事実上引退が決まった200形203号。保存に向けた対応を求める声が出ている=福井県越前市の北府駅構内

 休車扱いのまま福井県越前市の北府駅に1年以上停車してある福井鉄道福武線「200形」の最後の1編成について、福鉄が今後も運行しない方針であることが12日、分かった。地方私鉄有数の古参車両の事実上の引退で、県内の鉄道ファンからは車両の保存に向けた対応を求める声が出ている。

 200形は、1960(昭和35)年に製造された201、202号と62年製の203号の3編成。越前市と福井市を結ぶ福武線の看板列車として半世紀以上にわたって活躍した。しかし、2013年から始まった次世代型低床車両フクラムの導入などに伴い、201、202号は相次いで引退。16年までにそれぞれ廃車、解体された。

 近年、203号は朝夕のラッシュ時を中心に運行していた。福鉄によると、休車扱いとしたのは16年2月からで、同年7月には車の車検に当たる全般検査の有効期間が切れた。村田治夫社長は本紙の取材に対し「今後、200形を本線で走らせるつもりはない」と明言。老朽化により全般検査をクリアするには多額の費用がかかる一方、高床で乗り降りが不便である点など総合的に判断したという。

 “車検切れ”の状態のため本線上でお別れの運転会などを開くことはできないが、駅構内などでの引退イベント開催は可能としている。

 今後の焦点は、貴重な車両の保存。越前市は「北府駅鉄道ミュージアム整備事業」の中で200形車両を保存展示する方針を示している。ただし同事業の実施は20、21年度。203号は1年2カ月にわたって、北府駅構内に雨ざらしの状態で置いてあり、腐食などが懸念されている。

 鉄道友の会福井支部は14年から、周辺住民でつくる「北府駅を愛する会」とともに保存に向けた署名を集め、16年7月に3193人分を奈良俊幸越前市長と村田社長に提出した。岸本雅行支部長(67)は「200形は高度経済成長を支えた電車で、特に60代以上の県民にとっては思い入れが強いだろう。時代が進めばさらに文化財としての価値が高まると思うが、車両の状態が心配」と述べ、早急な対応を求めている。

■福井鉄道200形

 福井鉄道が発注し、日本車両製造が1960、62年に製造した3編成(6両)の電車。長年、福武線の看板電車として活躍した。電車の台車は車両の前後にあるのが一般的だが、200形は二つの車両の間に台車がある連接構造を採用しており、1編成(2両)を三つの台車で支えている。鉄道友の会福井支部によると、同構造は全国的にも希少で、ステップ付きの車両も珍しいという。

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