『小さな恋のメロディ』は、なぜ日本を中心にここまで愛され続けてきたのか!?
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イギリス・アメリカで無視された映画が日本で大ヒット
今から半世紀近くも時を遡る、1971年。日本で、意外な洋画が話題を集めていた。そのタイトルは『小さな恋のメロディ』。同年の配給収入で2億円を記録し、洋画の5位という大ヒット。上位4作品は3.2億円の『ある愛の詩』を筆頭に、『エルビス・オン・ステージ』『栄光のル・マン』『チャイコフスキー』と並ぶ。ちなみに邦画のトップは7.8億円の『男はつらいよ 寅次郎恋歌』であった。
ロンドンのパブリックスクールに通う11歳のダニエルが、同じ学年のメロディに恋をする。親や教師に内緒で、友人たちとともに二人は結婚式を挙げるという、少年少女のピュアなラブストーリーは、本国イギリスではまったくヒットせず(むしろ「駄作」の烙印を押されてしまった)、先駆けて公開されたアメリカでも成績はパッとしなかった。イギリス・アメリカで、ある程度の期待がかけられたのは、ダニエル役のマーク・レスターと、友人トム役のジャック・ワイルドの知名度が高かったから。アカデミー賞作品賞受賞作で、1968年のミュージカル映画『オリバー!』でマークは主人公を演じ、ジャックは2番手のキャストで共演していのだ。とくにジャックは天才子役スターであり、『小さな恋のメロディ』でも最初にクレジットで名前が出てくる。
しかし両国の不振に関係なく、日本では予想外のヒットを記録した『小さな恋のメロディ』は、熱狂的なファンを獲得することになる。ここから数年にわたって、何度もリバイバル公開が続き、TVのロードショー番組で放映されると高い視聴率を上げた。映画雑誌「スクリーン」ではマーク・レスターやメロディ役のトレイシー・ハイドがたびたび表紙を飾り、「ロンドンのトレイシーに会う読者ツアー」のような企画もあったほどだ。
マーク・レスターは、日本でCMにも出演(森永製菓の「ハイクラウン」)、1973年の日本映画『卒業旅行 Little Adventurer』に「主演」で迎えられるほどの人気を獲得した。トレイシー・ハイドにも当然のように日本映画の出演オファーがあった。残念ながら実現はしなかったが……。
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