こんにちは。Forkwell 事業部の3代目事業責任者の赤川です。同じく3代目プロダクトマネージャーの @yachibit らと一緒に、Forkwell を創っています。
本日は、数々のITエンジニアの転職を見てきた立場から、昇給しながら成長し続けるために所属する組織をどう選択すべきかに関する持論を紹介します。 転職に限らず、社内異動でも使える発想ですので、自身のキャリアを考える際にぜひ参考にしてください。
なお、赤川自身の過去やアウトプットを知りたい方はこちら をご参照ください。
本記事が想定している読者
本記事では、以下のような方に役立つ記事を書こうとしています。
- 成長を感じられてはいるが、収入が上がらない状況がしんどい人
- 満足する収入を得られているが、自身の成長を感じられていない人
なお、お金を稼ぐことのみで満足できている人、成長を感じていることのみで満足できている人は、本記事からは学びがない可能性が高いです(そのような考え方を否定するものではありませんが、本記事ではお役に立てないでしょう)。
本記事の構成
本投稿では前半後半に分けて、私の考えを紹介します。
- 前半:昇給しながら成長し続けるために、所属する組織をどう選択すべきか
- 後半:その組織はどのようにして見分けるか
本投稿があなたのキャリア設計に役立つことを願っています。
前半:昇給しながら成長し続けるために、所属する組織をどう選択すべきか
昇給しながら成長し続けるためには、あなたが成長したい方向と昇給に正の相関関係がある組織を選ぶべきだと考えます。
どういうことでしょうか。 わかりやすく図を書いてみます。
横軸を、成長したい方向(なりたい像への近さ)、縦軸を給与としています。 このグラフの横軸と縦軸の交差点を、入社時のキャリアの出発点とし、 それぞれの組織には、その組織において任される業務の幅と、その仕事に対する給与幅が存在しているため、その範囲を分布で表してみました。
成長したい方向と給与に、正の相関がある組織では次のようにキャリアを進めることができます。
- 伸びしろばかりで何をしても楽しい状態
- 実績をだして成長するほど給与が上がる、楽しくてしょうがない状態
- 組織の中で成長できることが少なくなり、次のキャリアを考え始める状態
どんな組織でも成長と昇給の限界は存在していますが、そこに到達するまでは、楽しい状態が続きます。 普通の人はこの成長途上の段階では辞めません。 このような組織を、本投稿では正の相関がある組織と呼びます。
正の相関がない組織で起こる不幸
では、逆に正の相関がない組織ではどのようなことが起こるでしょうか。 いくつかのパターンに分けて紹介します。
負の相関型組織(そっちに成長したいわけじゃない型)
前述とは逆の、負の相関の組織に入ると、以下のような不幸が生じます。
- 伸びしろばかりで何をしても楽しい
- 早々に成長したい方向に進んでも給与を上げられないことに気づく
- 給与はあがっているのに、成長したい方向から離れ続ける
- 気がつくと、給与水準が上がりすぎて今更リスクをとって人生の選択肢の状態が少ない状況(家族の反対、住宅ローン等)
やりがい搾取型組織
一見すると正の相関があるようで、実際は相関性がない、あるいは相関してはいるものの給与上限が著しく低い組織です。
- 伸びしろばかりで何をしても楽しい!
- 圧倒的な成長!給与なんて後からついてくるさ!
- あれ、成長しているはずなのに、給与が全然上がってない…?
- こ、これがやりがい搾取か...!!
安住型組織(WIP)
成長したい方向ではないけど、仕事が嫌いなわけじゃないし、給与が良いのでつい安住したくなる組織です。
- 伸びしろばかりで何をしても楽しい!
- 成長の実感は少ないけど、給与が増えて嬉しい!
- あれ、給与は上がっているけど、一向に成長を感じられないな…?
