芸術家「テオ・ヤンセン」の作るビニールパイプの動物「ストランドビースト」は、多くの方がご存じだろうとは思います。その造形美や動きは、思わず見入ってしまいますよね◎
そして最近、NASAがテオさんのストランドビーストに着目し、テオさんを金星探索の会議に招待してストランドビーストについての構造知識を求めたのです。
もしかしたら近い将来、テオさんの考案した虫歩きが探査船として金星で見られるかも!
thumbnail photo by Theo Jansen
テオ・ヤンセンとストランドビーストとは?
photo by Ekaterina Izmestieva
1948年3月17日、オランダ・ホランド州、スヘフェニンゲンで生まれた「テオ・ヤンセン(Theo Jansen)」さんは、デルフト工科大学で物理学を学び、1975年からは方向性を変え、画家として活動をしていました。
そして1990年、かつて学んだ物理学の知識を応用して、風力で動作する「ストランドビースト」の制作を開始します。
photo by Theo Jansen
「ストランドビースト」とは、ポリ塩化ビニールパイプ(PVC)で構成されており、風よって命が吹き込まれ、まるで生物のような歩行をしたり、這い回ったりする造形作品のことです。
photo by Theo Jansen
テオさんによると、初めの頃の作品は「原始的なビースト」と言うだけあって、パイプどうしを粘着テープで接合しただけのもの。
ちなみに彼は、それまで特に動物の研究などをしたことがまったくありませんでした。
しかし、ストランドビーストが風を受けた瞬間、驚くほどスムーズが動き出したのです!そうして彼は、独自の動力メカニズムを誕生させました。
ビーストから見いだされたある数字
photo by Tested
一脚を構成する各パイプの長さの比率は、「ホーリーナンバー」と呼ばれる13の数字で示されており、テオさんは、各部位を細胞(セル)と呼んでストランドビーストを構成する基本単位としているようです。
どのストランドビーストも、11本のパイプからなるクランク式の歩行システムを備えており、パイプの長さはそれぞれの比率が完璧に計算されています。
photo by Theo Jansen
ビーストは水平に、滑るように動くことができ、テオさんは1991年にビーストの「遺伝的アルゴリズム」を開発し、以降ずっと似た動きの新しいビーストを設計する際にこのシステムを利用してきました。
その後、結束バンドなどを使って改良したビーストや、木材を素材とした巨大なもの、さらにペットボトルを利用したものなど、ビーストは今も進化し続けています。
世界中で展示会、さらにTEDに登壇
テオさんは、これまで50体以上のストランドビーストを制作し、世界中で展示してきました。
2007年には、「TED Talks」に登壇し、多くの人々にストランドビーストの造形美を披露しました。
テオさんは、現在も生まれ故郷のオランダ・スへフェニンゲンの砂浜で、ストランドビーストの実験を繰り返しています。
「化学」と「芸術」。「ストランドビースト」によってその相容れない2つの分野が見事、1つに融合したのです!
金星探査にビースト構造が使用されるかも
さらにテオさんは、アメリカ航空宇宙局「NASA」に招かれ、金星探索に向けた会議に参加し、ストランドビーストについて色々と話し合ったようです。
もしかしたら近い将来、ストランドビーストの毛虫歩きを搭載した探査船を金星で見ることが出来るかもしれませんね!
テオさんは、様々なインタビューでストランドビーストについて常にこう語っています。
「私の望みは、この惑星を去る前に、この世界に新しい見本を残すことです。この動物が、いつか私から完全に独立し、新種として生きる続けることを夢見ています」
今でこそ芸術家として有名になったテオ・ヤンセンさんですが、成功前はきっと相当な苦労をなさったはずです。しかし、それにくじけず、研究を続けてきたからこそ今の彼があるのです。
私たちもテオさんの芸術魂は真似することが出来なくても、忍耐力そのものは見習うことができるかもしれませんね。
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