ひとくちにITの仕事といってもその仕事内容はさまざま。
中には、Slerからゲームエンジニアへの転職を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ゲームエンジニアはとても魅力的な仕事で、
- ユーザーが夢中になるようなゲームを作ってみたい
- エンジニアとして開発の第一線で活躍し続けたい
このように夢は広がります。
ですが、ゲームエンジニアは深夜にまで及ぶ過酷な残業があるのではという情報が流れていることから、二の足を踏んでいる人も。
そこで、今回はゲームエンジニアの実態について、また、Slerとゲームエンジニアの違いやゲームエンジニアに向く人物像など、リアルな情報を交えながらご紹介します。
もくじ [ひらく]
SIerとゲームエンジニアの違い
SIerとゲームエンジニアには大きく2つの違いがあります。
違い①ゲームエンジニアはアジャイル型の開発手法
一般的に、Sler業界ではウォーターフォール型の開発手法ですが、
ゲーム業界ではアジャイル型の開発手法が用いられます。
- ウォーターフォール型…順序だてた工程通りに開発
- アジャイル型…順序どおりではなく必要なところから随時開発
ゲームの開発は、実際にシステムを運用しながらおこない、起こる状況に合わせて計画が随時変更されます。
そのためSler業界のような秩序正しい長期的計画はあまり役立ちません。
昨今のソーシャルゲームは、イベントの開催やガチャのアイテムなど日々更新される項目が多い成り立ちです。
もちろん、ある程度のイベントやガチャの中身ははじめに計画されています。
ですが、ユーザーの利用状況やニーズを観察しながら、急遽当初のイベント内容が変更されることもしばしば。
さらに、ゲームというのは、実際にリリースされてプレイが始まってみないことには、本当にユーザーが必要としていることがわからないです。
そのため、ゲーム業界では、たとえ小さなバグがあってもいいので、まず動く形で製品をリリースして、あとは実際に動かしながら修正や改善を加えていくアジャイル型の開発手法が用いられます。
違い②ゲームエンジニアはフルスタック制
SIer業界では、一般的に分業制でシステムを開発します。
たとえば、インフラエンジニア、アプリケーションエンジニア、データベースエンジニアという風にそれぞれの工程で専門のエンジニアが担当する形です。
ゲーム業界では、フルスタック制が採用されています。ひとつのゲームを開発するのに、設計や実装、あるいはサーバーの台数を決める、ミドルウェアのインストールといったことまで同じエンジニアが担当することもしばしばです。
SIerの場合システムを開発して納品すれば仕事終了となりますが、ゲームエンジニアの場合は、逆にゲーム開発後リリースしてからが本番とも言えます。
リリース後はすでにユーザーが利用していますから、追加機能の開発や更新はスピード感が大切です。
スピード感を重視するためには、Slerのような分業制より、同じエンジニアが広範囲に対応できる方がよいというわけです。
ゲームエンジニアのメリット
メリット①ユーザーの反応が直接分かる
エンジニア職種 | ビジネス相手 | |
BtoCビジネス(Business to Consumer) | ゲームエンジニア | 個人 |
BtoBビジネス(Business to Business) | Sler | 企業 |
BtoBとは「Business to Business」のことでビジネスの相手は企業です。
