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【スポーツ】

[高校野球]甲子園で史上初のタイブレーク 激闘14回、佐久長聖が歴史的1勝

2018年8月7日 紙面から

タイブレークの14回表佐久長聖 無死一、二塁、バントヒットで出塁する真銅

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◇佐久長聖5-4旭川大高

 100回大会を迎えた夏の甲子園に、新たなページが加えられた。第4試合で行われた1回戦の佐久長聖(長野)-旭川大高(北北海道)戦は延長12回を終えても4-4のまま決着がつかず、春夏の大会を通じて初めてとなるタイブレークを実施した。13回からは無死一、二塁の状態から両軍が攻撃を開始。先攻の佐久長聖が14回に奪った1点のリードを守り切って、3時間7分の激闘を制し、歴史的な白星を手に入れた。 

 試合後、佐久長聖の藤原弘介監督(44)への質問はタイブレークに関するものがほとんど。同監督は「初めてなんですか…。だから、そのことばかりなんですね」と苦笑いを浮かべた。

 頼れる主将が流れを呼び込んだ。タイブレークに突入した13回は両チームとも無得点。14回表、佐久長聖は先頭の真銅龍平外野手(3年)が絶妙なバント安打を決めた。三塁側のファウルゾーンへ切れそうになりながら、再びインフィールドへ戻る当たり。「打球が戻るなんてあり得ない。大舞台だから決まったのかな」。無死満塁から、次打者の二塁ゴロが併殺崩れとなる間に待望の1点が入った。その裏は三塁ゴロと二塁ゴロ併殺打で逃げ切った。

無死満塁、上田の二ゴロの間に三走鈴木が生還。捕手中筋

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 好機から始まりながら、両チームとも意外に得点が入らなかった。13回表の佐久長聖は、相手投手が左腕にもかかわらずバントが得意な左打者の大池祐斗内野手(3年)を起用。しかし、相手投手の好守に阻まれ三塁で封殺された。後続も倒れ無得点。藤原監督は「走者が2人いるので強攻策が成功すればビッグイニングになるし、バントで1、2点を取りにいくこともできる。そのあたりの決断が難しい」と振り返る。

 一方、旭川大高も13回裏は犠打で1死二、三塁のサヨナラ機をつかんだ。しかし、2番以下が捕邪飛と投飛で無得点。1点を追う14回裏は4、5番が内野ゴロに打ち取られた。端場(はば)雅治監督(49)は「点が取れそうで取れない。後攻だと相手の得点によって攻撃がイメージしやすくなるが、点を取られれば、重圧になる」と残念そうな表情を浮かべた。

 結果的に、勝利の女神はバントにこだわった佐久長聖にほほ笑んだ。14回表は藤原監督と小林直人部長(45)が相談し、「1点を取ってプレッシャーをかけたい」と再びバントを選択。真銅のバント安打を呼んだ。旭川大高の中筋大介捕手(3年)は「大事なのはバント処理…。満塁をつくらせない練習をしてきたので、あれが敗因だった」と唇をかんだ。

タイブレークの激戦を制し喜ぶ佐久長聖ナイン

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 7イニングにも及ぶタイブレーク練習を繰り返してきた旭川大高に対し、佐久長聖はほぼ対策なし。走者は直前の攻撃の最後から2人が選ばれるが、13回表が始まる時に藤原監督は投手が除外されると勘違いし、審判から指摘されるドタバタぶりも。何とか初戦を突破した同監督は「たまたま勝てた。もう、なるべくタイブレークはしない方向でいきたい」と頭をかいていた。 (堤誠人)

◆今春センバツから導入もいずれも12回までに決着

<タイブレーク> 高校野球特別規則で定められている。延長12回を終えて同点の場合、13回から無死一、二塁で始まる。打順は12回終了時のものを引き継ぎ、決着がつくまで継続打順で繰り返す。決勝は適用せず、延長15回まで行い、同点の場合は引き分け再試合となる。甲子園大会では試合の早期決着を目指して今春のセンバツから導入されたが、6試合あった延長戦はいずれも12回までに決着し、適用されなかった。

 公式記録は規定により出塁した2人の走者については投手の自責点としない。打撃成績でも規定により出塁した2人の走者の出塁記録はないものとするが、「盗塁」「盗塁刺」「得点」「残塁」は記録。2人の走者を絡めた「打点」「併殺打」などはすべて記録する。

 社会人野球では都市対抗などで2003年から採用。各大会の規約に定められる回が終わって同点の場合、次の回は無死一、二塁で再開する。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会でも導入されている。

激戦を終え健闘をたたえ合う両ナイン(板津亮兵撮影)

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 ▽佐久長聖・上田勇斗遊撃手(14回に決勝の二ゴロを放つ)「12回までとはまた違う。転がせば点が入るので、楽な気持ちだった」

 ▽北畑玲央投手(3番手で8回から登板)「自分でつくったピンチの方がしんどい。もともと一、二塁なら、何とも思わない」

 ▽鈴木大河捕手(北畑を好リード)「緊張したが、状況を把握するとやることがみえてきた」

 ▽堀北健人二塁手(14回の守備で好守)「来る前から絶対にアウトにしてやると思っていた。無心だった」

 ▽旭川大高・平沢永遠外野手(タイブレークの13回裏に犠打を決める)「9回で負けるよりも負けた実感が薄い。そのまま延長戦を続けたかった」

 ▽楠茂将太投手(14回に決勝点を奪われる)「14回も1点はいいということだった。バントを簡単に決めさせないように練習してきたが…」

 ▽日本高野連・竹中雅彦事務局長「両チームが疲れた状態で再試合となることを考えれば、よかったんじゃないか。調査では大体1、2イニング(での決着)がほとんど。予想どおりかな。結果としてはスムーズにできた。高校野球として新たな歴史を刻んだ日になったのではないか」

 

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