みなさんこんにちは

今回の内容は、中米から南米に生息するプニプニ系ナマズ、アウケニプテルスの仲間についてです。皆様はタティアやバトラクスキャットなど、コリドラスに負けず劣らず可愛いナマズたちをご存知ですか? アウケニプテルスの仲間たちは種類がとても多く、大きさも数㎝程度から50㎝を超えるものまでいます。さらには、ジ~として動かない子からグイグイ泳ぎまわる子まで様々です。それではこの魅力的なナマズたちについて、まとめてみる事にしましょう。皆様よろしくお願いします。

 

日本でも人気のブルーレオパードタティア、海外では「蜂の巣タティア」15~20ドル程で販売されているようだ。

 

 

@アウケニプテルスを大まかに紹介@

アウケニプテルスたちの多くは南米に生息しています。その範囲は中米のパナマから南米のアルゼンチンまでと広範囲に生息しており、そのためでしょう、21属115種と大きなグループを形成しています。時折、アクアショップに未記載種と思われる個体が入荷されているため、将来的に種数はさらに増えると思われます。

 

中米のパナマは南米への入口だ!

 

・科名の由来

アウケニプテルスの科名である「Auchenipteridae」の由来は、ギリシャ語の「auchen→首」と「pteryx→ヒレ」が組み合わさったものです。その理由は、前方にあるヒレが特徴的である事からだそうです。恐らく背ビレのことを指しているのでしょう。

 

・歴史

この仲間であるウッドキャットが記載されたのは、1766年と古い歴史があります。ですが、私が見た限り60年代頃の観賞魚図鑑からはアウケニプテルスの仲間たちは確認できませんでした。あの有名な「exotix aquarium fishes」の中にも見られません。

観賞魚としては、同じ南米に生息するナマズであるピメロディアやコリドラスに一歩遅れているようです。その時代、観賞魚図鑑でナマズといえば、ピメロディアやシノドンティス、コリドラス、電気ナマズが目立ちます。

 

・海外での呼び名

また、アウケニプテルスの仲間は海外で「Driftwood Cats」つまり“流木ナマズ”と呼ばれています。このグループで代表的なウッドキャットなど、見た目が流木のような種であったり、流木を隠れ家にしているような夜行性の種が多いので、その呼び名は大変絶妙だと思います。しかしながら、よく泳ぎまわるドルフィンキャットやグリーンキャットなどの例外もいるのが面白いところです。

 

アウケニプテルス・ヌカリスは泳ぎまわるのが好きな種類。その姿はまるで南米のカイヤン!

 

 

@アウケニプテルスの特徴@

アウケニプテルスの仲間は、プニプニした体形の他、傾向として背ビレが前の方にあり、基本的にヒゲは3対です。もちろん例外的な種もいますが、見慣れてくると「これはアウケニプテルスの仲間かな?」と思うようになるでしょう。

 

・膨らむ体

バトラクスキャットはフグのように膨らむことで知られていますが、他の仲間たちも膨らむことができるようです。実際に私も見た事があります。

私がまだ学生時代の頃ですが、ポリプテルスエンドリケリードルフィンキャットを混泳させていたところ、ある日ドルフィンキャットがエンドリケリーに噛みつかれる瞬間を目撃してしまったのです。

慌てて腕をつっこみ救出しようとしたのですが、よく見てみると、ドルフィンキャットの体がみるみるうちに膨らみ、あっという間にエンドリの口より大きく膨れ上がっていたのです。まるでヘビに飲み込まれるのを防ごうと抵抗するカエルのようでした。

 

危険を感じると膨らんで身を守る能力をもつ!

