経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

アベノミクス・循環しない中での消費と物価の低迷

2018年08月05日 | 経済(主なもの)
 日本経済は、何もしないと緊縮のブレーキがかかる「構造」になっている。4-6月期GDPは実質年率で1%強くらいになりそうで、前期のマイナス成長からの戻りとしては、明らかに鈍い。第一の理由は、輸出の減速にあるが、税収増で財政収支が大幅に好転し、資金の循環がせき止められていることも大きい。財政が成長の果実のダムになり、家計への放流をしないと、消費は停滞し、物価が上がるようにはならない。これは、日銀の問題ではあるまい。

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 6月の鉱工業生産は、前月比-2.2と低下するネガティブサプライズで、4-6月期は、前期比+1.2にとどまり、1-3月期の-1.4を取り戻せないままに終わった。在庫も前期比+1.7となって、高い水準になっている。生産予測は、7月は+2.7と前月の低下を埋め合わせ、8月は+3.8と高めだが、休みの時期でもあり、割り引いて見る必要がある。こうした背景には、輸出の減速がある。4-6月期は、日銀・実質輸出が前期比+0.5と、昨年までの勢いはない。特に、この5,6月は低水準だったことには、注意が必要だろう。

 他方、雇用は一段と拡大している。労働力調査の男性雇用者数は、1-3月期が+20万人と大きく伸びたのに続き、4-6月期も+10万人となった。遅れていた中高年層の就業率も着実に上がっている。これを受けて、4,5月までの数字だが、雇用者報酬は、前期比がかなり高いものになっている。毎月勤労統計でも、常用雇用は着実に増え、物価の低下による実質賃金の浮上により、両者の掛け合わせも、雇用者報酬と同様に高い。また、人手不足も極まり、6月の新規求人倍率は、2.47と今の回復局面の最高を更新した。

 こうなると、設備投資への意欲が強まっていく。日銀短観は無論のこと、政投銀の調査でも明らかだし、今年に入って輸出が鈍ったにもかかわらず、4,5月の機械受注では、製造業が増勢を保ち、非製造業も伸び始めている。また、企業の建設投資は、昨年後半に高原状態で歩んでいたが、今年以降になると、再び積み増しが見られるようになった。底入れをやっと果たしただけの公共や住宅とは、動きを異にする。人手不足から設備投資へ、その設備投資が成長を先導するというのが本来の景気回復の姿である。

 その中で、消費は低調だ。6月の指標はこれからだが、6月の商業動態の感じからすると、GDPの家計消費(除く帰属家賃)の伸びは、実質前期比で+0.25位にとどまると思われる。消費は+0.4位は欲しいところであり、1-3月期が-0.2だったことからすると、まったく物足りない。これでは、消費は横バイ状態である。一方、前に本コラムで記したように、財政収支は劇的に改善している。景気が良くなったから、財政は何もしないとなると、自動的にブレーキがかかる。今はまだ、加速すべき局面であろう。

(図)



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 2018年度の国の税収について、本コラムは予算額を1.5兆円程上回ると予想する。最初の税収の動向は、7月分が判明する9月初めに分かるが、6月分まででも予想を上回るペースにある。雇用拡大のペースも早いため、公的年金の保険料の上ブレもあろう。春以降は、円安局面に変わっており、企業収益や財政・年金にはプラスでも、家計消費にはマイナスに働く。こうしたアンバランスを是正するような財政運営が求められよう。この度、日銀が長期金利の上限の弾力化を打ち出したが、円安による物価上昇は弱い消費を痛めるため、評価できるものだ。物価は、ただ上げれば良いというものではない。


(今日までの日経)
 パート賃上げ率、4年連続で過去最高 小売り・外食。設備投資38年ぶり伸び。米民主 台頭する新世代 ラナ・フォールハー。日銀緩和継続、副作用に配慮。パート、勤続5年未満も無期雇用。介護人材など育成 学費支給最大4年に。
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