Hatena::ブログ(Diary)

rabbitbeatの日記

2010-10-27

「DQNネーム」が最近多い理由 今時の親の名前のつけ方 @NHKAdd Star

23:29 | 「DQNネーム」が最近多い理由 今時の親の名前のつけ方 @NHKを含むブックマーク

名前です。なんて読むか分かりますか。正解はマウスで()内反転させてみてください。

                      

                                     

                                     

飛海(ひの 男の子の名前


眞慧(まさと 男の子の名前


羚凪(れいな 女の子の名前


 NHKの番組「みんなでニホンGO!」9月23日放送回のテーマは「ユニークな名前どう思う?」でした。最近多い読めない名前。ネットではDQNネームとして何かと話題になります。冒頭の3つの名前では、眞慧をこの範疇に含めるのはちょっとかわいそうな感じですが。

 面白かったので内容まとめてみました。


目次

 個性的な名前、許せる?許せない?

 日本人の名前の大原則

 昔からあった読めない名前

 名乗り読みの多さは歴史的蓄積

 最近の名前事情

 変わった名前が増えてきた理由→たまごクラブのせい


 番組で挙げたユニークな名前の問題点は二つ。「読めない」と「性別が分からない」。学校や職場などで困るというもの。


 ベネッセ2009年調査で人気のあるユニークな名前

男子 1位:大翔(ひろと) 5位:蒼空(そら) 16位:陽翔(ひろと)

   18位:颯(はやて) 45位:琉生(るい)


女子 4位:結愛(ゆあ) 16位:花音(かのん) 18位:心優(みゆ)

   20位:美空(みく) 29位:心愛(ここあ)


 スタジオの意見。読めない個性的な名前、許せる35%許せない65%

 10歳男子「個性的なほうがカッコいい。クラスの人気者」

 60歳 粛(すすむ)さん「変わった読みで話のきっかけになる」

 名越康文精神科医)「個性的な名前にしなくても人は十分個性的。変わった名前つけると人生挫折したときに名前がプレッシャーになる」

 阿辻哲次言語学者)「少子化の影響で個性的な名前が増えてる。一二三(わるつ)という名前も」


日本人の名前の大原則

 戸籍法50条

この名には常用平易な文字を用いなければならない


常用漢字1945文字人名用漢字985文字計2930文字の漢字が使用可能


 ただ、その漢字をどう読むかは制限されていない。戸籍の氏名欄には漢字のみの記載で、読み方は記載されない。

 出生届には読み方を記載する必要がある。日常生活で支障がでそうな読み方と職員が判断したときには役所で相談する。


番組で紹介された最近の名前

男子 誠美音(まさみね) 歩魅哉(ふみや) 満斎(まんさい

   翔弥(たくみ) 歩武(あゆむ


女子 結芽葉(ゆめは) 野乃子(ののこ) 毬花(まりか

   明花音あかね) 結梨(ゆり


昔からあった読めない名前

 秋田大学教授・佐藤稔(日本人の名前研究者)の話

 「今時の名前は読むのが大変、というよりも、読むのが大変な名前は昔からたくさんあった」


 例えば「和」という字。訓では「なごやか」「なごむ」「やわらげる」だが、名乗りでは「あい・あえ・かず・かつ・かた・かのう・たか・ちか・とし・とも・のどか・ひとし・まさ・ます・みきた・やす・やすし・やわ・やわら・よし・より・わたる…」と多くの読ませ方を昔からしてきた。

 これは、かつて漢字を輸入した時に、漢字の意味に応じて、大和言葉を当てはめたもの。漢字は1文字に複数の意味があるため、いくつもの読みが生まれた。その多くは、普通の読みとして用いられなくなったが、名前だけには使われ続ける読みとなった。


 阿辻哲次氏の補足

 「和」を「かず」と読ませるが、「和(わ)」は足し算の答えの数(かず)だから、「和(かず)」と読むことになった。

 ひとつの漢字が持つ多用な意味のどこかに寄りかかって、その読みを決めている。


名乗り読みの多さは歴史的蓄積

 読めない名前問題は、日本語が漢字を受け入れたときからの宿命。

 歴史的には、菅原道真の「真(さね)」、源頼朝の「朝(とも)」が名乗り読み。

 公家や武士が自らを権威付けようとしたとみられる。


 江戸時代には名付けのマニュアルとして「韻鏡名乗字大全」という本が大ベストセラーに。庶民の間で名乗り読みを用いたブームがあった。

 国学者本居宣長は、「玉勝間 十四の巻」の中で

近しきころの名には あやしき訓有て いかにとも よみがたきぞ 多く見ゆる

(最近の名前は変な読み方をして、どうしても読めない名前を多く見かける)

とぼやいている。本居宣長の門下生の名簿「授業門人姓名録」には簡単に読めない名前があちこちにある。

毎敏(つねとし) 信満(さねまろ) 将聴(まさあきら) 

