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スクラムで削除された5つのトピック

 2018/08/04

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

スクラムのフレームワークの中身はスクラムガイドで定義されていますが、登場以来ずっと同じ内容なわけではなく、何度か改定が行われています(2010年版、2011年版、2013年版、2016年版、2017年版)。過去の改定内容はこちらに記載されています。

過去の変遷においてよく議論になる5つの項目についてWillem-Jan Ageling氏が5 controversial topics that were removed from Scrumという記事にまとめています。 御本人から快諾いただきましたので和訳にて紹介します。

スクラム再発見の時間です。

5年かそれ以上前にスクラムを適用した場合、現在のものとは異なる情報源を元にしていたはずです。 しかし、スクラムとして定義されてスクラムガイドで言及されたものの、ある時点で削除されたものが多数あります。 まとめて外されたものもあれば、他の項目に置き換えられたものもあります。 多くの人は、こういった項目をまだスクラムに関連付けています。 それ自体は仕方のないことです。 しかし、スクラムは進化しており、結果として、もはや関連付けは有効ではなくなっています。

ここでは削除されたり置き換えられたもののうち、議論になることの多い5つの項目を見てみましょう。 これらの項目を見ることで、スクラムがあなたの役にたつか再考したくなるかもしれません。

1. 鶏と豚

スクラムガイドの初版にはこんな話が書いてありました。

鶏と豚が一緒にいると、鶏は「レストランを始めよう」と言いました。
豚はちょっと考えてからこう言いました。「そのレストランの名前はなんというんだい?」。
すると鶏は言いました。「ハム・アンド・エッグスだよ!」。
豚は言いました。
「お断りだね。君は単に関わるだけだろうが、こっちは身を切られるんだ」

スクラムチームは豚です。 それ以外のすべては鶏です。 鶏は豚に対して仕事の進め方を指示することはできません。 しかし、この話は、必ずしも常に期待した効果があったわけではありませんでした。 かえって、スクラムチームとその「外部」との間に亀裂を生み出してしまうこともあったのです。

この話は、スクラムガイドの2011年版で削除されました。

2. スプリントで計画した作業に対するコミットメント(確約)

2011年の時点で、開発チームはスプリントで計画した作業に対して確約(コミットメント)はしないようになっています。 代わりに予測をたてます。

これは大きな変更です。 コミットメントは、スプリント中に新しい気づきがないことを暗示しています。 予測を使うことで、経験主義(透明性、検査、適応)を考慮に入れているのです。

3. グルーミング (追加後に削除)

2010年版のスクラムガイドでは、プロダクトバックログのグルーミングを単なるTIPSの1つとして紹介していました。 すなわちスクラムガイドの一部ではなく、スクラムでうまくいくプラクティスとして扱っていたのです。 2011年7月版のスクラムガイドでは、プロダクトバックログのグルーミングがスクラムに追加されました。 2013年7月版のスクラムガイドでは、グルーミングという単語がリファインメントという単語に置き換えられました。 グルーミングという単語にはネガティブな意味(例えば、チャイルド・グルーミング)があったためです。

※訳注:チャイルド・グルーミングは、子供を危ない世界に誘いこむために、子供の警戒心を解き手懐けること。

4. デイリースクラムでの3つの質問

かつて、スクラムガイドでは、すべてのチームメンバーが以下の3つの質問に答えるとしていました。

  • 前回のデイリースクラムから行ったこと
  • 次回のデイリースクラムまでに行うこと
  • 問題点

結果として、デイリースクラムは単なる進捗報告のイベントになってしまうことが多々ありました。 スプリントゴールやそれに向けてどのように進んでいるかを考慮していないこともあったのです。 このようにしているチームではデイリースクラムから効果を得られません。 デイリースクラムという名前にふさわしくないものにしてしまっていたのです。

そのため2013年度版のスクラムガイドでは3つの質問は以下に改められました。

  • 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が昨日やったことは何か?
  • 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が今日やることは何か?
  • 私や開発チームがスプリントゴールを達成するときの障害物を目撃したか?

これは大きな前進です。 しかし、チームが自己組織化していれば、デイリースクラムから最良の結果を得る方法はほかにもある、という結論に達しました。 そのため、2017年版のスクラムガイドでは、これら3つの質問はデイリースクラム実施時のオプションであるとして、スプリントゴールに注目している限り別の方法でやっても良いということを明確にしたのです。

5. スクラムマスターがデイリースクラムをリードする

Ken SchwaberとMike Beedleが2002年に書いた『Agile Software Development with Scrum』という本ではこう言っています。 「スクラムマスターはデイリースクラムを成功裏に実施する責任がある」。 そして、この本では、スクラムマスターがどのようにデイリースクラムを準備しリードするかについて詳しく説明しています。

2010年版のスクラムガイドでは次のように変わりました。 「スクラムマスターは開発チームにデイリースクラムを開催してもらうようにする。ただし、デイリースクラムを開催する責任があるのは、開発チームである」。

2010年版のスクラムガイド以降はこの記述は変わっていません。 開発チームがデイリースクラムの責任を担っており、開発チームは自己組織化してスプリントゴールに向けた進捗を検査するのです。 スクラムマスターは、デイリースクラムが15分以内で終わらせるようにコーチし、デイリースクラムが開発チームのためのものであることを組織に理解させます。 スクラムマスターは必ずしもデイリースクラムに参加する必要はありません。

それでは。

 2018/08/04