米アカデミー賞、「人気映画」部門を新設
米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーの理事会は7日、多くの観客に支持されてヒットした映画から最優秀作品を選ぶ、「人気映画」部門の新設を決定した。来年2月の授賞式に間に合うかどうかは、明らかになっていない。
「人気映画」部門を設けることで、映画評論家や業界関係者の評価は高くなくても、一般観客の間で大ヒットした作品がアカデミー賞を受賞できるようになる。
今年1月末から公開され大ヒットしたマーベル映画「ブラックパンサー」などスーパーヒーロー映画や、アクション映画も、毎年の映画賞レースで評価される可能性が高くなる。
映画芸術科学アカデミーは会員に対して、新設部門の該当条件など詳細は「追って」発表すると伝えた。
アカデミー賞ではこれまで、大ヒットしたSF大作「アバター」は技術部門では受賞したものの、作品賞や監督賞は逃した。人気アクション映画「ミッション:インポッシブル」シリーズも、アカデミー賞の評価を逃してきた。
一般観客の好き嫌いを反映しないアカデミー賞は「どんどん無意味になっている」という批判も出ている中での、「人気映画」部門新設となる。
映画芸術科学アカデミー理事会は部門新設のほか、2020年授賞式の日程を従来より早くして、授賞式の放送時間を3時間に短縮すると決定した。「世界中の視聴者が見やすいようにする」ためだという。
全24部門の発表を3時間以内に収めるため、一部の部門はコマーシャル中に発表し、受賞スピーチなどの様子は編集した映像を番組中に後でまとめて放送するなどの工夫をするという。
<解説> リゾ・ムジンバBBCエンターテインメント担当編集委員
アカデミー賞は意味のある存在でいたいし、それだけでなく、意味のある存在とみなされたい。だからこその今回の決定だ。
アカデミー賞に投票する会員約8000人の構成については、女性や少数人種を増やしてかなり多様性を実現し、改善してきた。
しかしそれだけでは不十分だと映画芸術科学アカデミーは自覚している。授賞式で高く評価される映画と、興行収入的に大成功する映画とが、今よりも一致する必要があると認識しているからだ。
ただし、そのための方法としてこれが正しいやり方なのだろうか。
「人気映画」部門の新設によって、「ブラックパンサー」のような作品がノミネートされるのはほぼ確実だが、それによって最優秀作品賞の候補になる可能性がぐっと下がってしまうかもしれない。
それ専用の部門があるのだから、主要部門に含めるのはそれほど大事ではないと、アカデミー会員は考えるかもしれない。「人気映画」は、アカデミーがその年の大ヒット作品を無視しているわけではないという、証拠づくりに使われる可能性もある。
(英語記事 Oscars introduce new award for outstanding popular film)