大企業を中心に、働き方改革を進めるところが増えていますが、一部の中小企業にとっては、それどころではないというのが現実のようです。

中小企業にシワ寄せ?

写真:アフロ

 全国の中小企業が多く加盟する日本商工会議所(日商)は7月19日、働き方改革関連法の成立を受けて加藤厚生労働大臣と意見交換を行いました。この中で、同会議所の三村会頭は、働き方改革関連法によって中小企業がシワ寄せを受ける可能性について懸念を表明しました。

 日商の調査によると、人手が不足していると回答した企業は65%に達し、昨年を4.4ポイント上回り、過去最高となりました。一部の業種では、人手不足が深刻化しており、人員増で対応するのが難しくなっているとのことです。こうした状況において発注元から大きな依頼があった場合には、残業で対応するしか方法がなくなってしまいます。

本来の働き方改革は生産性を上げることだが

 本来、働き方改革は、社会全体の生産性を上げることが目的ですが、一部の大企業では、単なる残業時間の抑制だけに終始しているようです。こうした企業では、ムダな業務の削減そのものは進みませんから、必然的にそのシワ寄せは、下請け企業や外注先などに及ぶことになります。

 こうした実態はなかなか表面化しないので、はっきりしたことは分かりませんが、ネットでは、大企業の正社員が帰ってしまった金曜の夜から休日にかけて、外注を受けたフリーランスや下請け企業の社員が必死で働く様子が話題になったりしています。日商が懸念を表明したのも、このような事態を反映してのことでしょう。

中小企業は、元請け会社にがんじがらめに

 もっともこうしたスタンスに対しては、中小企業や零細事業者だからといって、言い訳は許されないという厳しい意見もあるようです。米国やドイツでは、中小企業だからといって利益率が著しく低いということはなく、規模は小さいながらもそれなりの競争力を持った企業が活動しています。

 しかし日本の場合、中小企業は資金繰りの面においても、銀行や元請け会社にがんじがらめにされているケースが多く、事実上、当事者能力を失っているところも少なくありません。このような状況では、働き方改革を進めようにも進められないというのが現実なのかもしれません。

 大企業の労働時間を短くするだけでは、働き方改革を実施しても何の意味もありません。商慣行なども含めた経済構造そのものの見直しを進めていかなければ、本当の意味で生産性を向上させることは難しいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)