社会のみならず世界に駆け巡った東京医大の「女子受験生一律減点」報道。ところが、そのスクープをした読売新聞が8月5日付朝刊1面トップで「同大による内部調査の詳細が判明した」として続報をしている。当初報道の一部が事実と異なることを認める内容で、前日まで使われていた「女子受験生の一律減点」という表現は一切なくなっていた。【追記あり】
先日書いたコラム(「東京医大『女子受験者を一律減点』報道 まだ鵜呑みにできない理由」)で、「正直いえば、誤報になる可能性は極めて低いと私は思っている」と書いておいたが、どうやら「部分誤報」だった可能性が浮上したことになる(男子のみ加点優遇という性差別の本質は変わらないので「完全誤報」ではないという意味)。やはり「報道」=「事実」と鵜呑みにしてはならなかった。
今朝の読売の続報には、次のように書かれている(無料版のヨミウリオンラインでは読めないが、重要な部分なので引用する)。
要するに、1次でも2次でも女子だけを対象にした一律減点はしておらず、2次で現役~3浪の男子に加点するなどの得点操作をしていたということのようだ。
【追記】
読売新聞は8月6日付朝刊の続報で、2次試験の小論文が「100点満点」だったという情報も明らかにした。この読売の続報を前提にすると、小論文の得点に男女一律「0.8」を掛ける操作により、最大20点の減点となる(例えば、得点が80点だった場合はマイナス16点で64点)。その後、現役と1、2浪の男子に20点、3浪の男子には10点をそれぞれ加点し、女子と4浪以上の男子は加点なしとする操作を行っていた、とされる(当初80点だった場合、現役~2浪の男子はプラス4点、3浪男子はマイナス6点、女子と4浪以上の男子はマイナス20点)。そうすると、最終的に男子は加点されるケースと減点されるケースの両方があり得るが、女子が加点されるケースはなく全員減点のままとなる。
いずれにせよ、この続報を前提とすると、女子のみが減点対象になるわけではないが、女子は全員減点しか行われていないことに変わりなく、性差別の本質は変わらない。得点操作の段階が1次か2次かの違いはあるにせよ、操作の効果に着目すれば「女子の一律減点」という表現も間違いではないとの見方もできる。(2018/8/6 9:50)
読売新聞は当初次のように報じていた。
今朝の読売新聞の続報が事実であれば(これも読売が取材した「関係者」情報であって、まだ事実と確証できるものではない)、従来の「1次で女子を一律減点した」という報道は誤報だったことになる。
もちろん、この続報のとおりであっても、女子合格者を抑制する効果を狙っていたと考えられるから、その限りでは誤りではない。読売新聞も、今朝の続報から「東京医科大(東京)が医学部医学科の一般入試で女子受験生の合格者数を抑制していた問題」という表現に切り替えている。
事実上の「男子の優遇措置」で「性差別」という問題の本質は変わらないと言えそうだが、4浪以上の男子には女子と同様、加点対象になっていないのなら「全ての男子への優遇」ではなかったことになる。
事実関係が確定すれば、読売新聞をはじめ各紙は、きちんと一部訂正して検証すべきではないだろうか。
付け加えると、今朝の朝刊に掲載された「得点操作」のチャート図にも不審な点がある。「1次試験」の欄では「5人前後の男女に10~数十点を加点」とあり、「2次試験」の欄では
小論文の点数で「0.8」の係数を掛け、女子と4浪以上の男子を減点
と記しているが、記事内容に即して正確に書けば
全員に小論文の点数で「0.8」の係数を掛け、3浪以下の男子を加点
となるはずだ。当初の「一律減点」報道を正当化したいためか、「減点」と書くのはおかしいのではないか。