国際的に報じられた東京医科大学の性差別事件
日本の東京医科大学が、入学試験で女性の受験者を一律減点して不正に合格率を下げていたという性差別事件が国際的に話題になっています。
この件について友人のエストニア人女性(日本への滞在経験があり日本語が話せる)に尋ねてみたところ「あ、ネットでこのニュースのヘッドライン見たかも!」と言っていたので、日本に関心のある若者たちにそれなりにインパクトを与えているかもわかりませんね。
日本における女性差別って、むしろ日本に留学などで滞在経験があるような、日本好きの若者のほうがよく知ってるんですよ。
www.from-estonia-with-love.net
特に女性の場合、「日本の文化は大好きだけれど、女性にとっては生きづらい社会だから、住みたいとまでは思わない。遊びに行くくらいならいいけどね」なんてことを普通に言ったりします。
日本の人たちは、テレビで頻繁に放送されているいわゆる「日本礼賛番組」などの影響で、
「ヨーロッパの人たちって日本が大好きなんでしょ? いま世界は空前の日本ブームで、みんな日本のウォシュレットを絶賛しているんでしょ? 日本は世界のなかで珍しく四季がある国だから、ぜひ日本に旅行したいと思ってるんでしょ?」
などと信じこまされているようですから、そういう反応があること自体にびっくりするかもしれませんね。
エストニアの医師の74パーセントは女性
現在わたしが住んでいるエストニアは、医療の世界においては最も女性が進出している国として知られています。
OECDの調査によると、エストニアの医師のうち74パーセントが女性とのことです。
一方で、女性への不当な医学部入学制限が発覚した日本は20パーセントという極端な低位にとどまっています。
「女性医師は出産や子育てなどで職場を離れざるを得ないから、結果として女性医師の割合が高いと医療水準の低下や治療費負担の増大を招くのだ!!」
などといったトンデモ意見まで見られるようですが、医療水準の低下については世界で最も権威ある医学雑誌のひとつ「ランセット」の調査があっけなく否定しております。日本のミソジニストのみなさんは想像力が豊かでいらっしゃるんだなあと(笑)
エストニアも概ね北欧諸国レベルの医療水準を持っている国です。わたしもこちらで救急サービスを呼んでもらった経験があるんですが、(屋外でマダニか何かに刺されてしまい足が異常に腫れた)、緊急出動費も治療費も無料でした。なお駆けつけてくださった隊員2名もともに女性でした。
「海外だったらちょっと救急車呼ぶだけで数十万円!!」みたいなことを言う人の「海外」って、すなわち医療費の自己負担が極端に高い「アメリカ合衆国」なんじゃないですかね。大陸ヨーロッパは存在していないことになっているのかな(笑)
ただし、エストニアはEU加盟国のなかではまだまだ貧しい部類の国ですから、医師の給与の低さによる人材流出という問題を抱えているようです。
上の記事によると、2014年におけるエストニアの医師の平均月収は1944ユーロとあります。現在のレートで日本円に換算するとわずか25万円ほど! それでもエストニア人の平均月収の2倍であり、物価が非常に安い国であるために生活に困ることはまずないでしょう。しかし、この給与水準ではノルディック諸国やドイツ、イギリスなどに移住してしまう人が多いのもわかりますね。
「優秀層」の女性は、そもそも日本など眼中にないのではないか
このニュースを受けてだと思いますが、さっそくフランス大使館やフィンランド大使館がこのようなツイートをしてるんですね。
今回の報道を耳にして、日本の医学部志望の女性たちはどう思うんでしょうかねえ。 ほんとうの上位層はすでに「日本なんぞはなから眼中にない」くらいなんじゃないかなあ。
医者を目指すくらいのレベルの頭脳の持ち主ですから、英語もできるだろうし海外に目を向けている人たちも多いことでしょう。「今後の日本の人口ピラミッドの推移と社会保障費の規模を考えると、このまま日本に住み続けた場合の自分の生活水準はどうなるだろう」くらいの計算はとうぜんできるはずです。
で、そういった優秀層が、「女性を社会進出の機会から排除してもかまわないどころか、それを合理的だとさえ思っている国」に、わざわざ好きこのんで残留する道を選ぶのかな、と思うんですよねえ。
「日本に生まれた以上、日本のために尽くすべきだ! お国のために身を捧げるべきだ!」
なんて言われても、
「あ、わたしはお国の犠牲になるつもりなんてさらさらないです。好きなところに行って好きな人生を歩みます」
って考えのほうが自然でしょ、ここまでグローバルな時代なんですから。
愚かな人たちは最後の最後まで気づかないんだろうなあ…。まあ、いいけど。