来年に創業100周年を迎える老舗黒板メーカーのサカワ(愛媛県東温市)。従業員は約40名。大正8年に創業してからずっと、学校などの教育現場向けに黒板を製造販売してきた。
よくある老舗企業のように思えるが、実は同社は「IT企業」に転身しつつある。従来の黒板製造を続ける傍ら、スマートフォン画面をプロジェクターで黒板に投影するアプリや、映像上に文字を書ける黒板用ワイドプロジェクターなど、これまでにない製品を近年相次いで発表し、話題を呼んでいる。実際のシステム開発は外注だが、新製品アイデアは同社の開発会議で出されたものだ。
既存事業からの転身を遂げた背景には、「黒板製造だけをずっと継続するのではなく、とにかく新しいことを始めなければいけない」という、88歳の坂和壽々子社長と、68歳の坂和勝紀副社長が抱く危機感があった。
黒板メーカーを取り巻く環境は、年々厳しさを増している。少子化の影響で、国内に100社程度あった黒板メーカーは約30社まで減少した。また、かつて数十万円した黒板の価格も数分の一に下落し、利益を出しにくくなっている。
国も支援を行うが、効果は限定的のようだ。教育現場では、文部科学省の施策によってホワイトボードとプロジェクターを組み合わせた電子黒板の導入が推奨されている。学校でのICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)の環境整備には補助金も付くという力の入れようだ。しかし、教員が使いこなすためには高度なIT知識が必要になる上に、機能や費用の面でも課題があった。サカワだけでなく、他の黒板メーカーも同様に電子黒板を販売していたものの、ほとんど普及していないのが現状だった。
縮小する市場、軌道に乗らない国の支援策。「既存事業からの転身をしなければ」というトップの危機意識は小さくなかったが、簡単には社内に浸透していかなかった。サカワでは黒板製造の技術者を多く抱えており、新規事業が成功すれば、自分たちの仕事がなくなりかねないと心配する従業員もいたためだ。
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