2018年08月05日

予備校講師は残念一般書籍を出すのはやめよう

・もう3月末なのに「追加合格」って?(NHK)
→ 今年の私大の合格者は本当に絞られていて,大学側は入学者数の調整に大変そうであった。しかし同様に大変だったのが受験生の側で,予測されていたとはいえ,例年よりも要求される学力が跳ね上がってしまい,思っていたような成果が出ないことに苦しんでいた。私大文系なら,影響が薄かった早慶上智より下の,明治大や同志社大あたりからは例年よりかなり高い学力でないと受かっていない。昨年までいかに定員よりもかなり多く合格を出していたかわかるようなものだ。結果的に,滑り止めに行ったり浪人した人は多かったようだ。受験料の捻出が苦しかったり浪人できないようなご家庭が一番悲惨で,この影響で大学進学自体をあきらめることになった受験生も少なからずいたことだろう。
→ 一方,
記事中にある大学の担当者の「そこに入れなかったけれども優秀な学生がうちの大学に入ってくる可能性もある。そうなれば、学生の質も上がるし、ありがたい話だ」というのは正しい予測であり,文科省の本来の目的ではないものの,受験料・入学金ビジネスのどんぶり勘定の適正化という点では悪くない施策だった。受験料・入学金ビジネスが私大経営上の欠かせない収入源になっているのは,やはり不健全である。
→ さて,これが文科省の思惑通りに地方大学への学生の分散に効果があるかというと,おそらくほとんど全く無く,むしろ大都市圏の大学の偏差値がさらに上昇することになると思われる。元から地方の進学校の高校は大都会に行きたければ勉強しろというような方便を使うので,その説得方法がさらに大義名分を得てしまうだけなのではないか。


・「ポップ地政学」本の掲載地図批判-主に高校地理レベルでの内容の誤りについて
→ 愛大の人文地理学の教員による,世間の雑な地政学本批判。この先生は以前にも中学の教科書上の地理の誤りを指摘する等,教育課程や世間と地理のかかわりで積極的な情報発信をしている。そういえば,その割に今年のムーミンのアレの際には発言を聞かなかったが。以前に「通俗的な歴史本にも,専門家の批判はされるべき」と書いたので,地理でそれをやってくれるのは大変に心強い。やはり歴史家もやるべきであろう。
→ 本題であるが,私の立場から言えば,リストアップされた問題のある地政学本に少なからず世界史の予備校講師がいるのが大変に残念である。特に茂木誠は駿台の,荒巻豊志は東進の,それぞれの看板講師であり,押しも押されぬトップクラスの世界史の予備校講師である。後者は私も現役受験生の時にお世話になったので悲しい。「致命的な地図掲載数ワースト5」に限れば4冊が茂木・荒巻の著書で,特に3冊は茂木先生である。二人に共通して反共であるが,それが長じてこんなことになってしまったか。他に村山秀太郎はスタディサプリ・秀英予備校の講師であるが,私はこの人については詳しくない。予備校講師が櫻井よしこや倉山満と並んでこういうものを出版する時代になったか。
→ 指摘は概ね妥当であるが,ちと細かすぎる気も。たとえば,p.34のアフガニスタンのように枠外に重なるから国境線を省略しているやつは許してやってほしい。
→ 結語の「地図がゴミであることを冷静に周知させる• あとは放っておけば勝手に自滅するだろう」というのは甘くて,それで離れるような読者はそもそもこんな本を買っていない。


・3時間→10分に短縮! 吉野山の偉業にみる観光地の渋滞解消法(SankeiBiz)
→ JTBやるやんけ,からの3期では外されていて,しかも赤字化しているという……とても良い記事なんだけれども,その背景・理由が書かれていないので非常にもにょる。案外JTB側の負担が大きすぎて撤退したのかもしれない。それなら別の会社では上手くいかず赤字化したのは理解できる。


・広告業界と漫画村やAnitubeは完全にグル (アンテナ開発者ブログ)
→ 記事上段に出てくる広告依頼・受諾の流れが面白い。こんだけ入り組んでれば確かに罪悪感とリスクのロンダリングになるだろう。「そのサイト,悪質な著作権侵害サイトだよ」とか「デマサイトだよ」と言われても知らぬ存ぜぬで通せてしまう。これは,このネット広告に特有な構造を壊すしか無さそう。