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「1杯の完璧なビール」のためにお店はどんなことをしているか?評判のビヤホールの話を聞いてきた

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こんにちは、ちみをです。血液がビールで出来ています。
今回は取材と称して完全に飲みたいだけなのですが、私の大好きな茅場町「ヨッシーズ」にお邪魔してきました。
 

仕込み中にお邪魔してきました

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このお店、なにがすごいかというと「ビールが完璧」。
初めて飲んだときはそのあまりのうまさにしばし絶句したほどです。アレほど滑り込むように抵抗なくストンと胃に収まっていくビールを、私は他に飲んだことがありません。
しかも銘柄は「黒ラベル」など、どこにでもあるナショナルビール。
 
「え……? 今までの黒ラベルはなんだったの……?」
 
その秘密が知りたくて知りたくて夜も眠れなくなってしまったので、今回取材を申し込んだ次第でございます。ではどうぞ。
 

コネとイケメンがきっかけでビールの道に

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▲店長の吉永さんと奥様。お二人ともプロレスファン
 
──こんにちは。今日はお時間ありがとうございます、せっかくなので根掘り葉掘りいろいろとおうかがいしたいなと。ご夫婦でお店をやられてますがお二人が飲食業界に入られたきっかけは?
 
吉永店長:私は大学を出てからフラフラとニートをしてたんですが(笑)それでシビレを切らした父から、コネのあったとんかつの和幸銀座ライオンの試験を受けてこいと司令が下りまして、運良くどちらも受かって、とんかつ屋さんになろうか、ビール屋さんになろうか、ちょっと迷ってビール屋さんを選びました。
 
奥様私は短大時代に「まかないが2回出て、時給が良く、さらにイケメンの店員さんがいるバイトがあるけど来ない?」と誘われ(笑)、不純な動機で銀座ライオンに入りました。
 
──イケメンに釣られたんですね。ではもともとビールがお好きというわけでもなく?
 
吉永店長:もともとビールはそんなに飲まなかったんですが、お店で最初に飲んだビールがハーフアンドハーフで、これがすごくおいしくて衝撃を受けたのがきっかけです。ハーフアンドハーフも奥が深くてですね、注ぎ手によって配合が5:5じゃなかったりするんです。それがきっかけで「ビールって面白いなあ」と思うようになりました。
 
──そうなんですか! てっきり5:5じゃなきゃならないと思い込んでました。それでビールにハマっていったんですね。
 

銀座ライオンの修行時代

──銀座ライオンはどのくらいお勤めに?
 
吉永店長:17年です。
 
──長いですね! やはりビールを極めるとなると、長く修業というか練習もされましたか?
 
吉永店長:そうですね、始めはなかなかビールを注がせてもらえなかったです。賄いの時間にずっと練習してました。先輩に「こんなもん飲めるか! やりなおし!」とか怒られながら。そして半年してからやっとお客様に提供させてもらえるようになりました。
 
──厳しい世界なんですね。
 
吉永店長:居酒屋さんのサーバーと違って、ビヤホールのサーバーは注ぐのがすごく難しいんですよ。だから、普通の人は注げませんね。あとは支配人もしていたので、マネジメントとかメニュー開発とかいろいろやってました。
 
奥様メニューにもいろいろとチャレンジしてましたね。オリジナルメニューもいくつも作ってました。
 
──なるほど、黒板メニューも良く入れ替わっているなーと思ってました。そういったご経験が今のお店の運営に生きてるんですね。
▲来店するたびに変わる黒板ラインアップ
 
奥様あと古い店舗が多いのでどのお店もオペレーションに無駄が無くて(銀座ライオンは明治32年創業!)、動線から何から先人たちが長年かけて洗練してきてますから、そこはとても勉強になりましたね。
 

完璧な「ビヤホール式ビール」にしたい

──それから開業されようと思ったきっかけは?
 
吉永店長:以前、銀座にあった「銀座ライオンLEO」という店舗の店長だったのですが、キャパ30席くらいの小さなビヤホールといった感じで、一人でも入りやすくてちょっと待ち合わせに使ったりできるようなお店でした。ビヤホールでそういうお店って他になかなか無くてですね、雰囲気も大好きだったのですが、ある日閉店することになってしまって。それがとても寂しくてですね「じゃ、自分たちでそういうお店をやろう」と思ったのがきっかけです。
 
──気楽なショットバーの延長というか、今のこのお店の前身のような感じですかね。
▲ヨッシーズもちょうどいいカウンターとちょうどいいキャパのお店
 
──ちなみに新川(最寄り駅は茅場町)という場所を選ばれたのは?
 
吉永店長:偶然です。でももともとキリンビールが新川にあって、今は移転してしまったんですが実はビールの聖地っぽいところだったりします。お店探しは50店舗くらい見て回ったのですが、この物件がキャパ的にもちょうどよくて自然な流れでここに決まりました。
 
──「ビヤホール」と銘打たれてますが、それはどういった思いで?
 