一方、BtoCは「Business to Consumer 」のことで、ビジネスの相手は個人です。
企業が相手のSIerは、直接ユーザーの声を聞くことはあまりありませんが、ゲームエンジニアは、ユーザーの反応に直接触れることができます。
例えば、ゲームのアクセス数やアイテムの売り上げ、さらにレビューや口コミなどお客様の生の声が分かります。
なかには辛口な意見があるかも知れませんが、今後の改善に役立ちますし、何より目に見える形で成果があらわれるので、モチベーションアップに繋がります。
メリット②高トラフィックなシステム開発ができる
ゲームエンジニアは、高トラフィックなシステム開発に携わることができるので、自身のスキルアップを目指せます。
ソーシャルゲームは、イベントの開始時刻などに一度に大量のユーザーがアクセスします。
たとえばCygamesの人気ゲームである「グランブルーファンタジー」の場合、登録者数は1,500万人(2017年6月のデータ)。
そのうち1割が同じイベントに参加すれば、150万人ものユーザーが一気にシステムにアクセスすることになり、かなりの高トラフィック状態に。
このようなゲーム特有とも言える高負荷なシステムを、ダウンさせずに運用するには、より高度なプログラミングスキルが必要となります。
ゲームエンジニアは、
- コードの書き方やデータベースへのアクセス回数
- データをどのように保持するか
など、ただプログラムが動けばよいのではなく、さまざまなことを考えながらプログラミングしなければなりません。
ゲームエンジニアのデメリット
デメリット①深夜作業がある
ソーシャルゲームにリリースを加える場合、ゲームを停止するとユーザーがプレイできなくなってしまうため、ゲームを動かしたまま作業できるようにあらかじめ設計されています。
ただし、なかには大きなシステム改修などやむを得ずサービスを停止してリリースする必要のあることも。
そうした場合、一般的にはユーザーの利用が少ない深夜に作業をおこないます。
深夜作業をした後、そのまま引き継ぎなど残務処理にかかることもあり、長時間勤務となることも多々あります。
深夜勤務や長時間勤務は、生活リズムが乱れ体調管理が大変なため、デメリットになります。
デメリット②激務に見合った給料ではないことも
新しいゲームのリリース日はユーザーに告知されることがほとんどなので、何が何でもその日までにゲームをリリースさせねばなりません。
さらに、ゲームは完成して終了ではなく、どちらかと言うとリリースしてからが本番。ユーザーの反応を見ながらの改善作業がはじまります。
ひとつのゲームを開発するには多忙な毎日が続き、体力も必要です。
深夜勤務や長時間勤務などの忙しさに見合う給料が得られるならやりがいにもなりますが、中にはどう考えても給料が見合っていないブラック企業も。
ゲーム業界に就職・転職する際は、給与面や福利厚生などの待遇をよく考えましょう。
ゲームエンジニアに向いていない人とは?
ゲームエンジニアは、スピード感が何より重要。
ですからのんびり屋さんや受け身な考えの人には向いていません。
ゲームエンジニアはフルスタック制なので、設計はできるけれどプログラミングはしたことがない、ソフトや技術など興味はあるものの使ったことはない、というのはご法度。
頭で考えるよりとにかく手を動かすことが大切、向上心が大切です。
たとえば、空いた時間にアプリを開発してみる、気になるソフトや技術にはまず触れてみる、といった何事にも主体的に取り組む姿勢が重要です。
ゲームエンジニアに向いている人とは?
