わが「まんが学術文庫」が第9巻目に『群衆心理』を選んだのは理由がございます。
2年ぐらい前にテレビで放送されてから再注目され、原本も売れ始めたのです。
『群衆心理』の著者ル・ボン先生は、フランス革命に注目する形で群衆心理を分析しております。
貴族や僧侶に搾取されていた98%の平民たちが、一部の扇動者たちによって立ち上がり、フランス革命が起こります。
まさに群衆の心に火がつき、国のシステムが替わる、大きな流れが生まれたわけです。
ところが、国民の平和のために達成されたはずの革命が、いつしか暴走し、国民同士の間で新たな殺戮の時代、地獄の時代を生んでしまうのです。
まさに群衆心理がもたらした災禍なのであります。
娘の参考書で超久しぶりにフランス革命を復習しましたら、1789年にバスチーユ監獄に大砲が撃ち込まれてから、ナポレオンが皇帝になるまでの10年間をフランス革命期というそうです。
その10年間にあまりに色々なことが起こりすぎて丸暗記するにも骨が折れます。
政権がコロコロ変わり、なぜそうなったかという理由も、一度聞いたぐらいでは頭になかなか入りません。
革命が起きたら、いったんは立憲君主制になります。
しかし、あっという間に共和制になり、最後にナポレオンが出てきて帝政になっています。
この間ジロンド派だのジャコバン派だのが政治闘争をやって政権を握るかとも思えば王党派が復活したりと、なんだかもうグチャグチャです。
戦争、テロ、クーデタ何でもありの状態です。
政治の中心があっち行ったりこっち行ったり振れ幅がものすごいのです。
その中で漫画ではロベスピエールに焦点が当てました。
この人は群衆心理を深く理解しており、それを利用して議員になり、そして独裁者になります。
ロベスピエールと言えばギロチンです。
政治家になるとどんどん過激になり、最後は毎日ギロチンを使って、敵だけではなく、かつての同志たちをも次々と断頭台に送り込みます。
いろいろ調べますとこのロベスピエール、もともとはかなりいい人だったのです。
弁護士時代に貧しい人を救っております。
貧しい人を救いたいと思っていたのは確かなのです。
ただ真面目過ぎた。
自分が正義と信じたら命がけなのです。
他人にも曖昧さを許さない。
自分の思想に忠実と言えば忠実なのです。
よってどんどん過激になる。
そんなに人間は正義どおりには体が動かないのですが、彼はそれを許しません。
頭が良すぎるので自分の正義が一番正しいと疑わない。
私みたいにいいかげんな人間も問題なのですが、超真面目も問題なようです。
結局皆さんもご存知のとおり、最後はクーデタによって、ロベスピエール自身がギロチンで処刑されるわけです。
群衆心理を読み切って独裁者になったはずなのに、最後は人間の心が読めなくて民衆に殺されたような気がします。
だからでしょうか、『群衆心理』を読むと恐ろしくなるのです。
群衆化した人々は何をしでかすかわからない。
昨日まで称賛していたのに今日は罵詈雑言、殺してしまえとなるのです。
再び高校の時の校長先生の言葉を思い出すのです。
「付和雷同するなかれ」
皆さんも気を付けましょう。