冒頭で対象外とした、お金を稼ぐことで満足を得ている人は、ここの組織に属して昇給している可能性が高いです。 それが良いか悪いかなんて他人が決めることではありません。あくまでも、あなたが満足しているかどうかが重要です。
組織を移るなら、正の相関がある組織へ
現在何型の組織にいるかどうかに関わらず、次の組織が正の相関であることが大事です。
正の相関がある組織に入っても、あっという間に成長の上限に到達してしまい企業を渡り歩く人(よく外資系企業で見かけます)もいれば、個人の成長の限界にたどり着くよりも早く会社が成長し続ける(円が大きくなる)ので、永遠に成長上限にたどり着かない、なんて人もいます。 いずれにせよ、正の相関がある組織に属している限り、自身の成長と昇給はセットでついてきます。
現年収より下げる価値がある場合もある
もし、正の相関がある組織に移るならば、現年収維持〜下げてのチャレンジもありです。
例えば、そもそも給与水準の高い大企業や外資企業から、創業間もないスタートアップにチャレンジする場合、現年収を維持できない可能性もあります。 また、コンサルなど高給取りなポジションから、経験の少ない開発者に移る場合も、やはり給与は下がりがちです。 あなたが成長したい環境に移りたい気持ちがあるのであれば、この選択もありです。
余談ですが、年収を下げて転職する際に気をつけたいのは、その選択の責任は自分にあるということです。 Webの記事では年収を下げた挑戦は美談として語られることは多いですが、その選択の責任をとるのは自分自身しかいないということを忘れないでください。 私もベンチャーという美談に魅せられて今の会社を選択した口ですが、入社当時は今よりも遥かに正の相関性が低い組織でした。その選択を後悔はしていませんが、だからといって誰にでも薦められるような環境ではなかったと思います。
年収アップの罠
現年収を下げてでも組織を移る選択肢がある一方で、年収アップにつられて移ってはいけない組織もあります。 それは、移る先があなたにとって負の相関型の場合です。
一般的には年収が上がる事自体が喜ばしいことです。 ですが、本記事の対象者である お金を稼げているのに、成長できていない状況がしんどい人 にとっては選んではいけない選択肢です。それでは現状の繰り返しになります。 悩む暇があれば、正の相関がある組織を見つけることに力を注いだほうがよいです。 「条件は今よりいい会社」といって飛び込んだ先がこのタイプの組織だったら本記事の対象者にとっては辛すぎます。 このご時世、もっといい会社はありますから、短期的な年収ではなく、あなたのキャリアとして望ましいかどうかで判断してください。
後半:正の相関があるかどうか見極めるためのポイントは?
前半では、成長したい方向と給与に正の相関関係がある組織を選ぶことの重要性を述べました。
では、正の相関がある組織かどうかはどのように見分けられるでしょうか。
今あなたが属している組織がどうか、また、次に検討している組織がどうかをチェックするためのポイントや質問項目を紹介します。
センシティブな質問もあるので、質問すべき状況や相手についても参考として書きました。
現職中の方はあなたの上司に聞いてみるのもいいでしょう。
なお、正の相関がある組織かどうかにフォーカスしていますので、そもそも自分が挑戦したい事業内容かどうかは別途判断してください。
ロールモデルとなる人が在籍しているか
あなたが成りたいと思えるメンバーがいるのかどうかを確認しましょう。ロールモデルがいる組織では、その人の元につくだけでも成長へのチャンスが多くなります。 稀に、ロールモデルがいるせいで仕事が回ってこないということもあります。その状況を見極めるためにも、確認しておくことをおすすめします。
例)ロールモデルとなる人が在籍しているかを聞き出すための質問
質問すべき相手:現場のメンバー
状況:初対面の場で
- 私としては、◯◯の分野に挑戦していきたいと考えているのですが、こちらにその分野に挑戦されている方はいらっしゃいますか?
- その方はどんなシチュエーションでそのポジションを任せられたのでしょうか
成長が評価される環境か
目標設定の仕方や頻度、その評価判断を誰がするか、またその評価はどのように伝達されるのかを確認しましょう。 一般的には頻度が多いほど、あなたの成長度合いを確認しやすくなりますし、フィードバックも早く、結果、成長も昇給も早くなります。
例)評価の仕方を聞き出すための質問
質問すべき相手:現場のメンバー、またはマネージャー
状況:初対面の場で
- チームと個人の目標設定は、どなたが、どのように決めていますか?
- 私が所属した場合、私の目標へのフィードバックはどなたがどのくらいの頻度で行われるでしょうか?評価される方とお会いすることはできますか?