これまで、Slerとゲームエンジニアのさまざまな違いをご紹介いたしました。では、ゲームエンジニアに向いている人、Slerからゲームエンジニアに転職すべき人とはどんな人なのでしょうか。
向いてる人①いつまでも手を動かしていたい人
SIerは、年齢や経験とともにプログラミングなどの実務からマネジメントなどの管理職に移行するのが一般的です。
一方、ゲームエンジニアは、スピード感を持ってフルスタック制で開発する事情から、マネジメントのみをおこなうことはなく、年齢が上がっても実務に携わることがほとんどです。
もちろん年齢や経験とともにリーダー職に就くことはありますが、少人数制ですからリーダー自らチームの一員として実際に手を動かします。
たとえば毎月の売り上げが数億円とも言われる大きなゲーム開発も、7~8人の少人数チームによって運営されているのだそう。
いつまでも実務に関わり、自分の手を動かしてシステムを開発したい人にとってゲームエンジニアは最適の職業です。
向いている人②スピード感のある開発を希望している人
繰り返しになりますが、ゲームエンジニアはスピード感を重視します。またフルスタック制で一人のエンジニアが広範囲を担当するので、細かな設計書は必要なく、簡単な仕様書だけでいきなりプログラミングをはじめます。
なによりゲームは面白いかどうかが大切です。まずは動く形まで持っていきプランナーやユーザーに使ってもらいながら、バグを修正する、改善点を補修するという風に完成形に近づけていきます。
Slerのような秩序に乗っとった開発ではなくスピード感のある開発が好きな人は、ゲームエンジニアへの転職を視野に入れるとよいでしょう。
向いている人④新しい技術や言語にチャレンジしていたい人
使用するプログラム言語がほぼ固定されているSlerとは違い、ゲーム業界では、携わるゲームごとにプログラム言語が変わることもしばしばです。
ゲーム開発では、使用言語やフレームワーク選択の自由度が高く、その時に流行している言語を取り入れてみるといったこともあります。
なかにはこれまでに前例や実績がないからこそ新しい技術にチャレンジするといった選択がなされることも。
たとえばゲーム本体と管理ツールの言語が違う、同じゲームなのにところによりデータベースの形式が異なるということも常です。
ゲーム業界は、いつも最新の技術を追いかけている風潮があるので、好奇心旺盛で常に新しい技術を学びたいと考える人に合っています。
SIerからゲームエンジニアへの転職の実例
SIerからゲームエンジニアに転職する年代は30代前後が多いようです。
転職理由としては、管理職やマネージメント業ではなく、自分の手を動かしてシステムを作っていたいというものが多いです。
転職時のスキルは人によってさまざまですが、仕様書なしでの実装は苦手、可読性や拡張性の高い仕様書を書けない、など前職Slerの習慣が影響し、ゲームエンジニアとしては新卒と変わらないという人も。
逆に、転職してすぐに運用中のゲームの責任者に大抜擢される人もいます。
転職後すぐにゲームエンジニアとして活躍する人に共通しているのは、技術的な知識の豊富さに加え、自分の考え方を新しい環境に合わせるのが上手ということです。
ゲームエンジニアの年収とキャリア
次に、ゲームエンジニアの気になる年収とキャリアについてご紹介いたします。
ゲームエンジニアの年収
大手ソーシャルゲーム会社のなかでも上場を果たしている6社について、各企業の有価証券報告書のデータから平均年収を見てみます(カッコ内は平均年齢)。
グリー(約34歳) | 約780万円 |
DeNA(約34歳) | 約780万円 |
サイバーエージェント(約32歳) | 約780万円 |
コロプラ(約31歳) | 約580万円 |
ガンホー・オンライン・エンターテイメント(約38歳) | 約640万円 |
gumi(約35歳) | 約600万円 |
なお、上場していない中小企業の平均年収はこれより低いと推測されます。
またこの数字はあくまで平均年収であり、転職してはじめのうちは300~400万円代スタートであることが多いようです。
ゲームエンジニアのキャリア
ゲーム業界では、管理職などの役職自体あまり豊富にありません。
ゲームを開発する少人数チームのリーダーのほかは、会社のゲーム部署の代表くらいです。
また、ゲーム業界は実力主義なので年功序列でリーダーに選ばれることはほぼありません。
さらにゲーム業界では、リーダーなどの管理職になっても同時にゲームエンジニアとして実務をこなすので、マネジメント業のみをおこなうということはほとんどありません。
