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東京五輪ロードレースコース発表! 超級山岳コースを浅田コーチ、新城はどう見る?

ついに東京五輪ロードレースのコースが正式発表された。東京、武蔵野の森公園をスタートし、富士スピードウェイにフィニッシュする総距離244km、獲得標高4865mの超弩級山岳コースだ! 女子は総距離147km、獲得標高2692mとこちらも上りの闘いになりそうなコース。

サイクルスポーツはこのコースについて、独自に日本ナショナルチーム浅田顕コーチ、そして新城幸也選手にインタビューした。
 
text:大前仁、中島丈博 photo:Tokyo2020、山内潤也、吉田悠太

2009年案から大きく変わり、過酷な山岳コースに

2009年に予定コースとして発表されたのは、皇居前をスタートし、稲城市の周回コースを走った後、ふたたび皇居前にフィニッシュするプランだった。獲得標高2000m程度になるが、長い上りが登場しないコースだった。だが、本日正式発表されたコースは、それとは比べものにならないほど過酷な山岳コースとなっていた。

2020年7月25日、東京五輪初日に開催されるのが男子ロードレース。翌日は女子だ。スタートはともに東京都府中市の武蔵野の森公園。そこから北上し東八道路で西へ、そして南へ進路を変え大國魂神社前を通って、府中街道に入り是政橋で多摩川を超える。ここがリアルスタート。

そこから近隣のサイクリストにはメジャーなルートである南多摩尾根幹線道路から道志みちに入り、アップダウンを繰り返しながら一路山中湖を目指す。山中湖の手前に登場する山伏峠までが最初の上り。山中湖の北側を反時計回りに通過して籠坂峠へ。

その後、フィニッシュ地点である富士スピードウェイをかすめながら御殿場へと下り、陸上自衛隊東富士演習場を抜けて有料道路富士山スカイラインを含む約20kmの上り区間に入る。富士山麓まで上ったら一気に下る超高速ダウンヒルセクションが待っている。

 

再び御殿場に戻ってきたら、一度富士スピードウェイのサーキットを含む周回路をこなしてから、三国峠へ。最大勾配20%の激坂が約200km走ってきた選手を苦しめる。三国峠を超えて山中湖への下りは富士山がキレイに見える絶景ポイントだが、選手はそれを楽しむ余裕はないだろう。山中湖の南側を通過して再び籠坂峠を越えて、富士スピードウェイを1周してフィニッシュだ。

男子は総距離244km、獲得標高4865m。女子は総距離147km、獲得標高2692mの過酷なコースとなっている。
富士スピードウェイ内は観戦チケットの販売がある。来春発売予定だ。そのほか、沿道の観戦可能場所については、現在実行委員会が各自治体と調整している。場所は案内できるようにする予定とのことだ。

ロードレース出場者数は男子は130人、女子は67人となる。

 
三国峠を超えて山中湖への下りセクション。富士山がよく見える絶景ポイントだ。(写真のライダーは上っているが実際のレースでは下る予定)
三国峠を超えて山中湖への下りセクション。富士山がよく見える絶景ポイントだ。(写真のライダーは上っているが実際のレースでは下る予定)

浅田顕日本ナショナルチームコーチ「残酷なコース決定を現実的に受け止めベストを尽くす」

当初のプランは皇居を回るような、山といっても稲城の周回くらいの話だったので、割とテクニカルで日本人にチャンスはなくはないはずだった。五輪は、各国の人数は少ないし、うまいこと逃げが決まれば展開でチャンスがある。しかし、ああいうコースではキツ過ぎますね。でも残酷なコース決定を現実的に受け止め、残りの日数でベストを尽くします。

五輪のコースって、何かに特化してはいけないと思うんです。リオデジャネイロ五輪のコースはキツ過ぎて、たとえばサガンが出なかった。世界チャンピオンが出ない五輪ってどうでしょうか?

ある程度いろんな展開ができて、優勝予測が偏らないコース設定にするべきだった。日本開催なら日本人有利というのは大鉄則で、それを度外視されたコースなので非常に遺憾です。

チャンスはないとは言わないけれど、チャンスを非常に作りにくいコースです。あのコースで誰が活躍するかというと、スペイン、コロンビア、イタリアのクライマー系の、もしくはツールで総合優勝をとるような選手が活躍するようなコースです。サガンはまたMTBでの出場ですかね。

