3年以内の若者の離職率は約3割!なぜ、早期離職は減らないのか?

就職活動という厳しい戦いの中で勝ち取った内定。将来への期待に胸を膨らませて入社したにもかかわらず、新入社員の3人に1人は3年以内に離職しているのが現状です。なぜ若者たちは、そんなに早く仕事に見切りをつけて離職してしまうのでしょうか?

早期離職者が出ると、会社としては大きな痛手となってしまいます。本記事では、「若者が早期離職する原因」と「早期離職を減らすための方法」についてご紹介します。

1|早期離職の現状

日本企業の多くが、新卒者を一括して採用する「新卒一括採用」という採用方法をとっています。現在、新卒採用枠が増えてきてはいるものの、就職活動に困難を強いられる学生は依然として少なくありません。

なぜ、このような厳しい状況下で苦労して獲得した内定であるにもかかわらず、早期に離職してしまう若者が増えてしまうのでしょうか。

1-1 早期離職率の推移

早期離職とは、企業に就職もしくは転職してから数年以内に離職することをいいます。多くの場合は、3年以内に離職した場合を早期離職といいます。

早期離職率は毎年の入社総数に対して、1年間で入社3年以内に離職した人の割合を表します。早期離職率の推移は厚生労働省が毎年発表している「学歴別卒業後3年以内離職率の推移」にて確認することができます。

中卒、高卒、短大等卒、大卒に分類されており、そのうちの一部(5年間隔)を抜粋しまとめたのが下記の表です。推移としては大きな変化はありませんが、大卒でも約30%の人が早期離職をしていることがわかります。

平成
元年
平成
5年
平成
10年
平成
15年
平成
20年
平成
25年
中学卒 65.7 66.7 70.8 70.3 64.7 63.7
高校卒 47.2 40.3 46.8 49.3 37.6 40.9
短大卒 39.6 33.7 39.0 43.5 40.2 41.7
大学卒 27.6 24.3 32.0 35.8 30.0 31.9

表:学歴別卒業後3年以内離職率(%)の推移(厚生労働省発表を一部抜粋)

1-2 企業規模・属性別の離職率

早期離職率は企業規模や属性によって異なります。企業規模・属性別の早期離職率は以下のようになっています。

5人未満 5~29人 30~99人 100~499人 500~999人 1000人以上
早期離職率 59.1 50.2 38.8 31.9 29.8 24.3

表:事業所規模別就職3年後の離職率-平成26年3月卒業者-(厚生労働省発表)

企業規模が大きくなればなるほど離職率が下がっており、これは、福利厚生や給与面での不満が少なくないことが理由として考えられます。

2.早期離職による企業側のメリット・デメリットは?

早期離職者が多いことによる企業側のメリット・デメリットには何があるでしょうか?早期離職者がいることは、企業にとってデメリットばかりだと思われがちですが、実はメリットもあります。

企業側のメリット

労働意欲や生産性の低い者が自発的に退職する

入社したものの仕事に対する意欲が高まらず、研修を受けていてもなかなか身につかない。本人だけの問題であれば良いのですが、意欲がない雰囲気が、他の意欲ある社員にも伝染してしまい、悪影響を及ぼすことがあります。

会社としてはすぐにでも辞めてもらいたいと思いながらも、会社ごとに定められた、懲戒にかかわる重大な業務規程を破るような悪行をしない限り、解雇通達をすることはできません。

少し昔であれば、肩たたきと称される退職勧奨がおこなわれていたりもしたのですが、今はパワハラに対する周囲の感度も高くなっており、肩たたきのようなことをおこなっていることが世間に知られると、企業としては大きなダメージになってしまいます。

中途採用で即戦力を獲得するチャンスがうまれる

新卒入社で早期離職した人がでると、人材の補充が必要になります。通常は新卒を多く採用する企業でも、就職戦線が終了した時期に人材が必要になると、中途採用をおこないます。