ゲームエンジニアは役職にこだわらず、自分の技術を磨くという意味でのキャリアアップを目指す職業と言えるでしょう。
SIerからゲームエンジニアに転職するために
ではここからは、Slerからゲームエンジニアに転職するためのポイントを4点ご紹介いたします。
ポイント①転職は30代前半までにするのがベスト
ゲームエンジニアに限らず、エンジニアの転職は35歳までにするという考えが一般的です。
なぜなら年齢を重ねるにつれ若い人と比べてどうしても覚えが悪くなるので採用されにくくなるからです。
さらにSlerからゲームエンジニアに転職する場合、前職のSlerの習慣からゲームエンジニア独特のやり方に早く慣れる必要があります。
与えられた仕様書どおりのシステムを作るのではなく、たとえ仕様書がなくても考えながらプログラミングし、面白いゲームにするにはどうすべきかアイデアを織り込んでいきます。
まさにスピードが命。この開発環境に馴染むためには、できるだけ若い年代、遅くとも30代前半までに転職するのがベストです。
ポイント②必要なスキルを勉強する
ゲームエンジニアに必要なスキルとしてまず挙げられるのは、何よりユーザーを楽しませたいという気持ちです。
- 常によいゲームを作りたいという向上心
- 少人数チームでの協調性
- 即座にシステムを改修できる柔軟な考え方
このようなスキルが必須といえるでしょう。
技術的なスキルという意味では、ひとつだけ秀でたスキルを持っているより、メインのスキルのほかにもいくつかの複数のスキルを持っていることが有利です。
- Web開発に使われる言語スキル(PHP、Java、Ruby)
- DB知識(RDB、NoSQL)
- サーバー知識(Linux)
- フロントエンド知識(CSS、JavaScripto)
- ゲームエンジン知識(Unity、Cocos2d-x)
- 管理システムの知識(Git)
違う分野のスキルを広く知っていることが大切です。たとえ独学でも実際に触れて使えるというのは大きなアピールポイントとなります
ポイント③資格よりも自分の実力を身に付ける
ゲーム業界は、実力主義の社会です。資格は書類選考や面接の際に参考にはなりますが、資格を持っているからと転職に有利になることはほとんどありません。
資格取得よりも自分の実力をつけることに時間を使ったほうがよいでしょう。
- 独学で何かひとつゲームを作ってみる
- Githubを使ってソースを公開してみる
- 勉強会で発表する
- コミッターになり活動する
将来ゲーム業界への転職を考えているなら、ぜひ今すぐチャレンジしましょう。
ポイント④年収が多い会社を選ぶ
前職の年収と同じかそれ以上もらえる会社を選びましょう。
いくらゲームエンジニアとしての経験がなくても、Slerとしての経験がありそれなりのスキルを持っているはずです。
以前の年収と比べてあまりに少ない会社は、いわゆるブラック企業である可能性があると注意しましょう。
ポイント⑤ヒットしている会社を選ぶ
ヒットしているゲームを一つ以上開発している会社を選びましょう。
大ヒットしたゲームはもちろん、そこまでのヒットではなくとも話題にのぼったゲームを手掛けた経験のある会社は、それなりのノウハウを保持しています。
今後、ゲームエンジニアとしての経験を重ねスキルを磨くには、スタートアップ企業より実績のある企業を選ぶ方が早道です。
普段からプライベートでゲームをして、どんなゲームが流行しているのか、どんなゲームがあるのか観察しておくことが大切です。
転職はプロに相談するのが近道
SIerからゲームエンジニアへの転職。情報を知り、ますます転職したくなったら、あとは実行に移すのみ。
転職は転職エージェントを利用するのがおすすめです。もちろん自分の力で情報を集め転職活動をするのもひとつ。
ですが、転職エージェントは転職のプロです。相談すれば、希望などをきめ細かく聞いてくれ、通常の転職サイトでは得られない情報をもとに、より自分に合った会社を紹介してくれます。
まとめ
ここまで、SIerからのゲームエンジニアへの転職について、さまざまな情報をご紹介しました。
SIerと違ってゲームエンジニアは、アジャイル型開発、フルスタック制です。
そうしたやり方が向いていないひともいますので、転職前によく考えましょう。
今すぐの転職ではない場合は、プライベートでゲームを作ってみる、といった経験を積んでおくと転職に有利です。
さあいよいよ転職しようと思ったら、転職エージェントに相談するのがおすすめ。自分に合った会社への転職を成功させましょう。