美臣(よしお) 舎栄(いへよし) 政要(まさとし


最近の名前事情

 番組調査「今時の親が子供に名前をつけるときに大切にしてること」


 一位は「音の響き


 命名研究家の牧野恭仁雄氏曰く、「テレビやラジオオーディオ機器に囲まれて育った世代が親になってことが音の響き重視の名前が増えた原因。この漢字がいいから使おう、という発想はなく、親が呼びたい名前の音が最初に浮かんでくる。先に音を考えて後で漢字を当てはめるというように名づけが変わっていった」


変わった名前が増えてきた理由→たまごクラブのせい

 番組が取材した最近女の子が生まれたAさん夫婦。娘には莉杏(りこ)と名付けた。先に「りこ」という読みが決まった。漢字をいろいろ考えたが、「子」という漢字など普通の漢字を使うのは嫌だった。個性を出したい。特別な名を与えたい。そんなとき助けになったのが「たまごクラブ」というマタニティ雑誌。


 たまごクラブは初産の3人に1人が読む雑誌。たまごクラブでは創刊時から、新しい名前をつけるように積極的に提案し、名づけマニュアルや名づけ特集号が出されてきた。読者から寄せられた「こんな名前つけました」コーナーは人気特集。豊富な実例から、名付けの最新のトレンド、人気ランキングなどを紹介。「国際化にあった名前」「ディズニー好きな名前」などなど。


 中西和代編集長「読者が実際に名付けている名前のセンスが良かった。この新しい名前を読者に紹介したかった。紹介した名前をそのまま付ける方もいるが、そこから、もう一つ自分らしさをアレンジして名付けることが多いようだ」


 Aさん夫婦は、たまごクラブの名付け特集に刺激を受け、より個性的で今までにない名前を模索し始めた。インターネットや命名辞典をフル活用し、たどり着いたのは当て字だった。「杏」という字を「こ」と読ませ、「莉杏(りこ)」と名付けた。

 記者「読めなくないですか?」

 Aさん「読めなくても名前を紹介するきっかけになればいい。しっかり自分の名前を説明できる子になってほしい」


 京都文教大・小林康正教授「大量の情報が簡単に手に入る現代社会だからこそ名付けが困難になっている。音、字面、イメージなどさまざまな観点で情報過多になっている。「これまである名前は嫌だ」と、当て字でも何でも他人が使っていない漢字を使おうとする。全ての観点をクリアしようとすると複雑な名前にならざるを得ない」


最近の名前の読み方の傾向

 星(きらら

   漢字のイメージを読ませたもの


 月(るな) 騎士(ないと)

   漢字に対応する外国語


 希彩(のあ)

   訓の一部を使う。「ぞむ」+「や」 


 こうした法則を覚えておくと、読めない名前に会ったときに一発で読み方を当てられるかもしれません。



感想その他

 NHKの番組はここで終了。こんだけ特集してもスタジオの観覧者はやっぱり、読めない名前は許せない派が多かった。

 番組では、「読めない名前」に重点を置いたVTR作りをしており、そもそも「きらら」「るな」「ないと」と読ませる名前はどうなのか、といった内容は薄かった。アニメ、漫画、ゲーム、小説の登場人物に名前を付けるような感覚で子供に名づけていいのか、これまた賛否分かれるところだ。好きなキャラクターの名前、好きなブランドの名前、好きな車の名前…と、親の好きなものをそのまま名付けたりする場合。ひらがな、カタカナ、簡単な漢字表記で読めればそれでいいのか、とか。


 といっても最近増えてきただけで、上の世代にも今と同じように自由に名付ける親はいた。俳優の下條アトムの「アトム」は本名だし(手塚治虫鉄腕アトムよりも前に名付けた)、新聞の訃報欄などを見ると「こんな名前昔からあったの?」という老人の名前に出くわすこともある。親がハイセンスだったんだろうが、どんな思いで自分の名前と一生付き合ったのかは分からない。


 漢字の読ませ方は、今よりも昔のほうがより自由だったのかもしれない。少し前の「ナニコレ珍百景」で変わった苗字のある光景が紹介されていた。これ読めますか?(正解はカッコ内文字反転)

 一寸木(ちょっき) 月出(ひたち) 月見里(やまなし

 詳しい解説は公式サイトを読んでもらうとして、全部とんちというか言葉のイメージを読みにしたわけで、おそらく戦後常用漢字を定めるまでは、漢字の読み方は自由だったんだろうなぁ、と想像する。今ある名前の星(きらら)も同じ傾向で、そう考えるとこういう発想でいろいろ名付けてみたいな、と思える。

 「読めない名前は漢字を受け入れたことの宿命」という話があったが、外国語を元にした名前も西洋文化を受け入れた時からの宿命だった、とも思った。


 個人的に違和感の覚える名前は、訓読みと音読みが合わさった名前。「麗海(れみ)=い+う」みたいな。読み方聞いても「ん?」となる。

 たまごクラブの特集は、DQNネームに批判的な人に「ここが元凶か」と思わせる。情報過多の時代の割に、情報の発信源は意外と少なかったりする。

 もし自分が子供に名前をつけるなら、昭和っぽい名前にすると思う。特に男の子。なんとか郎、なんとか介とか。多分、もう少ししたら、そういう名前がまた流行ってくるんじゃなかろうか。