Weekly Memo:あっと驚く「建設×IoT」の取り組みを生んだコマツの経営理念 スマートコンストラクション誕生の裏側 (1/2)

先進のIoT活用プロジェクト推進の背景には、なるほどと思わせる経営理念に基づく活動があった。それを実践したのはコマツ――。スマートコンストラクション誕生の裏側を取材する機会があったのでご紹介したい。

» 2018年08月06日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]

コマツが進める先進のIoT活用プロジェクトとは

 SAPジャパンが先頃、都内ホテルで開催した完全招待制の経営者向けイベント「SAP SELECT」のキーノートで、建設機械メーカーのコマツの大橋徹二代表取締役社長兼CEOが、日本発のイノベーションをテーマに、先進のIoT活用プロジェクトである「スマートコンストラクション」とそのオープンプラットフォーム「LANDLOG(ランドログ)」の取り組みについて講演した。

Photo 「SAP SELECT」でキーノートスピーチを行うコマツの大橋徹二 代表取締役社長兼CEO

 この講演で興味深かったのは、その取り組みの起点となったブランドマネジメントの話だ。コマツのスマートコンストラクションとLANDLOGについては、注目度が高いことから、すでに多くのメディアなどで紹介されているが、これらを生み出したブランドマネジメントの内容については、あまり知られていないのではないか。しかも今回、経営トップによる説明を聞くことができたので、本稿ではこの話を中心に取り上げてみたい。

 とはいえ、まずはスマートコンストラクションとLANDLOGについて、大橋氏のスピーチを基にポイントを説明しておこう。

 図1が、スマートコンストラクションの全体像である。左から、「ドローンによる現況測量」「施工計画作成」「ICT建機による施工」「検査」といった流れに沿って、IoTをはじめとしたデジタル技術を駆使しながらさまざまな処理を行っていく、いわば「建設生産プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)」である。現在、5500社を超える導入実績があるという。

Photo 図1 スマートコンストラクションの全体像

 ちなみに、IoT活用プロジェクトとしての発端は、2013年8月に世界初のICTブルドーザを世に送り出したことから始まる。ただ大橋氏によると、この時点で提供する価値は「モノ」と「モノの機能」にすぎなかった。その後、ICT建機ビジネスモデルを検討するようになり、「モノ」から「顧客のコト」へ視点が変わった。

 そして2014年10月、顧客が直面する労働力不足問題を解決するために、ICT建機をベースにして顧客の安全や生産性向上を実現するソリューションサービスの必要性を認識し、そのビジネスモデルの開発に乗り出した。この時点で「顧客のコト最適化」を新たに顧客に提供する価値としたわけだ。そうしたプロセスを経て、2015年1月に発表されたのがスマートコンストラクションである。

 さらに、そのスマートコンストラクションのオープンプラットフォームとして、さまざまなアプリケーションが生まれることを狙ったのが、図2のような全体像からなるLANDLOGである。大橋氏によると、このプラットフォーム上で現在41社との共同プロジェクトが進んでいる。ちなみに、SAPとはLANDLOG開発時から緊密なパートナー関係にあり、SAPの「デザインシンキング」を活用しているという。

Photo 図2 LANDLOGの全体像
松岡功
松岡功
ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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