デモンストレーションでは両角友佑(中央)のショットを4REAL(現コンサドーレ)の選手がスイープするなど、大会とは違った見所も

平昌五輪から半年で早くも激変するカーリング界「こんなにアツい」

Jクラブが参入、五輪選手が無職に!?
長野五輪以来20年ぶりの五輪出場を果たした男子カーリング。銅メダルを獲得し、「そだねー」フィーバーを巻き起こした女子には及ばなかったが、決勝トーナメント進出まであと1勝と健闘し、銅メダルを獲得した米国に圧勝するなど、メダルを狙う実力は備わっていることを実証してみせた。あれから半年、新しいシーズンを迎えた本場・北見市を取材した竹田氏によれば、早くも4年後に向けて大変革が進行しているという。

新シーズン、本橋麻里はマネジメントに専念

平昌五輪から半年が経った。北見市内では、銘菓「赤いサイロ」が依然、品薄なくらいで、「そだねー」の熱狂も大方は去ったと言えるだろう。

 

ロコ・ソラーレ北見(以下LS北見)、SC軽井沢クラブの両日本代表が「アドヴィックスカップ2018」と「どうぎんカーリングクラシック2018」という国内カップ戦をいずれも出場しなかったこともあり、2018/19シーズンのカーリング界は、五輪シーズンだった昨年の今ごろと比較すると静かに動き出した印象だ。

女子の大きなニュースとしては、北海道銀行フォルティウスの看板選手で自身3度の五輪出場を誇る小笠原(旧姓小野寺)歩がチームを離れ、LS北見の本橋麻里がチームマネジメントに専念することをそれぞれ発表した。北海道銀行もLS北見も今季は4人体制でそれぞれ北京五輪へのスタートを切った。

五輪出場チームですら活動困難な男子チームの現状

激動と言えるのは男子だ。

5月、SC軽井沢クラブは平昌五輪メンバー5人で、日本選手権王者のチームIWAI(札幌国際大学)と対戦し、今季18/19シーズンのA代表を決める日本代表決定戦を制すも、清水徹郎と平田洸介がチームを離れた。それぞれ後述するが、清水は北海道コンサドーレ札幌に加入、平田は地元北見で新チームを結成した。

8月になって、SC軽井沢クラブは「日本代表としてのチーム編成は整わず、パシフィックアジアカーリング選手権への出場についても辞退いたしました」といったリリースを出した。

今季のチームとしての活動は未定。少なくとも9月のワールドカップ(中国・蘇州)、11月のパシフィックアジア選手権(韓国・江陵)には出場しないが、両角友佑、山口剛史、両角公佑らはJOCの指定する強化選手としてトレーニングを重ねている。どのような形になるにせよ、まずはもう一度、日本王者を目指すことになりそうだ。

また、両角公佑は8月現在で所属企業も決定していない状態だ。オリンピアンですら職に就けないのが、男子カーリングの厳しい現状でもある。両角友佑は言う。

「まあ、男子ですから、こういうこともあるとは思ってはいました。もちろん(現状は)残念ですけど、その一方で、てっちゃん(清水)も平田君もそれぞれのチームで自分の求めるカーリングに挑戦したいと言ってくれて嬉しい気持ちもあるんです。彼らとまたアイスの上で会えるように、僕も自分にできることをやっていきます」

彼らは当面はジュニアの指導や体験カーリングのインストラクターを務めながら、「スキルは落としたくない」と氷上練習も続ける構えだ。オリンピアンの再起動が待たれる。

SC軽井沢クラブの代表辞退を受けて、繰り上がる形で今季、JAPANのユニホームに袖を通すのはチームIWAIだが、このチームもメンバーに入れ替えがあった。昨季限りで青山豊、似里浩志がチームを離れた。

もともとチームIWAIは、母体となるチームメンバーの大学受験のために、似里や宿谷涼太郎などが助っ人的に加入した暫定の編成だった。今シーズンの岩井真幸、宿谷、青木豪、荻原功暉、鎌田渓といったジュニア世代を中心とした構成は、「元に戻った」とも言える。A代表としてもジュニア世代のトップチームとしても期待がかかるシーズンになるが、8月2日から5日まで札幌で開催された「どうぎんクラシック」で優勝するなど、幸先のいいスタートを切った。

チームiwai(札幌国際大学)が日本勢として初の「どうぎんクラシック」優勝を果たした

さらにジュニア世代の新たな動きとして「Checkmate」(チェックメイト)とレジェンド電力株式会社(東京都港区)の提携がある。電力自由化に伴い2016年に設立されたこの企業は、フットサルのエスポラーダ北海道、バレーボールのヴォレアス北海道に続き、3例目の道内スポーツサポートにカーリングを選んだ。

札幌を拠点とする中高生のチームだが、フィニッシャーの敦賀爽太は、長野五輪でJAPANのスキップとしてプレーした敦賀信人の甥だ。話題性とポテンシャルは十分にある。伏兵として今季以降のシーンを盛り上げてくれそうだ。