大阪府に関連するキャラクターは多いときで92体もあったそうですが、それがいまやほとんどが引退や活動休止となっています。大リストラ時代を迎えた、ゆるキャラたちを取材しました。
大阪府に関連するキャラクターは多いときで92体もあったそうですが、それがいまやほとんどが引退や活動休止となっています。大リストラ時代を迎えた、ゆるキャラたちを取材しました。
一大ムーブメントだった「ゆるキャラ」
8月3日(金)。大阪府の公館前に現れたのは、府のマスコットキャラクター「もずやん」です。もずやんは大阪府をPRするのが仕事で、実は広報担当副知事。府がいま一番打ち出したいキャラクターです。
Q.きょうは何しに来たの?
「もずやんに会いにきました」(女の子)
しかし、この日は猛暑のせいもあってか人影はまばら。立ち止まる人も少なく、どこか寂しげです。
ゆるキャラブームが始まったのは、2010年ごろ。もともとは全国の自治体などが地域をPRするために作ったキャラクターですが、見た目の愛らしさからいつのまにか「ゆるキャラ」自体の人気が急上昇。多くの人の注目を集めるようになりました。
ブームを決定づけたのが、全国各地の「ゆるキャラ」の人気ランキングを決める「ゆるキャラグランプリ」です。そのチャンピオンとなったのは、彦根築城400年祭で誕生した「ひこにゃん」やゆるキャラ界のカリスマ熊本県の「くまモン」。芸能人さながらのスターゆるキャラが次々と誕生しました。
こうしてゆるキャラの数は一挙に増加。多い時で45万人を動員するなど一大ムーブメントを作り上げ、個性的なキャラが続々と登場しました。
大阪府は「もずやん」に絞り込み
ゆるキャラブームの波に乗ったのが、大阪府でした。大阪府にはつい3年ほど前まで、府に関連するキャラクターだけで92体ものゆるキャラが存在しました。そこに待ったをかけたのが…
「とにかく多すぎる。何を宣伝してるのか、どういう施策を広めていってるのか、それがわからない」(大阪府 松井一郎知事・2014年4月)
この鶴の一声で、大阪府はゆるキャラのリストラを断行します。まず、大阪府は代表キャラクターとして「もずやん」1体だけを絞り込み、他のキャラクターたちは活動を自粛するよう要請したのです。
たとえば…河内長野市にある府立「花の文化園」のマスコットキャラクター「花の妖精フルル」。フルルは園のPRを担うため2000年に誕生しました。しかし、初めて出場したゆるキャラグランプリでは見た目のインパクトに欠けたのか、わずか12票しか集まらず、全国でワースト3位という不名誉な記録も。4年ぶりに園を訪れてみると…園内のどこにもフルルは見当たりません。
Q.こちらにフルルは?
「フルルちゃんはこちらでは活動されてませんので、卒園されました」(府の担当者)
実はフルルちゃん、2年前に園の指定管理者が変わったと同時に卒園してしまったそうです。事務所の中には…
「ありました。大きいキーホルダーだと思います」(府の担当者)
Q.懐かしいですか?
「見かけなくなって、2年経つんで」
表舞台から去ったフルル。当時のキーホルダーももう売られることはありません。
「時代とともに園も新しい指定管理者になって変わっていく中で、フルルちゃんも役目を終えたということかなと思います」(府の担当者)
さらに…子育て応援キャラクターの「すこやん」。大阪府福祉部のゆるキャラですが、リストラ改革以降は必ず「もずやん」とセットで活動するという決まりとなりました。いわば「もずやん」の脇役です。
増えすぎた「ゆるキャラ」がリストラされると同時に、ブームにも陰りが見えてきました。ゆるキャラグランプリのエントリー数も2015年をピークに出場数は減少。主催者は2020年を最後にイベントの終了を検討しています。
「せんとくん」はライセンス料を無料に
このゆるキャラ不況の波に苦しんでいるのは、大阪府だけではありません。奈良県の「せんとくん」です。せんとくんは、平城遷都1300年を記念して製作されたキャラクター。当時は「仏に角を生やすなど無礼」と大バッシングを受けましたが、炎上したことを逆手にとって一躍有名になりました。あれから、はや10年。
Q.奈良県といえば?
「せんとくん。よく見るとかわいい」(女性)
「奈良と言えば、せんとくん」(家族)
10年経った今でも知名度は抜群のせんとくんですが…
「駅前の土産店なんですが、他のキャラクターグッズに比べると、せんとくんのグッズはやや少ないように感じます」(記者リポート)
店内には奈良市観光協会のマスコットキャラクター「しかまろくん」が所狭しと並んでいて、せんとくんは片隅に追いやられています。
「だいぶ減りましたね。遷都1300年祭が終わった年くらいから、問屋さんが在庫で終わらせていくみたいな感じで」(土産物店)
そこで奈良県は、8月からせんとくんのイラストを使用する際のライセンス料3%を無料にすることにしました。県の収入を減らしてでも、せんとくんの露出を増やす狙いです。
「収入は減りますけども、露出が高まるということで、例えば農産物の箱であるとかそういうのにも入れてもらったら、スーパーで見た人がパッと見て奈良県産やねって思える。そういう認知度はもう持ってると思いますので」(奈良県観光プロモーション課 野田康彦課長補佐)
人気キャラクターですらあの手この手を講じているという現状ですが、ブームが去ったゆるキャラたちの将来について専門家はこう話します。
「ゆるキャラも1つのツールとして使えばいいと思うんですね。あくまで地域政策というのが柱としてあって、ゆるキャラはそれに花を添えるもの。ゆるキャラが先にあって、それでどうする?みたいなことではあってはいけないと思います」(地域経済に詳しい近畿大学 入江啓彰准教授)
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