 

・明るくても泳ぎまわる場合も

日中ゴロンとしている種類でも、仲間が数多く水槽に入っていると明るくても泳ぎまわることがあります。そういった現象は稀に小型種で見られ、ショップでそのような光景を見かけて購入しても、飼育水槽に入れるとピタッと泳がなくなる場合が多いです。仲間がたくさんいれば怖くないのでしょう。

 

・交尾するナマズ

また、交接器を持ち交尾するナマズとして知られ、受精卵を産み落とします。そのため、多くはグッピーのように尻ビレの突起を見ることで雌雄の判別が可能となります。ですが、ドルフィンキャットの仲間など雌雄判別の難しいタイプもいるため、その場合は髭の太さが鍵となるようです。オスの方がメスよりも太いヒゲになるとされます。

ちなみに、ウッドキャットのオスは背ビレを交接補助器官として使用するのですが、この発見者はあの東熱帯魚研究所の東 博司氏で、この情報は世界的に発表されました。加えて、ドルフィンキャットの仲間なども背ビレを交接補助器官として使うことが知られています。

・よく見てみると
最後に、個人的に面白いと思うアウケニプテルスの特徴に「髭の溝」があります。髭の見えない種類もいるため、全ての種で確認できるものではないのでしょうが、よく見てみると自慢の髭をピッタリと体にくっつけられるように溝があるのです。下の画像をご覧ください、観察してみると面白いですよ。

 

矢印の先をよく見ると、なんと溝があります!

 


@アウケニプテルス科の分類@

ここで「目・科・属」までを簡単に整理しましょう。現時点でのFishbaseを参照するとアウケニプテルスの仲間は現在「ナマズ目→アウケニプテルス科→アウケニプテルス亜科・ケントロモクルス亜科」となり21属115種とされています。

ですが未解決な問題があり、研究者からはアゲネイオスス亜科ティムパノプレウラを加わえるなど、提案、認識がされているようです。(以前、アゲネイオスス科として扱われていた過去があります。)今後研究の認知が進めば変更される可能性があるのではないでしょうか。

また、分子系統学による遺伝子解析によって劇的な変化が起こる可能性は、言うまでもありません。愛好家としては、現時点で“こんな感じ”であるとして、タイムラグを念頭に動向を見守りたいところです。

 

※2017年現在(Fishbaseより)

 

・ケントロモクルス亜科

タティアで知られる小型ナマズたちが属するグループです。4属42種類が知られています。

しかしながら、本物のタティア・・・つまりタティア属の魚は17種であり、人気のあるブルーレオパードタティアや最近流行りのシンプレックスなどはケントロモクルス属になります。流通名としての「タティア」は小型のアウケニプテルスに当てはめられることが多いです。

 

小型で可愛らしい種類が多くコレクション性も高いため、大変人気があるグループです。基本的には普段は陰に隠れており、ジッとしている種類が多いのですが、餌を投入すると狂ったように泳ぎまわる姿を楽しめます。このギャップや寝転んでいる姿がとても愛らしく、ブリード個体が多く流通すれば、人気に拍車がかかると思います。

 

タティア」の由来はイギリスの魚類学者であるCharles Tate Reganからなのだそうで、彼の名に関した魚の多くは「Regan」から「~レガニ(クレニキクラ・レガニなど)」となるのですが、タティアの場合は「Tate」からなのでしょう。

 

また、海外ではホルスタインタティアのことを「Ninja Woodcat」と呼ばれているようで、独特な黒い衣装を纏ったような色彩と夜行性ということを考えると、大変素晴らしいネーミングだなと思います。
以下に「」と「代表的な魚」を短く紹介しましょう。

 

Centromochlus ケントロモクルス属 13種

元気よく泳ぎまわりピカピカしたボディが美しいグリーンキャットが代表的存在でしょう。また、先述の通り、ブルーレオパードタティアシンプレックスなども含まれます。

 

Gelanoglanis ゲラノグラニス属 4種

まだ謎多き超小型ナマズたちです。観賞魚としては混ざりで入ってきているかもしれません。

 

Glanidium グラニディウム属 8種

模様の美しいマーブルグラディニウムキャットの仲間たちです。他のグループより目が比較的小さく面白い顔をしています。

 

