反田恭平×武井壮 未来を見据える2人が有名になりたいと語るワケ
反田恭平『悲愴/月光/熱情~リサイタル・ピース第2集』- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:山添雄彦 編集:石澤萌、山元翔一
「今、最もチケットが取れないピアニスト」といわれる反田恭平。2016年のデビューリサイタルではサントリーホール2000席を完売し、以降の公演もことごとくソールドアウト。コンサートのみならず、『題名のない音楽会』や『情熱大陸』など多数のメディアにも取り上げられ、クラシック界の若き異端児として、その名をほしいままにしている。
昨年の全国ツアーより、事前にコンサートと連動したCDを発表している彼が、7月21日のツアー開始直前にベートーヴェンの三大ソナタを取り上げたアルバム『悲愴 / 月光 / 熱情~リサイタル・ピース第2集』を7月18日にリリースした。ポーランドに在住し、ピアニッシモ(最弱音)のグラデーションを徹底的に鍛え込んだという、その繊細な指さばきはクラシック初心者も必見だ。
今回CINRA.NETでは、反田とプライベートでも交流の深いタレント / アスリートの武井壮による対談を敢行。武井をデビュー時から知りファンだったという反田と、自宅にアップライトピアノを導入し反田にレッスンを受けているという武井。一見、全く接点のなさそうな2人には、一体どんな共通点があるのだろうか。
もし自分が反田恭平の機能を持っていたら、さぞかし楽しいだろうなって。彼は僕のアイドルでありヒーローですね。(武井)
—武井さんと反田さんの交流はどんなふうにはじまったんですか?
武井:日テレの『チカラウタ』という、タレントさんが自分に力をくれた歌を紹介する番組があって。そこに湯山玲子さんが出たとき、反田くんを激推ししてたんですよ。「すごいセクシーなピアニストがいる」と(笑)。
それで反田くんがスタジオに来て、ピアノの生演奏を聴かせてくれたのが最初の出会い。これは素敵なピアニストだなあと思っていたら、反田くんが「デビューの頃からずっとファンなんです」と言ってくれて。それで、「じゃあ、飯でも行こうか」と誘ったことから交流がはじまったんですよね。
反田:食事会で待ち合わせしたら、壮さんがランボルギーニで現れたのは今でも覚えてる(笑)。
—反田さんは、武井さんのどんなところに注目していたのですか?
反田:最初は『笑っていいとも!』です。おそらく武井さん初登場のときで、動物の倒し方とかやってて(笑)。もうめちゃくちゃ面白くて、一気にハマりました。
武井:そうだったんだ。嬉しいな。
反田:それで武井さんをずっと追っていたら、1日に45分しか寝ていないってどういうことだ? そもそもなぜ動物と戦うのか? どうしてタンクトップなんだろう? 足が速いってどのくらいなんだろう? とか、もう疑問だらけで。
武井:確かにミュージシャンは、僕の動物シリーズとか「すごく好きです」って言ってくれることが多いんですよ。何かあるのかもしれないですね、音楽家に訴えかける何かが(笑)。
反田:実際、留学先のポーランドでの音楽仲間からも、武井さんは超人気なんですよ。クラシックやっている人って普段テレビはほとんど見ないんですけど、そういう子ですら武井さんのことは知ってる。
—面白いですね。武井さんが反田さんのピアノに反応したのはどうしてだったんですかね。
武井:僕、ピアノにすごく興味があったんですよ。そんなに詳しいわけじゃないし、演奏とか楽曲に対して見識があるわけでもないんだけど、それでも彼の演奏からは、底知れないエネルギーのようなものをものすごく感じるんです。思えば僕自身、スポーツや芸術などで惹かれるのって、どれもエネルギーの強いものなんですよね。だから反田くんのピアノに関しては、僕の一目惚れでした。
—そもそも武井さんがピアノに興味を持ったキッカケは何だったんですか?
