「サマータイム」導入案にIT業界が反発
政府が東京オリンピック開催時期に予想される猛暑への対策のためにサマータイムの導入を検討しているらしいという報道がありました。
案の定、IT業界からは猛反発の声が上がっているようですね。
ただでさえ労働条件が厳しいといわれる日本のIT業界ですが、天皇の退位にともなう改元に加えてサマータイムまで導入される可能性が出てきたということで、エンジニアのみなさんからは非難轟々です。
深刻な人材不足が予想されているIT業界
日本で「人手不足の業界」というと、まず農林業とか介護を想像する人が多いと思うんですが、実はこのIT業界も今後深刻な人材不足が予想されているんですよね。
経産省によると、IT業界の人口は2016年時点で約91万9000人とのことですから、2030年の「最大で78万人不足」というのはすごい数字に思えます。
「人手が足りない」ということは、そのぶん業界の労働環境が悪化することが予想できるわけです。IT産業というのは社会基盤を支える産業ですから、いくら人材不足といっても課される作業の量が減ることはなく、結果として長時間労働やサービス残業が蔓延してしまう可能性が高いのではないでしょうか。
さらに同記事に、
「また、日本のIT人材の年収分布が500万円前後に集中しているのに対して、米国のIT人材の年収は1000万~2000万円に分布しているという」
とあるとおり、日本のIT技術者の賃金は諸外国の水準に比べてかなり安いという点も指摘されています。これでは優秀なエンジニアは海外に出ていってしまいますし、また、海外から優秀な技術者を呼び寄せることも難しいはずです。
IT技術者は世界的に不足する?
ただ、IT人材の不足は日本だけではなく、先進国を中心に世界的に発生する見込みのようですね。急成長している産業なわけですから当然といえば当然なのですが。人材を育てるために時間がかかる分野でしょうしね。
以前の記事で書きましたが、エストニアは電子国家として知られているだけあって、IT人材は常に高い需要があります。
www.from-estonia-with-love.net
国家機能の電子化というのは事実上不可逆の作業なので(一度電子化してしまったものをまた紙に戻すコストは膨大)、今後もエストニアは電子国家を管理・運営できる人材を排出し続けなくてはなりませんし、国家戦略として奨励しているIT産業も、それを支える優秀なエンジニアが常に必要です。
ということでエストニアはIT分野の人材をけっこう優遇しているんですよね。給与も他の業種に比べて高いですし、人材育成のために大学によってはIT関連の学部は学費無償で留学生を迎えていたりします。
学校によっては小学校からIT教育を行っていることもよく知られていると思います。
日本でも、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることが決まっています。
もちろん人材の育成はなるべく早めに手を打っておかないとまずいのですが、先に述べたとおりIT業界の労働時間や賃金のほうも問題ですから、同時に見直しが必要なんじゃないですかね。今後もますますグローバル化が進んでいきますから、このままだとIT分野まで人材の海外流出が発生しちゃうのではと思うんですが。