イエメンの子供乗せたバスに空爆 少なくとも29人死亡

バス空爆で負傷した男の子(9日、イエメン北部サアダ) Image copyright Reuters
Image caption バス空爆で負傷した男の子(9日、イエメン北部サアダ)

赤十字国際委員会(ICRC)は9日、イエメン北部サアダでサウジアラビア主導の有志連合が子供を多数乗せたバスを空爆し、少なくとも子供29人が死亡したと発表した。負傷者は30人に上るという。一方で、イエメン内戦の仲介を担当する国連特使は、和平交渉の枠組みを協議するため、紛争当事者を9月にもジュネーブに招く方針をBBCに示した。

ICRCはツイッターで、サアダ県で支援する病院に、15歳未満の子供29人の遺体が運び込まれたと明らかにした。病院に運ばれた負傷者48人のうち、子供は30人だったという。ICRCは病院への医薬品の提供を強化したと説明している。

ICRCのイエメン事務所はツイッターで、「北部サアダのダーヤン市場で今朝、子供たちを乗せたバスが攻撃された。イエメン赤十字が支援する病院は、数十人の死傷者を受け入れた。国際人道法のもと、紛争時に民間人は保護されなくてはならない」と非難した。

子供たちを乗せたバスはサアダ県ダーヤンの市場で被害に遭った。反政府武装組織フーシが運営する保健省は、死者43人、負傷者61人だと発表した。フーシ運営のテレビ局アル・マシラは、死者47人、負傷者77人と伝え、制服姿の幼い子供たちの遺体の映像を放送した。

フーシのモハメド・アブドル・サラム報道官は、混雑した公共の場を攻撃する有志連合は「民間人の生命をあからさまに軽視している」と非難した。

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イエメンで子供29人死亡 サウジ主導の空爆

有志連合の空爆が子供たちを乗せたバスを標的としたのかは不明だが、有志連合の報道官、トゥルキ・アル・マルキ大佐は、「国際人道法に則り実施された、正当な軍事行動だ」と表明。8日夜にサウジアラビア南部ジザンで「民間人を狙った攻撃を計画した武装勢力」を標的としたのだと説明した。8日夜の攻撃では、イエメン北部アムランからフーシが打ち込んだ弾道ミサイルを、サウジアラビア軍が迎撃。その破片で、ジザンに住むイエメン人1人が死亡し、11人が負傷した。

アル・マリキ大佐は、フーシが子供たちを「テロ活動の道具やかくれみの」にして利用していると非難した。

A doctor treats children injured by an air strike in Saada, Yemen (9 August 2018) Image copyright Reuters
Image caption 空爆で負傷した子供たち(9日、サアダ)

イエメンでは2015年からハディ暫定政権とフーシが内戦状態にあり、政権側を支援するサウジアラビア主導の有志連合が軍事介入している。有志連合は自分たちの行動は「正当」で、意図的に民間人を標的にすることはないと主張する。それに対して人権団体は、市場や学校、病院、住宅地を狙って空爆していると非難している。

地元の長老たちはAP通信に対し、学校の生徒など地元住民を大勢乗せたバスがダーヤン市場を通過中に、空爆に遭ったと話した。

国際慈善団体「セーブ・サ・チルドレン」はスタッフの話として、子供たちはピクニックから学校に戻る途中で、運転手が飲み物を買うために停車したところで被害に遭ったと明らかにした。同団体は、「恐ろしい」事件だと非難し、イエメン民間や民間施設に対してこのところ続く攻撃について、ただちに完全な第三者調査を実施するよう求めた。

ICRCの地域担当ロバート・マルディーニ氏は、「イエメンで繰り返されるこうした悲劇はいい加減、終わらせないとならない。子供を危険な目に遭わせ、このような許しがたい代償を子供に払わせるなど、決して許してはならない」とツイートした。

9日午後には、フーシが支配する首都サナアで空爆があったという。

今月2日には、フーシ支配下の港町フダイダで連続攻撃があり、民間人が少なくとも55人死亡し、170人が負傷した。有志連合は空爆実施を否定し、反政府勢力による迫撃砲攻撃があったと非難していた。

Map showing control of Yemen
Image caption イエメンにおけるハディ暫定政権(緑)と反政府武装勢力フーシ(オレンジ)の勢力図

元英国外交官でイエメン内戦の仲介を担当するマーティン・グリフィス国連特使は、交渉枠組みを話し合うため、内戦当事者を9月にもジュネーブに招く方針をBBCに明らかにした。

BBCのリーズ・ドゥセット記者とのインタビューで、グリフィス特使は、内戦がこのまま放置されればイエメンは国家として破綻し、今後「シリア以上」の状況が発生してしまうと話した。

「イエメンの戦いは長く続けば続くほど、もっと複雑になる。国際的な利害関係や当事者間の対立が険しくなり、分裂がさらに進む。今すでに解決が難しい状況が、ますます難しくなる」と特使は懸念を示した。

Smoke rises after a reported air strike in Sanaa, Yemen (9 August 2018) Image copyright Reuters
Image caption 首都サナアで黒煙が上がった。空爆によるものとの情報がある(9日)

なぜイエメンで内戦が

イエメンは2015年初め、フーシが国の西半分の大半を制圧し、アブドラボ・マンスール・ハディ大統領が亡命を余儀なくされた。以来、国内の対立激化によって国民生活は危機的状態にある。

サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)など中東7カ国は、フーシをイランの手先とみなし、その勢力拡大への懸念から、ハディ政権復活を目指して介入を開始した。

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世界に衝撃を与えたイエメンの男児 あれから1年

国連によると、内戦によって約1万人が死亡した。その3分の2は民間人とされる。さらに、5万5000人が負傷した。

内戦の戦闘と、有志連合による部分的国境封鎖によって、世界最大の食糧危機が発生し、数百万人の間でコレラが蔓延。2200万人が人道援助を必要するに至った。

(英語記事 Yemen war: Saudi-led air strike on bus kills 29 children

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