も俺が創ったものと同じ。
考えれば考えるほど、分からない。
天才的頭脳を持ってしても、分からない。
とりあえず考えるのをやめた。
「まあ…素敵なネックレス!創った人のお顔を拝見したいほどに素敵なネックレスです!」
「ええ、そうでしょう!けれど、界宝というのは2000年前に突然、世界中に現れたもので創り手はいまだに判明していないのよねぇ…。」
「そうなのですか…。」
そりゃ創ったの俺だし。
ん、2000年前…?ということは
「勇者伝説と何か関係があるものなのですか?」
「そうなのよぉ。2000年前、勇者達が魔王を倒したと同時に世界各地に突如現れたアイテム、それこそが界宝なの。」
俺が遊び半分で創ったアイテムが異世界でなんかすごいアイテムになってた件。
しかし…さらに分からんぞ?
2000年前とか俺、生まれてすらいないし。
いや、天才の俺なら無意識のうちに2000年前の異世界にアイテム送っちゃうことも有り得る…か?
いやー俺、天才だしなぁ。多分そんな感じだろう。
「しかし…これは一体どこで手に入れたものなのですか?世界に108個しかない貴重なものなのでしょう?」
ほんまになんでお前さんが持っとんねん。
「ええ!?……そうねぇ……この屋敷の宝物庫にたまたま落ちてたのよぉ!そう、たまたま!」
「なるほど!流石は私の家ですね!」
考えてみれば、この屋敷は天才の俺が住んでいる場所なのだ。伝説のアイテムの1つや2つくらいあって当然だろう。
「ホッ…。じゃあ、付けてみてくれないかしら?」
「はい、分かりました!」
そう言って俺はネックレスを身に付ける。
前世の俺が創った完璧なデザインのネックレス、それはもちろん完璧天才美少女の俺に似合ってしまうのだった。
流石、天才である。
「あらぁ…!やっぱりフォルテは何を付けても似合うわねぇ。うちの自慢の娘よ。」
そうだろうそうだろう。
「っ〜!やめてくださいお母様!その…恥ずかしい…です…。」
「あらあら、照れちゃってぇ。とにかく、それは肌身離さず身に付けておくこと!きっとそれがあれば1回くらい死にかけても大丈夫よ!」
「はい、こんな素敵なネックレスですもの。言われなくとも離しません。」
そりゃあ元々は俺のものなのだ。無意識のうちにどっかに行ったりしなければ、離すはずがない。
「分かればよろしい!さ、明日は早いのだから今日はもう寝なさい。」
天才の俺は睡眠なんぞ取らなくてもきっと大丈夫なのだが、ファンネがそう言うのならば仕方がない。
「分かりました。それでは、おやすみなさい。」
「ええ、おやすみ。」
そう言い終わると同時に、ファンネは足早に俺の部屋を出て行った。
さて、明日はいよいよ勇者召喚の儀だ。
待ってろよ、勇者!
必ずや、俺のこの天才的美貌で籠絡して仲間になって俺を守らせてやるぜ!
とりあえず今日は…
寝る!
実は前世は天才小説家でした。