組織は成長し続けているか
組織が成長を維持している状態では、様々な仕事が生まれます。 あなたの成長できる場も生まれやすいでしょう。
また、組織が成長している状態では、優秀な人がいろんなプロジェクトにアサインされるため、今埋まっているポストも空きやすくなります。 また、成長のためにより多くの優秀な人材が必要となるため、必然的に社外からレベルの高い人を、高い給与で採用することになります。 必然的に、社内の平均給与もあがっていくことになります。
一方、組織が成長の踊り場にでている状態では、社内での人材の流動性が低くなり、ポストが固定化されがちで、一人ひとりの仕事の幅が広がりにくくなります。 儲かっていないので給与もあがりません。 私なんかはどMですので、そういう場所に飛び込んで立て直すことに喜びを感じてしまう人間なのですが、まぁしんどいです(ご褒美です)。
これに加えて...
市場は成長し続けているか
組織だけでなく、その組織が属する業界の成長率も大きな影響を与えます。 極端な話、業界が成長している間は、競合との差別化がなくとも事業が伸びることがあります。 成長する業界の中で、どのように差別化する方針かを聞くのもよいでしょう。
ただし、気をつけてほしいのですが「どうやって差別化しますか?」という方針は聞いても、答えまで求めないほうが懸命です。差別化できている状況を作るのはそこに属した人自身(移るならあなた自身)でもあります。差別化が作れそうとあなたが本気で思えるかどうかを大事にしてください。
例)組織や業界の成長率を聞き出すための質問
質問すべき相手:事業責任者、役員クラス
状況:相手があなたを信頼したであろう状況で
- 組織の直近一年の成長率(売上でも粗利でも)を教えていただくことって可能ですか? またそれをどう捉えていらっしゃいますか?
- 業界の直近一年の成長率や、マーケットの推移を教えていただくことって可能ですか? あるいは、自分でも調べてみたいのですけれど、どういった情報を参照するのがいいでしょうか。
全体的に昇給している環境か
提示される年収も大事ですが、昇給率も重要です。組織全体で給与が増え続けている環境かどうかを確認しましょう。 また、正社員の人の中で(経営陣ではなく)、一番もらっている人の給与レンジを聞くのも良い方法です。
例)昇給率を聞き出すための質問
質問すべき相手:事業責任者、役員クラス、人事
状況:相手があなたと働きたいと思っている状況で
- (あの、もしお分かりになればで良いのですけど...)組織全体の昇給率って教えていただけますか?それについてどう考えていらっしゃいますか?
- よろしければ、正社員で一番活躍されている方のご年収がどのくらいか教えていただけますか?
そもそも成長につながる開発環境か
エンジニアの中には、開発環境にこだわりを持たれている方も多いでしょう。事前に確認することをおすすめします。大きな組織だからこの程度のことは当たり前にやっているだろうと思って移るのは危険です。同じ企業でもプロダクトによって全然違うことがあります。
例)開発環境を聞き出すための質問
質問すべき相手:現場のメンバー、またはマネージャー
状況:初対面の場で
- コード品質向上のための取り組みはどのようなことをされていますか?等
- 手前味噌ですが、Forkwell Jobs なら、プロダクトごとの開発環境についてかなりのことがわかります。ぜひ環境調査にご活用ください。
まとめ
本投稿では以下の考えを紹介しました。
- 成長したい方向と給与に、正の相関関係がある組織を選ぼう
- あなたにとって正の相関がある組織の見分け方
あなたのキャリア設計に役立つことを願っています。
余談
人の考えは変わる
私はカレーうどんが大好きでした。 表参道にはカレーうどん千吉という深夜3:00まで営業しているカレーうどんのチェーン店があるのですが、あまりにも好きすぎて週7で通っていた時期がありました。 好きなメニューは、辛吉カレーうどんに味玉・チーズトッピング、そして生ビールです。
ところが、あまりにもカレーうどんを食べ過ぎたせいか、 ある日うどん粉に練りこまれる夢にうなされてしまいました。 それ以来、カレーうどんを食べる頻度が激減してしまいました。 人間は変わる生き物です。 ある日突然成長したい方向性が変わることもあるでしょう。 そんな時は、改めてあなたにとって正の相関がある組織とは何かを見つめ直してみてください。
組織も変わる
人が変わるように、組織も変わります。 市場環境の変化によって、変わらざる得ないときもあるでしょう。 その場合も、改めてあなたにとって正の相関がある組織とは何かを見つめ直してみてください。
とてもハードですが、あなたの力で組織を変えるという選択肢もあります。これをやっていると、周囲からどMと言われます。
状況は良い方向にも悪い方向にも変化するものですから、定期的に今あなたがどんな組織にいるのかを振り返ってみることをおすすめします。
それでは。
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