誰も卑怯と気づかない卑怯なやり方が最強の勝ちパターン
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実際、やりたいことがやれるのは、自己資金のある連中だけだよ。僕のような貧乏人は、やりたくないことをやって生きるしかないのさ。 |
資金が必要なら、クラウドファンディングで、資金を集めればいいじゃないか。
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いや、実際、やってみたけど、ぜんぜん資金が集まらなかったぜ。 |
それは、あなたに「信用」がないからだ。
ここで言う「信用」とは、
「あいつが作るものなら、きっと面白いものになるだろう」
と信用して、まだモノが出来上がらないうちから、クラウドファンディングでお金を払うということだ。
「あいつなら、ちゃんと誠実に、モノを作ってくれる」
と信用して、支援するってことだ。
「信用」とは、「認められた人柄」と「認められた実力」のことなのだ。
単に実力があっても、人柄がよくても、それだけでは、人々はあなたを支援しない。
どんなに実力があっても、その実力が人々に信用されていなければ、人々はあなたを支援しない。
どんなに人柄がよくても、その人柄が人々に信用されていなければ、人々はあなたを支援しない。
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「ああ、自分も、もっと信用を身につけなければいけない」と思った?
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もし、そう思ったとすれば、
あなたは、騙されやすい人だ。
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つまり、さっきのはウソってこと? |
そう。成功者の典型的な欺瞞の1つだ。
とくに、成功者が「自分には『信用』があるから、クラウドファンディングでたくさんの資金が集まった」と言ったときは、注意したほうがいい。
「信用」のある人というのは、立派な人だ。尊敬できる人だ。
つまり、その成功者は、
「自分は立派な人間だから、その立派さゆえに、成功したのだ」
と主張しているのだ。
ここで、成功者は、実力も人柄も、ハロー効果で強烈に底上げされていることを思い出そう。
ハロー効果が強烈に効いているから、人々は、「あいつの作ったものは、面白いに違いない」って思うし、「あいつなら、ちゃんとやり遂げる」って思うのだ。
つまり、成功者の場合、実際には、「信用」と呼ばれるもののうち、かなりの部分が、錯覚資産なのだ。
錯覚資産の大きい人は、立派な人なのだろうか? 尊敬できる人なのだろうか?
否。
「錯覚資産」というのは、褒められるようなものでも、誇れるようなものでもない。
それは人の判断を誤らせる、空虚なハリボテだ。
錯覚資産のことを「信用」だと言いつくろう人は、「人の判断を誤らせる、空虚なハリボテ」に「信用」というラベルを貼って、「立派なもの、尊敬に値するもの」に偽装して、人々から尊敬を得ようとしているのだ。
控えめに言って、卑劣だ。
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でも、「信用」のすべてが錯覚資産ってわけじゃないだろ? |
そのとおり。
それらのなかには、空虚なハリボテどころか、本当に大切なものも、たくさん含まれている。
しかし、それをいいことに、彼らは、そのなかに、こっそり錯覚資産を紛れ込ませてごまかしているのだ。
ウソを隠蔽する、最も効果的な方法は、それを真実の中に紛れ込ませることなのだ。
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そんなことを言ったら、「ブランド」だって、同じことだろう? |
文脈にもよるが、個人が、「僕にはブランドがあるから……」と言うような場合、「ブランド」のかなりの部分が、錯覚資産だ。
主に錯覚資産による結果であるにもかかわらず、それを「僕にはブランドがあるから……」と言うのは、やはり、欺瞞なのだ。
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「ブランド」は「欺瞞」なんかじゃないよ。「ブランド」は、世の中に必要なものだよ。「ブランド」があるからこそ、我々は、粗悪品をつかまされることもなく、商品を安心して買えるんだ。 |
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そうそう。ブランドがないと、どれを選べばいいのかの意思決定が、素早くできないわ。ブランドがなければ、ミソを買うにも、洗剤を買うにも、毎日、一苦労よ。とても生活が成り立たないわ。 |
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そうだ。ブランドの本質は、消費者との「約束」なんだ。この社会は、「約束」で成り立っている。約束がなければ、この社会は崩壊してしまうぞ。 |
もちろんさ。
「ブランド」は、この社会を維持するのに、必要不可欠な、とても大切なものだ。
しかし、それをいいことに、彼らは、そのなかに、こっそり錯覚資産を紛れ込ませて粉飾決算をやってる。
真実のなかにウソを紛れ込ませることで、巧妙にウソを隠蔽しているのさ。
その点では、「信用」と、まったく構造は同じなんだ。
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自分のブランドを持っていない人間のひがみにしか聞こえないな。 |
そう言われると思ったよ。
