(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年8月4/5日付)
南アフリカのヨハネスブルクで開かれた第10回新興5か国(BRICS)首脳会議に合わせ開かれたフォーラムで講演する中国の習近平国家主席(2018年7月25日撮影)。(c)AFP PHOTO / GIANLUIGI GUERCIA〔AFPBB News〕
中国の習近平国家主席は、近年の巧みな権力掌握に意図せぬ結果が伴ったことを思い知らされている。
絶対的な権力には絶対的な責任が伴い、習氏が在任6年間で特に厳しい時期を迎えるなか、数々の問題を同氏のせいにするのが容易になっているのだ。
習氏はこの数週間、急激にエスカレートする米中貿易戦争から、全国で数十万人の子供に影響を及ぼしたワクチンスキャンダルまで、様々な難題に見舞われてきた。
年間340億ドルにのぼる中国からの輸出品に懲罰的な関税をかけたうえに、別途2160億ドル分の中国製品も標的にすることをちらつかせるドナルド・トランプ米大統領の対策は、金融リスクを減らそうとする習氏の取り組みと重なり、経済成長の劇的な鈍化につながりかねないダブルパンチとなっている。
これを受け、ささやき声の批判の合唱が起きている。
習氏は国家主席1期目に地域最大の軍事大国として米国に取って代わる決意をはっきり示したが、鄧小平の「才能を隠して時機を待つ」戦略をそう簡単に捨てるべきではなかった、という批判だ。
「今は習にとって、権力の座に就いて以来、最も厳しい時期だ」
北京在住の歴史学者で中国共産党の批判派として知られる章立凡氏はこう語る。「国民は、船長が船を危険水域に導き、沈めてしまうことを危惧している」