【格闘技】山根会長が辞任表明 質問受け付けず ボクシング連盟不正問題2018年8月9日 紙面から
助成金流用や不公平ジャッジ問題などで揺れる、ボクシングのアマチュアを統括する日本ボクシング連盟の山根明会長(78)が8日、大阪市内で記者会見し、辞任を表明した。同会長は過去の反社会勢力との交際も認めていた。理事にとどまるのか、同連盟の全役職を退くのかは不明で、会見では質問を受け付けなかった。告発側の「日本ボクシングを再興する会」は東京都内で会見し、同連盟の山根会長の除名と全理事の解任を求めた。 当初はか細かった声が、次第に大きくなっていった。自らの発言に酔うように、語気も次第に強くなっていく。 「私は、本日をもって辞任をいたします。私を応援してくれた33都道府県のみなさんには感謝を申し上げます。同時に選手の皆さまにはこのような問題があったことに法人の会長として申し訳ない。どうか選手のみなさん、将来、東京オリンピックに参加できなくとも次のオリンピックがあります。頑張ってください。本日は本当に申し訳ありません」 そう話し終えると、最後に頭を約10秒間下げたが、質疑応答を受け付けず、会見場所から退室。「男のけじめ」は釈然としないまま、わずか3分間で終わった。 言葉足らずで、何を辞したのかも、何に対して謝罪したのかも不明。辞任の理由については「昨夜理事会でみなさんから会長一任と言われたので、私自身が家に戻って嫁に相談をしたら、『会長、私が死ぬまで面倒を見るので今は楽になってください』と言われたので決意いたしました」とした。そのまま受け取れば、「再興する会」から告発されている諸問題の責任を取る形でもなく、今後は夫人が面倒を見てくれるから辞任するということになる。 山根会長は会見場へ向かう車中で民放テレビ局の独占取材を受けた。そこでは前出の夫人の言葉に涙を流す姿を見せつつ、今後、告発した側への名誉毀損(きそん)などを含め法廷闘争を行う姿勢を見せた。辞任会見後も、詰めかけた100人以上の報道陣と30台近いテレビカメラが追いすがる中で「非を認めるんですか」と声を掛けられると「認めない」と返したという。 問題視されている数々の行為について自らの責任を認めず、また、会長職を退くだけで、理事として、今後も影響力を行使するのであれば、辞任は何の解決にもならない。東京五輪でボクシング競技が行われない可能性についても、人ごとのように口にしたが、その責任の一端は山根体制にある。 山根会長は会見後、大阪市内で車中と同じ民放局の長時間インタビューには応じたが、その直後も待ち受けた報道陣には何も口を開かずに立ち去った。問題の根深さ、完全決着への長い道のりを感じさせる一連の言動、態度だった。 (藤本敏和) ◆女性に口元押さえられた山根会長は辞任表明から約5時間後、大阪市内の自宅に車で到着。報道陣からの「会長を辞めるのか、理事を辞めるのか」などの問い掛けに無言を貫いた。指を2本立てピースサインのようなしぐさを見せたが、意味は説明せず。混乱する報道陣をかき分けるように進み、関係者とみられる女性に口元を押さえられる場面もあった。 <2020年東京五輪でのボクシング除外問題の現状> 国際オリンピック委員会(IOC)は7月、ローザンヌ(スイス)での理事会で審議を行い、統括団体のガバナンス(組織統治)や審判の判定の問題で東京五輪の実施競技から除外される可能性が示されているボクシングについて継続審議とすることを決めた。分配金の支払い停止措置も続ける。11月末から12月初めに東京で開かれるIOC理事会で再審議することになっている。
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