東京医大、性差別だけが問題ではない

第31回 女性医師や病院など4つの視点で考える

2018年8月9日(木)

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 こんにちは、総合南東北病院の中山祐次郎です。病院から一時的に離れ、京都大学医学部大学院にいる私は、大量の試験とレポート提出の嵐を終え、2カ月間の「夏休み」に突入しました。さて38歳にして夏休み、何をしようか。本でも1冊書こうかな、と思いますが、先日出したばっかりだしな……。ま、いろいろと旅行や読書で見聞を広めたいと思っています。

 さて、今回は連日トップニュースになっている「東京医大不正入試問題」を取り上げましょう。現場にいる医師という立場で考察し、さらに東京医大卒業の女性医師にもインタビューを行いました。

 いまさら解説も不要でしょうが、「東京医大不正入試問題」とは、
女子受験生と3浪以上が合格しにくいように大学が操作していた
というものです。

 医者をやっているといろんな噂を耳にするものです。「女子は私立医大に受かりにくい」や「多浪生が私立医大に入ったらだいたい裏口入学」なんて話は、わたくしも聞き及んでおりました。ま、あくまで噂レベルだろうと思っていたら、ニュースで東京医大では本当にやっていたと知り、衝撃を受けたのです。いまごろ、他の私立医大や、国公立でもヒヤヒヤしている担当者がいるのではないかと推測します。

 本件に関しては新聞社説などをいくつかざっと見ましたが、多くは「女性差別だ」「これは氷山の一角だ」という議論に留まっています。当欄ではもう2歩ほど踏み込んで考えたいと思います。

 では、この問題を以下の4つの立場から論じます。その上で、提言にまで踏み込みます。

  1. 医師を志す女子学生
  2. 男性外科医である私
  3. 病院経営者
  4. 国全体の医療

「女性というだけで受験に不利」という差別

1. 医師を志す女子学生

 まず、医師を志す女子学生(あるいは再受験の社会人)にとっては、このニュースには少なからずショックを受けたことでしょう。自分の性別だけで、受験に不利だという事実があるのですから。

 これは、明確な女性差別であり、男女平等をうたう憲法に違反することは間違いありません。せめて、「女子枠」を設けている理系の大学のように、公表すべきです。神奈川大学工学部では、女子特別推薦枠として5名を募集しており、このように公表しています。

 東京医大のやっていたことは到底、許されませんが、その一方で、受験生の中には「私立がそういうことをしているのなら、国公立大学医学部を受ければいいのでは」という意見もあります。これについてちょっと考えてみましょう。

 医者になるためには医学部を卒業せねばなりません。日本には約80の大学に医学部があり、その約半数は国公立です。学費も6年間で見ると国公立は少なくとも5分の1以下ですから、じゃあ国公立に行こう。そう思うと、今度は難易度というハードルが出現します。ごく一部の例外をのぞき、国公立は難易度が私大医学部を上回っているのです。学ぶ科目数も違います。

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「東京医大、性差別だけが問題ではない」の著者

中山 祐次郎

中山 祐次郎(なかやま・ゆうじろう)

外科医

1980年生まれ。聖光学院高等学校を卒業後、2浪を経て、鹿児島大学医学部医学科を卒業。その後、都立駒込病院外科初期・後期研修医を修了。2017年2~3月は福島県広野町の高野病院院長、現在は郡山市の総合南東北病院で外科医長として勤務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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