ツールに出る選手にとって難しいのは、シャンゼリゼから中5日、しかも時差があって、ヨーロッパから日本へ、東向きの逆時差なのでキツいんです。五輪を本気で狙うなら、ツールを前半のアルプスかピレネーでリタイアして、早めに日本に帰国して、合宿を組んで走るのがベストだと思います。所属チームの都合もあるでしょうけど、ギリギリまでツールを走るよりは、五輪を狙うなら2週間くらい前に帰ってきて、準備を進めたほうがいいと思います。

不本意で不利なコース設定になったが、決定を現実的に受け止め残りの日数ベストを尽くしていきたいです。優秀な選手には計算できない可能性があり、驚くほどの力を発揮することができますから。

 

新城幸也バーレーン・メリダ 「ツールと五輪、どちらも狙う!」

せっかくの東京五輪なのに、東京じゃないのは残念ですね。静岡が嫌いなわけじゃないですけど、東京を走りたかったです。

噂で聞いていた三国峠あたりの回り方が変わって1回だけになったので、2級が1つ減ったようなものです。上りは、長いのが富士山で、あとは三国峠の裏(スピードウェイ側)だけです。

三国峠の上りは、4kmくらいの上りならいろんな選手が越えられるけどそのあとが長い。メダルを獲るにはあそこが勝負どころになるんじゃないでしょうか。三国峠を下ってから山中湖を経て籠坂峠、そしてスピードウェイまで距離があるので、そこで前から5人、10人、30人になるのか、下ったら40人が一つになるのかな。

上りがキツくても、五輪はチームメイトが少ないから、仕事をする(上りでペースを上げる)人が少ない。だからみんな同じように疲れるはず。バルベルデやアラフィリップたちが牽制になる。集団は勝手に後ろが千切れていく展開になるでしょうね。僕自身もかなり山ごもりしなきゃいけない感じです。

時期的には、ツールで最後まで総合を争うような人が狙うのは難しいと思います。ツールを頑張りたい人は五輪も出るでしょうが、五輪にフォーカスした人の方がチャンスはあると思います。

僕自身、両方に出場するとすれば、どちらを狙うかといえば……どっちもです!

 

都内で行われた会見

大会組織委員会のスポーツディレクターを務める室伏広治氏は、「前回、1964年の東京五輪で使用されたロードレースのコースは非常にフラットなコースだったため、大集団でのゴールとなってしまった。今回はその反省を踏まえたコースになっている」とコメント。

 
大会組織委員会スポーツ局スポーツマネージャーを務める舟生侑未氏(写真左)、日本自転車競技連盟理事中野浩一氏(写真中央)、大会委員会のスポーツディレクター室伏広治氏(写真右)が登壇
大会組織委員会スポーツ局スポーツマネージャーを務める舟生侑未氏(写真左)、日本自転車競技連盟理事中野浩一氏(写真中央)、大会委員会のスポーツディレクター室伏広治氏(写真右)が登壇

別府史之(トレック・セガフレード)、元日本代表沖美穂氏のコメント(リリースより)

・別府史之選手 (トレック・セガフレード。北京2008大会、ロンドン2012大会日本代表)
地元の神奈川県も走り、トレーニングコースでも使っているルートもあるので、とても思い入れもあります。明神・三国峠は最大勾配が20%を超えるような、この辺りでも最も厳しい上り。世界的に見ても勾配もきつく、長い上りなので、厳しいコース設定になっていて、サバイバルな展開になると思います。

また、都内から道志道、山中湖を走り、富士山へのアプローチは、日本が誇る絶景だと思うので、美しい風景も合わせて、競技とともに、全世界の人に楽しんでもらえると思います。

サイクリング・ロードレースは、日本でも人気が高まりつつある競技ですが、世界ではグランツール、クラシックレースを筆頭に注目を集めるメジャーな競技です。このオリンピックをきっかけに日本の方々にも、是非この競技の魅力を知って貰いたいと思っています。



・沖 美穂氏(シドニー2000大会、アテネ2004大会、北京2008大会日本代表)
女子ロードレースのコースマップを見る限りポイントとなる箇所は、スタート地点から山伏トンネルまでだと思っています。アップダウン続きで道幅も狭い区間もあり、向かい風の可能性が高いと予測します。

国によって作戦は違いますが、山伏トンネルまでのペースコントロールにより、少人数または、20-30人の集団かで勝敗が変わってくると思います。約55km付近からの2-3kmの登りと、「道の駅どうし」より「山伏トンネル」頂上までの最後1-2kmの登り、富士スピードウェイでのゴール勝負、湿度の高さ、暑さ対策がキーポイントではないかと思います。また、コースレイアウトがワンウェイコースの設定になっており、女子のレースでは珍しく見極める力も、勝負の分かれ目になると思います。

 

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