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死なないギリギリまでリスクを取る ーー dely 堀江裕介の「勝ち」への執念

2018-08-07

死なないギリギリまでリスクを取る ーー dely 堀江裕介の「勝ち」への執念

「1兆円企業をつくる」起業家 堀江裕介さん(26)は本気だ。学生時代に立ち上げたdely社が運営するレシピ動画サービス『クラシル』は動画数世界No.1*へ。創業4年でヤフーとの戦略的パートナーシップを締結することを発表した。常に攻め続ける堀江さん、その根底にあるのは「勝ち」への執念だ。

(*dely社調べ)

堀江裕介が「勝つ」ために貫く7つの仕事哲学
・自分に負けたくない
・10億円よりも30億円の赤字を
・「無知」は最強の武器
・観察能力を高める
・ネットを断つ
・会社の仲間は「友達」みたいな感じ
・ダサい大人になりたくない

自分に負けたくない

堀江さん_1

「1000億円規模の会社で終わるつもりはない。つくるのは1兆円の企業です」こう語ってくれた堀江裕介さん。一見、壮大とも思える宣言だが、彼にとっては現実的な“目標”だー。

自分を追い込んでやらざるをえない状況を作り出していく。だから、至るところで「1兆円企業を目指す」と言ってきました。

やると言ったらやり遂げる。自分が言ったことに嘘をつきたくない。負けず嫌いなんです。誰かに負けるのも嫌いですが、自分に負けたくない。

何よりも言葉にすることで目標はより具体的なものになっていきます。これまでも宣言をしてきたことは、そのほとんど全てを達成してきました。「やる」ということさえ決まれば、あとはどうやったら達成できるか。その筋道を考えていけばいいだけだと、そう考えています。

「10億円」よりも「30億円」の赤字を

堀江さん_2

あえて宣言し、自らを逃れられない状況へと追い込む。貫かれているのは「必ず勝つ」という基本スタンスだ。

やるからには圧倒的な1位でなければ意味がないと思っています。なぜなら、投資家や人材、提携…あらゆるものが1位に集まってくるから。2位が手にできるのは、2位なりの武器だけだと思います。僕にとって一番最悪なのは負けることです。リスクを追うことが怖いのではなく、やらないことのほうが怖いし、危険なことだと感じますね。

例えば、ユーザー獲得をするためにどれくらいリスクがとれるか。10億円?いや30億円だろって。2017年、実際に僕らがユーザー獲得のために使った予算であり、出した赤字額です。

多少胃はキリキリするかもしれないですが、死なないギリギリまでリスクを取れば勝ち続けられます。背伸びをし続ける。成長ってそういうものですよね。

僕はサラリーマンも、いわゆる社会人の経験もありません。だからこそ、自分の能力はめちゃくちゃ低く見積もっていて。せいぜいやれることは、99%の人がマネできない施策をやること。想像力をフルに使って考え、普通の人がやるであろう選択肢を避ける。想像を超えていくだけです。

「無知」は最強の武器

堀江さん_3

堀江さんは「何も知らない学生起業家だった」と創業当時を振り返る。それは決してマイナスではなかったようだ。

無知であることは武器になります。何も知らないというのは、怖いものがないということ。例えば、起業した時、まわりの起業家たちがどれくらい調達しているか、全く知りませんでした。だから「合計で100億円を調達する」という目標を掲げることができた。

「突出した人材になり、こういうブランディングができれば充分に集められる金額だ」と試算し、自分なりに「100億円調達」までのストーリーや人格を作っていきました。そして現在、100億円の調達を実現できています。

特にこのマーケットで世界一になるために狙っていたのが、孫正義さんを味方につけていくこと。ずっと狙い続けていたのですが、いい打ち手を考えられていなかったんです。ちょうど2016年頃から、メディアに声をかけていただくことが多くなってきていて、これだなと閃いて。

新聞や雑誌の取材のたびに「孫正義さんを超えたい」と言い続け、記事のタイトルや見出しに書いてもらえるように、話す内容も組み立てていきました。

実際、その中のひとつの記事を孫さんが読んでくれて、連絡をもらうことができた。その翌日に会って、1週間後にソフトバンクの役員会でプレゼンして。それが今回のヤフーとのパートナーシップ締結への合意につながっていきました。

観察能力を高める

堀江さん_4

もう1つ、僕に突出した能力があるとするなら、それは「観察」かもしれません。少し神経質なくらい、些細なことが気になるタイプ。たとえば、社員の表情や口調などのちょっとした変化も見て取れる。辞めそうな社員のこともすぐにわかります。

おそらく、自分にヤバいくらいプレッシャーをかけ続けるなかで、すごく良く物事を見るようになって。必死に「読み解こう」「インプットしよう」という状態になっていった。

街を歩いていても、電車に乗っていても、どういう店が流行っているか、誰がどんなアプリを見てるか、どんな広告が増えているのか、事業にどう活かすか、貪欲に吸収するようになっていきました。むしろ、病的なくらい、そういった視点でしか物事が見れなくなる。