奥様とにかくビールへのコダワリを伝えたくて。ビヤホールの生ビールは、通常の居酒屋さんとかの生ビールとはまったく別物といっていいほど違うんです。
 
吉永店長:ビヤホール式のビールは品質管理やサーバーなどの機材からして全然違います。すべて専用のものを用いて完璧なビールを出すために店舗の設計から考えてこだわり抜いてます。だからレストランでもバーでもなく「ビヤホール」なんです!
 
──なるほど、私も初めてヨッシーズのビールを飲んだときビックリしました、同じ黒ラベルなのに、こんなにも違うのものかと。
 

「よその生ビールが飲めなくなります」

 
奥様この「他のビール飲めなくなります」も、今はクラフトビールがブームなのでお客様もクラフトビールが置いてあると思って来る方が良くいらっしゃるんですが「あれ? サッポロしかないの?」と言われることが多くて。それで「サッポロ生黒ラベルはちゃんと入れるとこんなにおいしいって知らないの!?と思って書きました(笑)。
 
▲ヨッシーズはクラフトビールは無く、ナショナルブランドのみ
 

「ビヤホールのビール」具体的にどう違うの?

──お店のメニューにも書いてますが、毎日サーバーを分解掃除してらっしゃると。
 
吉永店長:はい、詳しいことは企業秘密なんですが、毎晩必ず営業終了後に掃除してます。30分ほどかけて、専用の器具と洗剤で10~20ほどあるパーツを全てきれいに洗浄します。
 
──毎晩それはすごい手間ですね。なぜ営業終了後なんですか?
 
吉永店長:次の日になると雑菌が繁殖してしまうので、必ず夜のうちに掃除します。と言うか生ビールは生モノなので、衛生的に取り扱うのは基本中の基本です。
 
──たしかに。「生」ですもんね。
 
吉永店長:なのでたるも鮮度が命。今はもう無いですが、開店当初は使いきれなかったら自分たちで飲んでました。
 
──もしも今後そんな時があったらすぐ呼んでください(笑)。あと細かいところですが、ガス圧とかにもやっぱりコダワリがおありですか?
 
吉永店長:これも企業秘密なんですが……企業秘密ばかりですみません(笑)。最近けっこう同業っぽい方が来店されて、かなり深いところまで聞かれることが多くてですね。詳しいことは言えませんが、基本的にガス圧はかなり強いです。ですが、ウチの仕様のガス圧にしても、普通はマトモに注げないと思います。修行しないと無理ですね。
 

スルッと喉を滑り落ちる「自然な泡」の秘密

──確かにすごいスピードで、一瞬で注がれてますよね。
 
吉永店長:「一度注ぎ」で自然な泡を作るためにはこのガス圧じゃないといけません。通常のサーバーでは泡を後から上に足しますが、ウチのサーバーはそもそも泡だけを出す機能がありません。やはり作られた泡と自然な泡は全然違います。
 
▲極上泡です
 
──ヨッシーズのビールの泡は喉に抵抗が無いというか、非常にさらっとスッキリしていますよね。
 
吉永店長:最近は「クリーミーな泡」が流行ってますが、ウチのビールはあくまで「液体」が主役、そのためスッキリとした「液体を邪魔をしない泡」が必要なんです。
 

たるごと冷却してビールにストレスをかけない

──あと、たるも冷蔵庫で一晩寝かせてらっしゃるとか。
 
吉永店長:通常のサーバーは、常温のたるから出る常温のビールを強制的に一気に冷やすのですが、そうするビールにストレスがかかってしまいます。ウチはビールにストレスをなるべく与えないように、たるごと冷蔵庫で静かに冷やしてから提供しているんです。
 
▲たるを冷やすための専用冷蔵庫
 
吉永店長:ビールはそもそも「生モノ」なので。自然で新鮮な工場の味をそのままお店で出そうとこだわると、お店に届いてからきちんと3~5度で温度管理しないといけません。
 
──たしかに、全然知らなかったんですが、たるに「要冷蔵」って書いてるんですね。よく店先とかに予備のたるを積んでいるお店なども見かけますが……。
▲たるに「要冷蔵3~5℃」と書かれているのがわかる
 
吉永店長:ただ、そうした温度管理等を徹底しようとすると手間も専用の設備も必要になります。冷蔵庫もそうですが、サーバーも通常のお店のものとは違います、だからおいしいビールを提供するためにはお店の設計設備からこだわらないとダメなんです。
 
──グラスを洗うため専用のシンクもありますよね。完全にキャパに対してシンク多すぎですよね。
 
奥様普通のお店なら、こんなに設備を置くよりも客席増やしたいでしょうね。
 
▲おわかりだろうか……シンクが3つも……(手前がグラス専用のシンク)
 

それではいよいよビールを注いでいただきます

吉永店長:ではまずは黒ラベルを。一瞬ですよ、いきますよ。
 
温度を確認。「出始めはヌルい」とのこと。
 
グラスを取り出し……
 
どこにでも置いている「黒ラベル」が……
 
 工場で生まれたままの姿で……
 
まさに今、目の前に!!!!
 
