第4節 魔王と勇者
どうも、小学生並の語彙力です。
衝撃の神託を受けてから1週間。
外出を許可されたものの、俺は絶賛引きこもり中だった。
「このステータスで外出とか死ぬよぉ…スペランカーだよぉ…!」
もちろん天才の俺の唯一の弱点であるこの貧弱極まりないステータスを教えるはずもなく、ファンネとミリエ、あと神父には一般神託女性のステータスの平均値を教えておいた。天才は弱味を見せないのである。
だがしかし、いくら嘘をついたところで実際のステータスは変わらないのだ。
なので死を回避するために今まで通り、屋敷の中で生活しているというわけである。
「しかし、一体どういうことなんだ…?天才のはずの俺のステータスが最低値だなんて。」
自慢じゃないが、前世の俺はタックルで壁に穴をあけるほどの攻撃力、自転車に轢かれても全治1週間で済む防御力、50m走8.9秒の敏捷性を持ち合わせていた。
だが、今の俺はどうだ。タックルなんかしたら間違いなく反動で瀕死になるし。捨て身タックルだし。
この前は、たまたま屋敷にいた亀にかけっこで負けたし。
よく12年間生きてられたな、俺。
天才だからかな?
「………元の世界に帰りてえ。」
俺はこの世界に来たことを後悔していた。
どうせ俺の天才パワーでいつでも戻ってこれるっしょwとか思ってたのが馬鹿馬鹿しい。天才だが。
元の世界に帰るための魔法は知識としては頭の中にあるが、それを使う魔力がなかったのだ。
しかし、天才の俺は知っていた。魔力最大値を増やすアイテムが存在することを。
だって前世で俺が創れたし。
ならば、この世界にも存在すること間違いなしだ。
なんて天才的考察。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「とりあえずはそのアイテムを見つけ出すことが目標だな…。」
「フォルテ、入るわよぉ。」
コンコンとノックをしながら俺の返事も待たずにファンネが入ってきた。びっくりした。
「何か用でしょうか?」
「勇者召喚の儀の話よ。あなたが見に行きたいって言ったんじゃない。まさか神託の余韻に浸って忘れてたーとかじゃないわよねぇ?」
「あ…。」
て、天才の俺が忘れているはずがないのだ。ちょっぴり神託の結果がアレだったから頭から抜けていただけである。
そう、勇者召喚の儀。2000年前、突如この世界、人界の裏側、魔界より現れた魔族、そしてそれを統べる魔王。女神マビエルはそれらを討ち滅ぼさんがために人族の王に召喚魔法を授けた。
人族の王はその魔法を使い、異世界より4人の勇者を召喚した。
勇者はそれぞれが一騎当千、瞬く間に魔族達を倒し、遂には魔王の首をも取り、世界に平和をもたらした。
その後、勇者は召喚魔法を悪用されないように王国を4つに分け、それぞれの国に仕えた。というのが今に伝わる勇者伝説の内容だ。
しかし5年前、新たなる魔王、ガルドが誕生した。
彼は人族に対し宣戦布告をし、瞬く間に人界のうち、2割は魔族に奪われてしまった。
人だってやられたままじゃあいられない。
おっと4国の王、召喚魔法を使おうとしている!
しかし!魔力が足りない!あと5年で溜まる!それまで持ちこたえるんだ!ってなわけで兵士達は頑張って持ちこたえているのだ!
すごいぞ兵士!負けるな兵士!
で、明日が魔力が溜まる日ってワケ。
たまたま召喚はここ、剣の勇者が仕えたアレクシア剣王国で行われる。天才の俺は運も良いのだ。
見に行く目的は2つ。
1つは、もし同郷のやつがいたら話がしたい。
そう、天才の俺はちょっぴりホームシックなのだ。
そして2つ目は、勇者の仲間になって世界を救うこと…だったがステータスがあまりにも酷かったのでそれは無理だろう。
だが、この屋敷にいてもいずれ魔族はやってくる。
こんな貧弱ステータスじゃ魔族に孕まされてできちゃった婚して幸せな新婚生活を送ってしまうのがオチだ。
そんなのは死んでもごめんなので、俺は考えた。
魔王並の化け物ステータスの勇者の近くにいれば魔族が来ても守ってもらえるんじゃね?と…。
だから2つ目の目的は勇者の仲間になること、だ。
前とほとんど変わってない?合理的かつ天才的に考えた結果だ。文句あんのか。
「もちろん忘れてなんかいないわお母様。ずっと待ち焦がれていたんですもの。」
「ならいいけれど…。フォルテ、あなたに渡すものがあるの。これを。」
そう言ってファンネは木箱を取り出した。
「これは?」
天才の俺に貢ぐんだ。それ相応のものじゃないと…キレちまうぜ?
「この世界に伝わる108の界宝が1つ、必ず1度だけ幸運が訪れる界宝、『
「『
界宝…ってなんだ?よく分からないが天才にふさわしいアイテムであることは確かだろう。中々やるじゃねえか。
「だって…勇者召喚の儀は人族にとっての切り札。もしかしたらそれを狙ってくる魔族もいるかもしれないじゃない?それに巻き込まれないようにするための…お守りよ。」
キュン…ファンネ…そんなにも俺のことを…。
こんなの泣いちまうじゃねえか…。
天才の目にも涙、ってな!
「お母様…。」
「あらあら、泣いちゃってぇ。さ、私に付ける姿を見せてちょうだい!」
「分かりました!お母様!」
見せてやろうじゃねえか!超絶天才美少女の本気ってやつを!
俺の可憐な右手がその木箱の蓋を取る。
「これは…。」
眩く輝く。
このネックレス、ほとんどが金で出来ているのだ。
しかし、貴族が身につけているような卑しさを感じさせるものではなく、そうまるで神話に出てくる女神が身につけているような癒しの金。
そして最も語るべきは真ん中に輝く第ニの太陽。
真ん中に嵌められた赤い宝石は全てを見通していると言わんばかりの透き通った美しさ。
それが金色と混ざり合うことで完璧とも言える均整を成している。
そう、これはまるで…
主人公がTSしたのは僕が興奮するからです。