中途採用は新卒と異なり、良くも悪くも社会にもまれた人が多いため、社会人としての教育や仕事内容が似ていれば、指導する手間を大幅に削減することができます。

また、中途採用で獲得できる人材は即戦力が多く、入社前にある程度仕事内容も決まっているので、ミスマッチによる早期離職を防止することができます。

企業側のデメリット

採用コストが無駄になる

企業は、将来利益を生んでくれることを見越して、人材の採用に多大な費用をかけています。最近は採用代行サービスも増えており、人材採用にかかる費用も見えやすくなりました。

早期離職されると、採用活動にかけたお金と採用担当者の工数が無駄になってしまいます。マイナビキャリアサポート「2017年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、入社予定者1人当たりの平均採用費は46.1万円となっています。

また、将来の戦力と見込んでいた人が離職するとなると、再度採用活動をおこなわなければなりません。そこでもまた、追加の採用活動費用が余分に必要となってしまいます。

教育コストが無駄になる

新入社員たちが会社の利益に貢献してくれると信じて、業務工数を割きながら教育したにもかかわらず、早期離職されると、教育にかけたお金と上司の時間が無駄になってしまいます。

新入社員の教育は、入社後の研修だけでなく、実際の配属後もOJTの形をとっている企業は多いのではないでしょうか。OJT期間の生産性は大幅に下がってしまうので、せっかく新入社員に費やした工数が無駄になってしまうのは、企業としてもなんとか避けたいところです。

新たな人材確保が難しい

早期離職者が出て人材不足になった場合は、新たに人材を採用しなければなりません。しかし、今は売り手市場であり、求職者が仕事や企業を選べる時代なので、早々に新たな人材を確保できるとは限りません。

3|若者が早期退職する理由と原因

企業にとって若者の早期離職は、デメリットだけではなく、メリットもあることがわかりました。それでも将来のことを考えると、デメリットの方がはるかに大きいといえます。若者の早期離職を防ぐためには、企業として、離職に至った理由や原因をしっかりと把握するようにしましょう。

給与に不満がある

「もっと給与が良いと思っていた」「辛い思いをして働いた割に、給与があまり良くない」という若者の声は多いです。

最初の数年はほとんどが勉強期間なので、給与がもらえるだけでありがたいという考えはもう古いかもしれません。給与の比較は同世代でのネタにあがりやすく、就業状態はさておき、給与が負けていると働く意欲を失う若者が多い傾向にあります。

仕事上のストレスが大きい

新入社員の中には、これまでとは異なる環境で「社会人」として給与をもらいながら働くことで、ストレスを抱える若者が多くいます。何事にも納期がある中で、プレッシャーを感じたり、納期が遅れると怒られたりすることがストレスの原因となるでしょう。

また、大学ではトップクラスだった新入社員も、会社に入るとその道のスペシャリストには勝てないことも多々あるので、それがストレスと感じてしまう人も多くいます。

会社の将来性・安定性に期待が持てない

就職活動時に企業の情報を十分に集めることなく就職先を決めている新入社員も中にはいます。仮に情報収集を十分にしている社員を採用したとしても、実際に働いてみるまでは、現場の雰囲気や経営方針など詳しい部分を理解することはできないでしょう。

新入社員が、特定部署でしばらく働いただけで会社の将来を不安に思うのは、いささか早すぎるとは思いますが、最近の若者は会社の将来性に不安視しているようです。

労働時間が長い

入社をして、実際に配属されるまでは、労働時間の長さに気づくことができません。新入社員の中には、思っていたより労働時間が長く、自分のプライベートな時間が減ってしまうことを不満に思っている人も多いのが現状です。

給与が増えるわけでもなく労働時間が長くなることに、モチベーションが下がってしまうのかもしれません。

求められるノルマ・成果が厳しい

入社して間もない頃は、求められるノルマが厳しいと、ストレスを感じてしまう新入社員もいるかもしれません。学生時代の研究や論文とは異なる厳しさがあるので、気持ちが折れてしまうと、仕事のやる気が低下してしまう新入社員もいます。

仕事が面白くない

「入社したときは、目をキラキラさせて頑張ろうと思っていたけど、実際に働いてみると全然面白くない」最近の若者には、仕事に面白さを求める人が多く、面白くなかった場合に、そのことを理由に早期離職をしてしまう人も少なくありません。