世の中のアイデアはほとんどが掛け算ですよね。大量にインプットし、アイデアの掛け算を探し続ける。それが自分にできることの一つだったのだと思います。

ネットを断つ

堀江さん_5

続いて伺えたのが、堀江さんが習慣にしていること。それが「物理的にノートに書き出す」というもの。あえて自らをオフラインの状態に置くことも多い。

集中したい時は、ネットを遮断します。ノートとペンが最強です。パソコンで打ちながら考えるってできないんです。ネットにつながっていると、Slackやメールなどいろんな情報が飛び込んでくる。Twitterも見てしまうし。

よくやっているのが、目標と達成するまでのプロセス、タスクをノートに書き出すこと。目標が達成できない時って目標がボヤッとしている時。僕はなぜかタイピングするよりも物理的に書くことで思考がまとまる気がしています。

もうひとつ、以前は「100%会社のことだけを考える」という生活だったが、その考え方を変えた瞬間があったという。

会社を立ち上げて数年間、24時間365日、会社のことだけを考えてきました。その中で「狂ってしまうかもしれない」と思う瞬間が何回かあって。体調も最悪だったりして。

そこから経営と関係ないこと、例えば、フットサルやサーフィンなどにも時間を使うようになりました。スタートアップ以外のことを知る。これはメンタル的にもすごく重要だな、と。

僕らみたいなスタートアップって視野が狭くなりがち。ぶっちゃけ「マス」と距離がある、異常者ばっかりですよ(笑)。世間知らずにならないためにも、経営と直接的に関わりのなさそうなことをやって、自分たちを客観視する必要があると思っています。

あと「会社以外のことを楽しめる自分もいる」と楽観的に考えるようにしていきました。事業が失敗したって人生が終わるわけじゃない。お金がなくてもある程度はハッピーでいられる。メシ食って運動して寝てたら、大抵のことは大丈夫だって。そう捉えてこそ、常軌を逸したレベルでリスクが取れるようになるのだと考えています。

会社の仲間は「友達」みたいな感じ

堀江さん_6

ここまで起業家としての彼の素顔に迫ってきたが、チームを率いる経営者としての「堀江裕介」はチームについてどう捉えているのだろう。

会社のみんなとは毎週遊んだり、ホントにただ仲のいい友達みたいな感じですよね。フットサルやったり、サーフィンやったり。

創業メンバーである執行役員 柴田快さん、CTO 大竹雅登さんについてはどうか。

それぞれ個性があってバランスが取れていて。柴田は僕と違って人の気持ちがよくわかるし、細かいところに気が配れます。僕は大きいところばかりをみてるので、いろんなものをなぎ倒して進んでしまう。その舗装工事をやってくれている感じですね。

大竹は…だいたい保守的な意見をぶつけて来ますね。「スケールが小せえな」っていつも言い争いになる(笑)。でも、僕にはない視点をくれる。なにより彼は実際に手を動かすエンジニアなので、プロダクトの成長に合わせてめちゃくちゃ成長してくれています。

そういった意味だと…二人は戦友に近いのかもしれない。

今の僕たちの関係性があるのは「あいつといれば勝てるはず」と信じ合えているから。お互いが信頼を積み重ねてきたからだと思っています。例えば、僕といても勝てないと思ったら彼らは去っていくはず。そう思われないようにやるだけ。

僕自身でいえば、そういう仲間や株主への責任みたいなものを強く感じていて。自分のためだけだったら、何も努力できていない人間なんですよ。責任を負って、連帯感を持ってやっている。だからこそ頑張れているのかもしれません。

ダサい大人になりたくない

堀江さん_7

そして最後に伺えたのが、堀江さんの美学について。彼は何を良しとして、良しとしないのか。

僕は「寛容な人」ってすごくカッコいいと思うんです。小さな話ですが、貸したお金が返ってこなくても気にしないとか、酔っ払った女の子が頭を叩いてきても笑っていられるとか。

これまでいろいろな投資家や経営者と会ってきて。正直、ウマが合わない人もいた。口喧嘩になったことも一度や二度ではなくて。ジョークが通じない人とか、裸の王様のようになって偉そうにふんぞり返っている人とか、絶対にそういう大人にはなりたくない。

そのためにも、カッコいいと思える人たちに会っていく。自分よりもデキる人、尊敬できるような人に刺激をもらう。当然、どのような人だってメンタルが折れそうな時はあります。そんな時こそ「上には上がいる」「自分は小さい」ということを知るべき。その事実こそが、自分を奮い立たせてくれています。


堀江さん_パネル

photo by Kohei Otsuka



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