Tatia タティア属 17種

スポッテッドタティアブラックホルスタインタティア、15㎝にも達するマーブルタティアなどが含まれる純粋なタティアたちです。

 

グリーンキャットはずんぐりむっくりなブルーレオパードタティアの近縁種。(※画像提供ガラス氏)

 

 

・アウケニプテルス亜科

ドルフィンキャットやジャガーキャットなどの比較的大きくなる魚が所属するグループです。17属73種が知られます。アウケニプテルス亜科ではありますが、稀に小型種は「~タティア」という名前で流通します。

 

アウケニプテルスは“流木ナマズ”の呼び名通りゴロンとしている種が多いのですが、ドルフィンキャットやエパプテルスなどは遊泳力が強く、彼らを大きめの水槽で水流をつけて飼育すると泳ぎまわる姿を楽しめます。その中でもプセウドエパプテルスの仲間は深場の流れが強いところに生息しているようで、現地での捕獲難易度が高いそうです。

 

日本ではアゲネイオスス属を「ドルフィンキャット」と呼んでいますが、海外ではそれ以外に「Duck Catfish(アヒルナマズ)」とも呼んでいるようです。または、その傾斜した頭部から「Slopehead Catfish」という呼び名もあります。

 

以下に「」と「代表的な魚」を短く紹介しましょう。

 

Ageneiosus アゲネイオスス属 12種

遊泳力が高く、独特なシルエットがマニアを熱狂させるドルフィンキャットの仲間たちです。数センチのものから40㎝を超える大型のものまでいます。しかしながらドワーフドルフィンキャットなどは、浮き袋が骨に包まれていない点や体形、サイズの違いなどが指摘されておりティムパノプレウラとして分かつ説があるようです。

 

Asterophysus アステロフィスス属 1種

90年代は幻の珍魚として知られた、あのバトラクスキャットのみが属します。近年は入荷量が増え、だいぶ安価になりました。自分よりも大きな魚をも飲み込むあの大きな口と風船のような体形に惚れたマニアも多いことでしょう。

 

Auchenipterichthys アウケニプテリクティス属 4種

安価で入手のしやすいレモラキャットが知られています。ですが、最近はあまり見かけないようです。私が中学生くらいの頃に販売名が「ナマズ」とだけ書かれたレモラキャットを500円で購入した記憶があります。

 

Auchenipterus アウケニプテルス属 11種

南米カイヤンとしてアウケニプテルス・ヌカリスがよく知られています。本家アジアのカイヤンと比べサイズが小さいので手頃ですね。お値段は倍以上しますが。

 

Entomocorus エントモコルス属 4種

小型で可愛いドワーフタティアたちです。流通名にタティアと付きますが、本家タティアたちとは少し遠い関係ですね。

 

Epapterus エパプテルス属 2種

滅多に見かける事ない、エパプテルス・ディスピルルスが知られています。自然下では激流の中を泳いでいるそうです。輸送に弱いようで、購入時はよく観察した方がいいでしょう。

 

Liosomadoras リオソマドラス属 2種

そこそこ大きくなり、昔からよく知られる種である、ジャガーキャットです。以前よりも見かける機会が少なくなったようですが、模様が美しく、一度は飼育したくなるナマズではないでしょうか。小さい個体のスカイブルーもたまりません。ちなみにドラスとありますが、Liosomadorasはギリシャ語で「滑らか」+「体」+「皮膚」が組み合わさっているのだそうです。

 

Pseudauchenipterus プセウドアウケニプテルス属 4種

汽水域にも生息することで知られるイエローキャットが知られています。シュッとした鰭がカッコいいのですが、殆ど見かける機会がありません。ちなみにですが、プセウドはギリシャ語の「pseudes」からであり、意味は「偽」なのだそうです。

 