職場の人間関係が上手くいっていない

若者に限らず、人間関係が上手くいっていない職場環境で仕事を継続するのは難しいです。何かあった時に相談できる上司がいなければ、若手社員が孤立してしまうので、精神的に参ってしまう可能性があります。

キャリアアップするため

「部署に配属され、まわりの状況をみると、キャリアが長いのにまだ平社員という人が多い」新入社員は自分をそういった先輩に重ね、昇進の希望がなくなり、自分のキャリアビジョンを見つめ直す人も多いです。

たかが3年、されど3年。仕事に見切りをつけてキャリアアップを目指してポジティブな離職をする若者は増えています。

会社の経営者や経営理念・社風があわない

会社の経営者や経営理念・社風が自分の性格に合う、合わないは必ずあります。合わなくても、合わせてみようと思えるほどの強い気持ちがその会社になければ、そのまま退職してしまいます。

相談できる上司・同僚がいない

人間関係とも重なりますが、相談できる上司や同僚がいないと、辛い日々を送ることになります。特に入社したばかりの時は、できないことの方が多く、上司への相談はかかせません。

コミュニケーションがとれず、孤立してしまうと会社に居場所がなくなり、出勤することがどんどん辛くなっていきます。

4|早期退職の改善方法

ここでは、早期退職を減らす方法についてご紹介していきます。

社内のコミュニケーションを活発にする

人間関係や職場の雰囲気、先輩や上司に相談できずに退職する人が多いため、意見をいいやすい職場の雰囲気をつくることが大切です。

何をいっても聞き入れられない雰囲気や、相談しにくい雰囲気を作っていると、新入社員から何も相談を受けないまま、ある日突然の「退職」となってしまいます。

またノルマが厳しい場合も、新入社員から手を挙げるのはなかなか難しいかもしれません。先輩や上司が話しやすい雰囲気をつくったり、常に新入社員を気にかけたりするなどの配慮が必要です。

新入社員にも同じチームの一員であることを認識させるためにも、社内におけるコミュニケーションが活発におこなえる環境づくりをしましょう。

採用段階でのミスマッチをなくす

給与が少ない、労働時間が長いことが原因で早期離職する人が多いです。しかし、これらの早期離職は、就職セミナーや選考の段階で、就業条件についてしっかりと説明をおこなうことで防止することができます。

面接ではいいにくいことも多いと思いますが、そこはあえて隠そうとせず、相互理解を深めるよう心がけましょう。

やりがいを見出させる

最初は新人研修など、学ぶことがほとんどで、なかなか会社の利益のために働いているという感覚を得られない新入社員が多くいます。そうなると、新入社員は何を目標に頑張ればいいかがわからなくなります。

そこで、小さいことからでも構わないので達成できそうな目標を設定させるなど工夫しましょう。目標の大小はあっても、みんなで同じように目標に向かって仕事をすることで、仲間意識が高まります。

会社施設の有効利用

他部署の人とも交流できる機会を作りましょう。職場での人間関係がうまくいくと、仕事もどんどん楽しくなっていきます。会社施設を使ってスポーツをするなど仕事以外での交流が、若者の心をひきつけたり、仕事のモチベーションを向上させることにもつながるかもしれません。

褒めましょう

上司に褒められて嫌な気持ちになる人はいません。小さいことでもしっかり褒めるようにしましょう。文章が読みやすい、理解が速い、気遣いができるなどなんでもかまいません。いつも先輩社員の顔色をうかがって働いている新入社員たちにも、気持ちよく働いてもらう工夫が大切です。

5|まとめ

3人に1人は入社してから3年以内に離職しています。早期離職は企業にとってデメリットばかりではありませんが、それでもほとんどのケースは企業にとってデメリットになってしまうため、企業としては早期離職を減らすための施策が必要です。

おそらく最も重要なのは新入社員との「コミュニケーション」です。相談されるのを待つばかりではなく、自ら聞きに行くなどして、上司はなるべく新入社員に寄り添い、新入社員ものびのびとリラックスして働ける職場の雰囲気をつくりましょう。

公式アカウントをフォローして毎日記事をチェック!