ドミニカ国、2019年にプラスチック禁止へ

「ネイチャーアイランド」の愛称にふさわしい国を標榜

2018.08.09
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カリブの島国ドミニカ国(ドミニカ共和国とは別)は「ネイチャーアイランド」の名にふさわしい国になるべく積極的な目標を掲げている。(PHOTOGRAPH BY JAD DAVENPORT, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 カリブ海の東に浮かぶ小さな島国ドミニカ国(以下、ドミニカ。ドミニカ共和国とは別)が、プラスチックを禁止する計画を発表した。2019年1月までに、プラスチック、発泡スチロール製の使い捨て食品容器を全面的に禁止するという。

 ドミニカは、熱帯雨林と美しい海を誇る人口7万人の国。「ネイチャーアイランド」とも呼ばれ、多くの旅行者を引き付けている。今回の発表は、こうした国の財産である自然を守るための意欲的な一歩だ。(参考記事:「ストローはこうして世界を席巻した、その短い歴史」

「自然の島」の誇り

 ドミニカ政府はこれまでに先行的な取り組みとして、生分解性でない食品容器の輸入を制限し、店舗やレストランから消費者への流れを断ち切る試みを実施してきた。

 同国のルーズベルト・スケリット首相は、声明の中で、「ドミニカには“自然の島”としての誇りがあります」と宣言、「私たちはあらゆる意味で、その称号にふさわしい国でなければなりません。固体ごみの管理はこうした称号に影響を与える問題であり、私たちはこの問題に取り組み続けています」と述べた。

 プラスチック製品の禁止と並行して、ドミニカはより大きな目標も掲げる。世界初の「気候に強い国」になることだ。この国は2017年、大型ハリケーンに襲われ、国中のインフラが壊滅的な被害を受けた。そのため政府は、ハリケーンに直撃されても、いつも通りの生活にすぐに戻れる国になりたいと考えている。

 スケリット首相は2017年の記者会見で、「これは世界に前例を示すまたとないチャンスです。1つの国が災害から立ち直り、気候に強い国へと変化することが可能だという前例です」と述べていた。(参考記事:「【動画】強風に飛ばされないトカゲ、驚きの形態」

クジラの子どもとプラスチック

 ドミニカを取り囲む温暖な海は、夏が訪れると、世界有数のマッコウクジラの生息地になる。プラスチックの排除が急がれるのは、マッコウクジラを守るためでもある。プラスチックは海の哺乳類に害を及ぼすことが知られている。

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー、シェーン・ジェロ氏は15年前から、ドミニカにやって来るマッコウクジラを研究している。ジェロ氏によれば、ドミニカの海はほかの地域より健全な状態を保っているが、プラスチックを見かけることは決して珍しくないという。

ギャラリー:プラスチックごみに翻弄される動物たち、写真10点(画像クリックでギャラリーページへ)
包装フィルムを使って身を隠すカニから、ごみの山をあさるハイエナまで、人間が捨てたプラスチックごみに翻弄される野生生物の姿をとらえた。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

「動物は好奇心が旺盛です。特に、子どもはそうです。二枚貝のように開閉する発泡スチロール容器で遊ぶこともあります」とジェロ氏は話す。

 マッコウクジラの寿命は最長70年で、多くが家族で暮らしている。ジェロ氏は家族の変化を見続けてきたが、この数年、子クジラが命を落とすケースが目立つという。正確な理由はわかっていないが、野生生物とプラスチックが共存できないことは周知の事実だ。タイやスペインの海岸には、胃に大量のプラスチックがたまったクジラなどが打ち上げられている。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」

年間800万トンが海に流出

 2015年に学術誌「Science」で発表された研究論文は、年間およそ800万トンのプラスチックが世界の海に流れ込んでいると試算している。そうした海洋生物たちの避難場所として、ドミニカ政府は自国の海を美しく保ちたいと考えている。

 ドミニカの発表のほかにも、プラスチックを禁止しようという動きは世界的に加速しつつある。ナショナル ジオグラフィックは2018年6月号で「海を脅かすプラスチック」特集を掲載した。(参考記事:「使い捨てプラスチックの削減を、米版編集長が声明」

 ナショジオ誌の写真家であるブライアン・スケリー氏は「フィジーのような遠い島からさらに数日かかる無人島、手つかずの自然が残っているはずの場所でさえ、海洋生物の子どもたちがプラスチックごみにさらされています」と話す。「海に大量のプラスチックが存在する証拠です」(参考記事:「プラスチックごみ問題、アジアの責任は?」

文=SARAH GIBBENS/訳=米井香織

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