──おおお! ほんと一瞬ですね!
 
吉永店長:そして最後にスパッと泡を切ります。
 
──おお! かっこいい!!!!!!
 
吉永店長:さ、どうぞ。
 
▲天孫が降臨
 
──完璧な泡比率ですね。さっそくいただき……ま……うまーっ!!!!!!!!! あらためて泡が液体の邪魔をせず、ストンと喉を滑り落ちていきますね。ビールというより、もはやなにかしらのオーラを吸い込んでいるようです。グラスもそうとうこだわって探されたとか?
 
吉永店長:形状、薄さ、容量、材質、これらがベストなグラスというの求めて半年探しました。最終的にドイツのグラスになったのですが、やっぱりビールの国のものに落ち着くんだなと。
 
▲銘柄によって当然グラスは使い分け
 
──銘柄によっては“三度注ぎ”の場合もあると。
 
吉永店長:エーデルピルスは香りと苦味を引き立てるため通常より温度が高い方が良いので、三度に分けて注ぐことでちょうど良い温度状態で提供できるんです。
 
エーデルピルスの1度目。
 
 砂時計を置いてひと休みさせる。
 
エーデルピルス2度目。
 
またひと休み。
 
3度目を注いでまたひと休み……!
 
完成! 泡のコシがすごい。
 
──うーん、先ほどの黒ラベルと全然違う! やや温度が高く苦味と香りがあふれてて飲み応えがあります。
 

ヨッシーズのコンセプトは「ネオビヤオール」

──通常ビヤホールのお料理は「大ボリューム! 肉がドン!」を想像しますが、ヨッシーズは気軽にツマめるものが多いですよね。
 
奥様ソーセージなどよくあるビヤホール的メニューも一通りありますが、一人二人で気軽に普段づかいして欲しいので「おひたし」とか、のんべぇメニューも多くあります。アイスバインとかもおいしいんですが、日本人の胃に優しい和のメニューを意識してます。ビヤホールらしからぬくらい和出汁もよくとっています。
 
吉永店長:ヨッシーズのコンセプトは「ネオビヤオール」で、日本人にあった大衆酒場のビヤホール版を目指してメニューも考えてます。
 
──それとチキンバスケットは「日本唐揚げ協会推薦」とありますが……。
▲名物チキンバスケット 。外サク、中ジュワ、うま味がドン!
 
奥様お客様で唐揚げ協会の方がたまたまいらっしゃって、それでウチのを大変気に入っていただいて、お墨付きをもらいました。
 
──あとはラム肉料理も良く黒板にありますよね。
▲ラム肉豆腐。筆者は道産子なので羊に目が無い
 
奥様ビールによく合うというのもありますが、牛肉よりラムの方がリーズナブルです。「ラムの肉じゃがやメンチカツ」など、良く仕込みますね。
 
──それにしても、これだけのこだわり設備でこのキャパ感は、業態として新鮮ですよね。
 
吉永店長:そうですね、「ふらっと気軽にこれて、ビアホール式の極上の生ビールを飲めるお店」を意識してます。あとは最近は地元の方も多くいらっしゃってくれてまして、地域に愛されるお店になっていければいいなと思っております。
この辺ってオフィス街なので、土日にやっているお店がないんですよ。それで地元の方に「土日もやってくれないかな」と言われて始めたら、けっこうお客さん来てくれるようになってですね、そうしたらまわりの他のお店も土日営業し始めました。
 
──地域貢献ですね(笑)。最後に読者へ何かメッセージはありますか?
 
奥様とりあえず初めに、何も言わずウチの黒ラベルを飲んで欲しいですね。
 
──自分もぜひそうして欲しいですね、飲んだら絶対ビックリすると思います!
 

【まとめ】

  1. 「ビヤホール式の生ビール」は、よくある居酒屋さんの生ビールと根本的に違う
  2. 完璧な生ビールのために店舗の設計設備からこだわっている
  3. とりあえず黒ラベルを注文すべし
というわけで、取材と称して3杯も飲んでしっかり酔っ払ってしまった訳ですが、ビールも料理もご夫婦のお人柄も最高なので、ぜひとも「取り敢えず黒ラベル!」体験しに行きましょう!!!!
ごちそうさまでした~。
 
お店情報
茅場町ビヤホール&カフェ ヨッシーズ
住所:東京都中央区新川1-4-11 高野ビル1F
電話番号:03-5542-0124
営業時間:火曜日~木曜日、日曜日、祝日17:00~23:00(LO 22:30頃、ドリンクLO 22:45頃)、金曜日・土曜日17:00~23:30(LO 23:00頃、ドリンクLO 23:15頃)
定休日:月曜日・他不定休
 

書いた人:ちみを

1980年生。銀河で一番美味しく飯を喰らい酒を呑む才能を持ち、食と何かを無理やり結合させることを得意とする食コンテンツサプライヤー。昼はしめやかにリーマンを営む。好きな言葉は「牛飲馬食」。好きな女優は「20代のかたせ梨乃」。