武井:ミュージシャンの友人に誘われて、ジャズが聴けるレストランバーに行ったのがキッカケでしたね。そこでジャズを聴きながら食事をしていたんですけど、同席した音楽関係の人同士で専門用語がバンバン飛び交うわけですよ。もう、全くついていけなかった。
僕はスポーツだったら、どんなルールのゲームでもすぐに適応して、初日から高いレベルで楽しめるんですね。思い通りに動ける身体機能を築き上げてきたので。
武井:ところが、音楽の機能はまだ全然備わっていないんだ、とそのときものすごくショックだった。というのも僕のテーマは、「地球上のどの場所にポトッと落とされても、『うわぁ楽しいな』って思えるように自分を磨くこと」なんです。なので、その出来事がキッカケですぐ音楽に興味を持つようになり、いろいろ調べはじめたんですよね。「和音って何だろう?」とかからはじまって(笑)。
—本当に好奇心旺盛な方なんですね。
武井:すぐに楽器が欲しくなりました。下手でもいいから触って自分で音を出すということをしないと、彼らが楽しんでいるレベルでは一生楽しめないと。それで、思い立ったその日にアップライトピアノを注文したんです。
—すごい!
武井:反田くんと出会ったのはその後だったから、もうすごく羨ましくて。もし自分が反田恭平の機能を持っていたら、人間が住む場所ならどこへ行っても周りの人の心をざわつかせたり、楽しませたりすることができるし、それを仕事にしてプレイすることも可能だし、さぞかし地球は楽しいだろうなって。だからもう、彼は僕のアイドルでありヒーローですね。
リリース情報

- 反田恭平
『悲愴/月光/熱情~リサイタル・ピース第2集』 -
2018年7月18日(水)発売
価格:3,240円(税込)
UHQ-CD / COCQ-854221. 創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80(ベートーヴェン)
2. ピアノソナタ 第8番 ハ短調 作品13 「悲愴」(ベートーヴェン)
3. ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2 「月光」(ベートーヴェン)
4. ピアノソナタ 第23番 へ短調 作品57「熱情」(ベートーヴェン)
イベント情報
- 『反田恭平 ピアノ・リサイタル 全国ツアー2018-2019』
-
2018年8月4日(土)
会場:長野県 佐世保 アルカスSASEBO 中ホール2018年8月5日(日)
会場:山口県 美祢 秋吉台国際芸術村2018年8月10日(金)
More
会場:静岡県 アクトシティ浜松 中ホール
プロフィール

- 反田恭平(そりた きょうへい)
-
1994年生まれ。2012年高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を受賞。2013年M.ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。2015年プロとしての第一歩を踏み出す。7月にはデビューアルバム「リスト」を日本コロムビアより発売。2016年に開催したデビューリサイタルは、サントリーホール2000席が完売し、圧倒的な演奏で観客を惹きつけた。夏の3夜連続コンサートをすべて違うプログラムで行うも一般発売当日に完売し、3日間の追加公演を行い新人ながら3,000人を超える動員を実現する。コンサートのみならず「題名のない音楽会」「情熱大陸」等メディアでも多数取り上げられるなど今、最も勢いのあるピアニストとして注目されている。現在はショパン音楽大学に在学し、ピオトル・パレチニに師事。
- 武井壮(たけい そう)
-
1973年東京都生まれ。陸上競技・10種競技の元日本チャンピオン。独自の「パーフェクトボディーコントロール」理論をもって、ゴルフ、野球、ボクシング、陸上、柔道などさまざまなスポーツにチャレンジし続け、2015年フランス・リヨンでおこなわれた世界マスターズ陸上にて4×100mリレーで金メダルを獲得。いまもなお、地上最強の百獣の王をめざして日夜トレーニングを続けている。
関連チケット情報
- 2018年7月21日(土)〜8月18日(土)
- 反田恭平(p)
- 会場:電力ホール(宮城県)
- 2018年8月9日(木)
- サマーミューザ 日本フィルハーモニー交響楽団
- 会場:ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川県)
- 2018年8月10日(金)
- 反田恭平(p)
- 会場:アクトシティ浜松 中ホール(静岡県)