高気密・高断熱、免震に優れた注文住宅の施工を行うホーメストの代表取締役社長、八島睦。
/ ライフスタイル
徹底した“家族目線”の提案と、家族のように
社員も守ると言い切る包容力で魅了。
大工を目指して高卒で就職するも配属は営業職。家族思いの人柄から、“家族目線の提案”で抜群の実績を残し、弱冠24歳で営業課長に。ホーメストを率いる八島 睦がその哲学を語った。
「親が子を預けてもいいと思えるような会社を、今後も目指したい」
─── 八島 睦
「家を建ててくださったお客さまのお子さまが成長して大人になり、八島さんの会社で働かせてください、と入社したケースもあるんです」。
笑顔でそう話すのは、ホーメスト代表取締役社長の八島睦。一見強面だが、瞳は人懐っこくキラキラと光る。
ホーメストは顧客のオーダーに一から応える「注文住宅」で、前身の殖産住宅時代に約55万戸の実績を誇る企業である。2016年より現職の八島は、高校卒業後から一貫して住宅販売畑を歩んできた。基本は「家族に住宅会社の人がいたらこういう提案をするだろう」という“家族目線”だ。
「規格住宅や建売住宅と違って、注文住宅はライフスタイルを反映できます。音大を目指すお嬢さんがおられる場合はグランドピアノが置けて、かつ将来ピアノ教室を開けるような家づくりを提案する。もっと微細なことだと、お父さまが夜間に在宅できないご職業の場合は、防犯を考えてお風呂の窓はつけないでおきましょうかなどと助言もします」
微に入り細を穿つ打ち合わせを経て完成するから、家が建ったあとも会社ではなく、八島に直接連絡をしてくる家族は多い。
「親が子を預けてもいいと思えるような会社を、今後も目指したいですね。入社すれば社員ですから厳しいことも言いますが、家族のように守りたい。そのイズムこそ家づくりを生業にするホーメストの原点だと思います」
18歳、飛び込み営業で契約をとる
八島は少年野球チームの監督を務める父に3歳から、早朝、就学後、夜と日々仕込まれた野球少年だ。高校もスポーツ特待生で入学。夢はもちろん「プロ野球選手」だったが、高校3年生の春の大会で全道優勝しながら、秋と夏の大会は優勝を逃し、甲子園には行けなかった。
「これだけやって甲子園に行けないというのは、よっぽど野球に縁がないんだな」と思った八島はきっぱりと退路を断ち、大工になろうと東日本ハウス(現・日本ハウスホールディングス)に入社する。ところが研修後に与えられた部署は、第3希望の「営業」。受注2軒か面談3,000軒を終えるまでの飛び込み営業を課せられた。
「営業なんてしたくなくて、明日にでも辞めてやると最初は思いました」という八島だったが、自分のせいで面倒見のよい優しい先輩の指導員が叱られることのないよう1年は働こうと決める。さらに成績も上げたいと考えた八島は会社がこれまでに家を契約したお客さまの勤務先を調べ、あることに気がついた。
「公務員とJRが多かったんです。前者はある年齢になると給与が増え、後者はある年齢で団地を出なければならない。それで家を建てるんだなと」。
公務員・JR職員の団地に足繁く通った八島の見立ては正しく、通常なら3,000軒の面談で1棟取れるところ、1,700軒の面談で2棟の契約にこぎつけた。「正直、飛び込みなんかつらくはなかった(笑)。給与はもらえるし、休みはあるし。毎日休みのない野球の練習のほうがずっとキツかったです」。
その後は住宅展示場で販売員となり、そこでも契約が続いたが、高卒の八島の給料は手取り9万円だった。15歳で母を亡くしていた八島は、19歳で父も亡くし、高校生と中学生の妹を抱えてこの給料では苦しいと会社に退職願を提出。すると、のちに社長となる当時の専務が、特例で八島を転勤者扱いにし、家賃補助を出してくれた。「仕事のやりがいとか充実を感じる前に、それだけのことを会社がしてくれたことに感激して。恩返しのために必死で働きました」。
“恩返し”の最初は毎月1棟以上売るトップ営業マン、徐々に新入社員の指導員として自分の分身を育てることに注力した。功績が認められ、営業課長というポジションが与えられたのは、24歳のときだった。
高気密・高断熱、免震に優れた注文住宅の施工を行うホーメスト。
「安全・快適・信頼」をモットーに、世界に2軒とない家づくりを提案している。
システム+“家族目線”というDNA
八島の「誰でも営業できる仕組みをつくらなければ、会社は生き残れない」という信条は変わらない。ホーメストでは、営業未経験の新人でも年12棟を契約できると豪語する研修システムを構築。デバイスと場所を選ばない「住宅営業提案プレゼンシステム」をベースに、顧客に対して新築・リフォームのデザインと建材の提案、概算予算と商品のプレゼンを誰でも行えるようになった。
全社に浸透した八島の“家族目線”というDNA、そして誰でも営業ができるシステムをつくるという信条。その姿勢は、家を建てたあとでも八島の携帯電話に連絡をしてくるかつての顧客、そして八島のもとで働く社員たちからの信頼につながっている。
BIOGRAPHY
■1991 東日本ハウス(現・日本ハウスホールディングス)に入社
■1997 24歳で営業課長に抜擢
■2002 東京のホーメストに入社
■2003 札幌でミライエホームを共同創業
■2004 ユニバーサルホームの直営事業に参加。赤字から経常利益10%に
■2011 サカエ建設の東京支社長に
■2016 ホーメスト代表取締役社長に
堀 香織=文 廣瀬順次=写真 堀口和貢=スタイリング
AKINO@Liano Ha(ir 3rd)=ヘアメイク 青山 鼓=編集
スーツ¥200,000、シャツ¥26,000、ネクタイ¥15,000
(ザ・クロークルーム/ザ・クロークルーム ☎︎03-6263-9976)
ポケットチーフ¥4,000(フェアファクス/フェアファクス コレクティブ ☎︎03-3497-1281)