« 横浜読書会「男と女」に行ってきた | トップページ

料理は「火入れ」で上達する『から揚げは「余熱で火を通す」が正解!』

 こういうのが欲しかった料理本。

 一人暮らしの自炊から始めて、所帯を持ち、家庭料理もやるようになって20年。本やネットを参考に、自己流で試行錯誤をしてきた。クックパッドは有料会員でないと無意味なことも分かっているし、[白ごはん.com]だと、レシピと技が一緒に身につくことも知っている。

 自己流で得た極意は、「料理は下ごしらえが全て」だ。道具や調味料にこだわりを求めるのもいい。だが、美味しさを引き出すのは、捌いたり切ったり下味をつける「下ごしらえ」にあることに気づいた。おかげでずいぶん上達し、今では「いかにあり合わせで美味しいものを作るか」とか「洗い物を最低限かつ料理が終わった時点で最小限」といったテーマを追求している。

 それでも課題はある。レシピ通りに作ったのに、イマイチなのはなぜか? 

 たとえば「から揚げ」。一口大に切った鶏肉に衣をつけて揚げる。切りかたや衣の配合を色々と研究したが、すごく美味しくなるわけではない。

 あるとき「二度揚げ」を知った。やってみたところ、本当に「外はカラッと中はジューシー」になったので驚いた。そしてポイントは、「二度揚げる」というよりもむしろ、「いったん油から出して余熱で火を通す」点であることを理解した。

 この「余熱で火を通す」こそが重要で、から揚げだと「二度揚げ」というし、ステーキだと、「火から下ろして肉を休ませる」とレクチャーされる。そうすることで、外はこんがり、中はジューシーとなる。いつもの食材、いつものレシピなのに、「火入れ」に意識的になるだけで、驚くほど美味しくなるのだ。

 本書は、いつもの料理を劇的においしくする「火入れ」に特化する。調理のどのタイミングで、どのように火をコントロールするか、そのときの食材はどのような状態となっているかを、細かく解説してくれる。そして、「火入れ」を確実にするために、どのように「下ごしらえ」をすればよいかまで書いてある。これは嬉しい。

 たとえば、レシピ通りに作っているのに、上手くできない、ということはないだろうか。「中火で5分」とか「180℃で3分」とあり、その通りにしているのに、肉や魚がパサついてしまうとか、逆に外は焼きすぎなのに、中まで火が通っていないという失敗だ(わたしはよくやる)。

 本書では、「レシピに縛られ、素材の様子をよく見ていないから」だと喝破する。レシピの時間や温度は、あくまでも目安にすぎない。食材の温度や大きさ、調理器具のサイズや室温などで、いくらでも変動する。火入れによって食材がどう変化していくか、自分の五感をフル活用して感じ取れというのである。

 そして、「〇分たったらどうする」ではなく、「どのような状態になったらどうする」という感覚をつかめという。もちろん食材やレシピによって、火の入れ方は違う。できあがりをイメージしつつ、火をコントロールすることが肝要だという。

 ハンバーグからトンカツ、親子丼や角煮といった定番料理を取り上げ、大きく2段階に分けて解説する。まず、「ありがちな失敗は、どこに起因しているか」を説明し、次に「解消するための火入れのコツ」をプロセスごとに紹介する。

 から揚げでいうなら、ありがちな失敗は「肉がパサパサ」「衣がべチャッと」「焦げているのに中は生」がある。これらは、いったん油から出し、じんわり余熱で火を通すことで解決する。

Yonetu1

 この「余熱で火を通す」とは、具体的に肉がどのような状態になっているときに、どうすればよいか、そこまで書いてあるレシピは少ない(せいぜい、3分揚げたらバットに取って2分休ませるぐらい)。余熱の前後で、どのように火が入っているか、さらに余熱を活かして料理するにはどこに注意を払えばよいか、ここまで詳細に説明しているのはありがたい。

Yonetu2

 他にも、目からウロコの火入れの技がぎっしりとある。以下のヒントで「!」となるなら、きっと得るもの多いはず。

  • 「炒める=具材の表と裏を焼くこと」だから、フライパンを振っても意味がない
  • 炒め物はフライパンの上でつくるサラダ(予め調味料を油で炒めることで、味の付いた油をつくる)
  • フライドポテトは冷たい油からじっくりと、揚げるというより煮る感じ(温度が上がっていく過程でポテトの水分が出ていく)
  • 豚しゃぶは入れたら火を止めろ(肉のタンパク質は65℃で固まる)。うっすらピンクで取り出して、冷ます過程で火を通す

 「焼く」「炒める」「揚げる」「煮る」「ゆでる」ごとに、定番料理が30品並ぶ。重要なのは、これらを通じて「火入れ」をマスターすることで、他の料理も同様に上手くなること。料理のレパートリーを増やすのではなく、今ある料理の腕を上げる。これは有り難い。

 レシピ通りに作っているのに、イマイチだと感じ始めたら、それは「火入れ」で解決するかもしれない。ぜひお試しあれ。

Yonetu3


zenback読み込み中です。

|

« 横浜読書会「男と女」に行ってきた | トップページ

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18285/67023909

この記事へのトラックバック一覧です: 料理は「火入れ」で上達する『から揚げは「余熱で火を通す」が正解!』:

« 横浜読書会「男と女」に行ってきた | トップページ