ブランドを持っていない人間が、ブランドの負の側面を指摘すると、嫉妬だ、ひがみだ、と中傷されて、言論を封じられてしまうという構造がある。
自分のブランドを持っていない人間には、ブランドの欺瞞を指摘する権利が与えられないんだ。
こういう本を書くことが許されるのは、自分のブランドを持っている側の人間だけなんだ。
だから、わざわざ「はじめに」で予防線を張っておいたのさ。
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あれは、このための伏線だったのか。 起業した会社が上場したとか、自分のブログが数百万人に読まれたとか、ただの自慢話にしか聞こえなかったよ。 |
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「僕にはブランドがあるから……」が欺瞞なら、じゃあ、どう言えばいいのさ? |
簡単だ。
単に、「うまくいったのは、僕に信用/ブランドがあるからだ」などと言わなければいいだけだ。
「錯覚資産があるから、成功した」なら正直だが、「信用があるから、成功した」だと欺瞞になる。
「これは手品です」と言って、人に手品を見せてお金を稼ぐのは、まっとうなビジネスだ。
しかし、「これは超能力です」と言って、手品を見せてお金を稼ぐのは、詐欺だ。
錯覚資産による成功は、トリックによる成功だ。
それをごまかして、自分が立派な人間であるために成功したかのように言うから、醜悪で卑劣なのだ。
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ようやく準備が整ったので、ここで、はっきり表明しておく。
この本は、筆者の錯覚資産を活用して書いている。
たとえば、この本の「はじめに」で、私が起業した会社が上場したことを書いた。
そのせいで、あなたの直感は、無意識のうちに、この本に説得力を感じているはずだ。
「起業した会社が上場までいくなんて、よっぽど優秀な奴に違いない。そんな人間の言うことなら、きっと本当のことなんだろう」って、無意識のうちに思ったはずだ。
あなたにその自覚はなくても、実際、そうなっているのだ。
ハッキリ言おう。
それは、錯覚にすぎない。
なぜなら、その会社が上場したのは、ほとんどが、運によるものだからだ。
運よく、時代の波に乗れたからだ。
運よく、優秀な人間と一緒に起業することができたからだ。
運よく、優秀な人材を採用することができたからだ。
運よく、優秀な人間が経営陣にジョインしてくれたからだ。
運よく、ヒット商品が出たからだ。
私自身は、たいして優秀な人間ではない。
これは、謙遜ではない。
ただの事実だ。
そもそも、起業した会社が上場したことと、その人の発言内容の正しさに、なんの関係がある?
「この人の起業した会社は上場した。だから、その人の言っていることは正しい」
この「だから」は、まったく論理的ではない。
この前提から、この結論は導けない。
こんなもの、ハロー効果以外の、なにものでもない。
しかし、これが錯覚だとわかっても、私の言っていることが正しいかのように聞こえる感覚は、抜けないはずだ。
それが、思考の錯覚の魔力なのだ。
頭では、「直感が間違っている」ということを理解しても、
直感は、「直感が間違っている」ということを認識できないのだ。
直感は、「実際に正しいこと」ではなく、「直感的に正しいと思える間違ったこと」が、正しいとしか思えないのだ。
だから、錯覚資産は、それが錯覚だとばらしてしまっても、効果が消えないのだ。
***
錯覚資産は、卑怯な武器だ。
それをこの地上からなくすことができたら、ずいぶんとフェアで風通しのいい世界になるのではないかと思う。
しかし、この世界では、錯覚資産の使用は、まったくと言っていいほど、取り締まられていない。
大量の錯覚資産を持つ者が、
「ヒャッハー! 汚物は消毒だあ~」
と、錯覚資産を持たざる者たちを蹂躙しても、誰もそれを非難しようとはしない。
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なんで? |
いくら錯覚資産を使いまくって、卑怯な勝利を手にしても、
ほとんどの人は、それが使われたことに気がつかないからだ。
人類が、長い間、この世界の95%を占めるダークマターとダークエネルギーの存在に気づかなかったように、ほとんどの人は、社会の力学的構造のかなりの部分を占める錯覚資産の存在に、気づかないのだ。
思考の錯覚は、自覚できない。
だから、錯覚資産は、目に見えない武器となる。
「レーダーに映らない」という特性が、ステルス戦闘機を極めて優秀な兵器にしているように、
「自覚できない」という特性が、錯覚資産を、極めて優秀な武器にしているのだ。
錯覚資産は、いわばギュゲスの指輪(そうなりたいときに人から見えない体になれる魔法の指輪。つまり、悪事をしても決して露見しないようになれる魔法の指輪)なのだ。
だから、この世界では、誰もが錯覚資産という武器を駆使して、万人の万人に対する闘争を繰り広げている。
もちろん、自分だけは、できるだけ錯覚資産を使わずに生きていくのもいい。
しかし、それをするなら、人生がうまくいかなくなることを覚悟しなければならない。
正義のヒーロー、デビルマンも、悪魔の力を身につけなければ、悪魔に対抗できなかった。
誰もが錯覚資産という悪魔の力を駆使しているこの世界では、
錯覚資産なしには、自分の人生の活路を切り開くことはできないのだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうとざいます。
無料版は、ここまでとなります。
よろしければ、続きを本で御覧ください。
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