Pseudepapterus プセウドエパプテルス属 3種

エパプテルスよりも細長い印象があります。先述の通り、捕獲が大変な場所に生息しているようで、全く輸入されないとても珍しいナマズです。

 

Pseudotatia プセウドタティア属 1種

プセウドタティア・パルバのみです。外見がタティアによく似ているのにアウケニプテルス亜科という点が面白いところですが、残念ながら全く見かける機会がありません。

 

Spinipterus スピニプテルス属 1種

スピニプテルス・アクシィのみです。ドカンマウスキャットを超小型にした姿をしており、大変ぷにぷにとした可愛らしいナマズです。手に乗せた写真をツイッターに投稿したところ、大変多くの「いいね」を頂いたことがあります。

 

Tetranematichthys テトラネマティクティス属 3種

リーフフィッシュと並ぶ、リーフな外見をした、リーフキャットの仲間たちです。擬態をすることで有名であり、実際に飼育して観察してみたいと思うマニアも多いでしょう。ちなみに、日本に初めて輸入されたのは1984年10月頃だそうです。

 

Tocantinsia トカンチンシア属 1種

シングーメガマウスキャットとして知られる40㎝程度になるナマズです。以前は2種だったこともあり、外見にバリエーションがあります。私の印象としては可愛いイケメン風という感じです。
 

Trachelyichthys トラケリクティス属 2種

アウケニプテルスの中で可愛らしさを凝縮したような小型種、ブルドックキャットです。exilis種とdecaradiatus種がおり、後者はスポッテッドブルドッグキャットとして流通しています。

 

Trachelyopterichthys トラケリオプテリクティス属 2種

taeniatus種がストライプウッドキャットとして知られています。とても長い体をしており独特なフォルムをしております。産地によって多少色彩に変化があるようで探してみると面白そうです。

 

Trachelyopterus トラケリオプテルス属 16種

昔からお馴染みのウッドキャットの仲間たちです。オールドマニア的には一番印象のあるアウケニプテルスではないでしょうか。私が小学生の頃、今はなき新宿水族館にて2000円で購入したことがあります。種類にもよりますが、今もあまり変わらない値段でしょう。地味ではありますが、とてもカッコいい体形をしています。

 

Trachycorystes トラキコリステス属 4種

50㎝を超える大型のドカンマウスキャットが含まれるグループです。その姿から、種類は違いますがタティアの王様といった雰囲気があります。性質が荒いようで、混泳相手には気をつけた方がいいでしょう。

 

ドルフィンキャットは小型から大型まで様々な大きさの種類がいる。


 

@おわりに@

いかがでしたでしょうか、アウケニプテルスの仲間たちについて愛好家の視点で魅力をまとめてみました。今より少しでも興味を持っていただけたのなら幸いです。

 

最後に飼育について軽く触れたいと思います。アウケニプテルスの仲間は隠れ家を好む種が多く、用意してあげないとヒーターの隙間にもぐり込み、火傷してしまう可能性があります。

また、大食漢が多く餌を美味しそうにバクバク食べてくれます。ですが、その分だけ水を汚すため、飼育の際は余裕のある濾過器の使用をお勧めします。

タティアの仲間は餌を投入すると狂喜乱舞し勢いよく泳ぎまわるため、水槽のレイアウトがあまり複雑だと体をぶつけてしまう恐れがあります。なので小さい水槽の場合、シンプルなレイアウトが好ましいでしょう。

多くのアウケニプテルスの仲間は、給餌の時間をとても楽しむことができると思います。まだ飼われていない方は、ぜひ一度飼育してみてください。きっと、その魅力の虜になってしまうはずです。

 

スピニプテルス・アクシィはとても可愛い、ぷになまず!お店で探してみてね!!

 

 

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参考:Fishbase、月刊アクアライフ、Revision of Tympanopleura Eigenmann (Siluriformes: Auchenipteridae) with description of two new species、Planet Catfish.