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丸栄を元テナントが提訴 別の店も検討「一方的閉店で損害」

 六月末に閉店した名古屋・栄の老舗百貨店「丸栄」を巡り、テナント契約を一方的に打ち切られて損害を受けたとして、入居していた二社が丸栄側に賠償を求める訴訟を名古屋地裁に相次いで起こしていたことが分かった。うち一社は既に和解している。別の二社にも賠償を求める動きがあり、代理人弁護士によると、丸栄側に交渉に応じてもらうため、置いたままの備品や機材を百貨店から搬出しないよう求める仮処分を同地裁に申し立てた。

 提訴や仮処分の申し立てをしたのは、名古屋市や岐阜市にある美容関連会社。百貨店三階に女性向け美容専門店を集めた「ビューティーコンシェルジュスクエア」で、エステ店や美容品販売店を運営していた。

 それぞれの訴状や申立書によると、四社は二〇一六年八月~一七年四月に丸栄側とテナント契約を締結。別に結んだ覚書では契約期間を五年と定めた。ただ、昨年十二月に事前の説明もなく今年六月末の閉店を通知されたため、五年の営業を前提にした投資を回収できず、見込んだ利益も失ったと訴えている。

 四千二百万円余の賠償を求めて提訴した岐阜市の会社の訴訟は六日、名古屋地裁で口頭弁論があった。一方、三千二百万円余を求めた名古屋市の会社は、今年七月に丸栄側と和解した。

 仮処分を申し立てた名古屋市の会社関係者によると、契約解除は「やむを得ない事情、都合があるとき」に限って行うと定められていた。丸栄側は解約理由に建物の耐震性不足や経営難を挙げたが、会社側は申立書で「一時は耐震工事をして営業を続ける意欲を示した。直ちに経営継続が困難ではなかった」と訴えている。

 この会社社長は本紙の取材に「初期投資が回収できず数千万円の損害が出た。まさか閉まるとは思わなかったし、閉店が決まってからの対応も不誠実だ」と話した。

 丸栄の担当者は「契約にのっとった終了だと認識している。裁判と取引先に誠実に対応していきたい」と答えた。

 丸栄は一九四三(昭和十八)年、百貨店二店が合併して誕生。経営不振で二〇一〇年に医薬品メーカーの興和(名古屋市)の子会社となった。現在のビルの取り壊し後、新たな商業施設がオープンする予定。

 

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