個人の投資信託保有残高が実は減っていた件を考える
ニュース自体はだいぶ前のニュースなのですが、このところ再び盛り上がってきたニュースがありますので取り上げてみたいと思います。決算以外でも金融関係のニュースは時々こうした面白い、ちょっと掘り下げたいニュースが流れてきますね。
さて、日銀の資金循環統計で個人の投資信託残高を誤計上していた問題です。ロイターさんの記事を引用するとこのように説明されています。
最も大きく変化したのは、ゆうちょ銀行を含む「中小企業金融機関」が保有する投信残高。17年12月末の金額は、6兆9981億円から43兆6116億円に増えた。
これまで、外国株式や外国債券で構成する国内組成の投信を「外国証券」としていたのを改め、投信残高に計上することにしたためだ。
家計の投信保有残高についても算出方法を見直した結果、17年12月末の金額は109兆1358億円から76兆4407億円に下方改定された。
けっこう大きな誤差がありましたね。毎日新聞さんも7月末にこのように報じています。
この際、昨年末時点で家計の投資信託保有額を実際よりも約33兆円多く計算していたことが判明し、家計の金融資産における投信の割合が近年低下していたことがわかった。
2012年末の第2次安倍政権発足後、家計の投信保有割合が上昇傾向にあるとみていた証券業界では動揺が広がっている。【小原擁】
アベノミクス以後、投資に資金が向いていた、投資信託が好調だったという流れに水を差されたということでしょうね。
次は産経新聞さんです。
17年末では109兆円とされた家計部門の残高は76兆円に変更。14年末の80兆円をピークに伸び悩んでいた。
日銀は「新たな資料を採用し精緻化した」と説明しているが、詳細を明らかにしていない。残高が大幅に減ったのは、ゆうちょ銀行が運用していた分を誤って家計部門に計上していたためだとみられる。
改定幅が巨額なだけに業界からは「政府が政策を検討する際の参考になるもので、影響は少なくないのでは」と指摘する声も出ている。
2014年末に80兆円だった家計の投資信託残高が実は2017年末で76兆円程度しかなかったということですね。原因はゆうちょ銀行の運用分をなぜか家計部門に参入してしまったということのようです。
個人の投資信託保有残高は減っていて良かったんじゃないでしょうか。
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また無責任なことを言いますが、むしろ投資信託の残高はいったん減っていて良かったのではないでしょうか。なぜかというと、もともと投資信託にはロクなものがないからです。
弊ブログで投資信託を取り上げ始めたのは実は昨年末ぐらいからです。
そうです、つみたてNISAが始まり、ようやく買える商品が出てきたからです。かくいう私も人生で初めて投資信託をつみたてNISAで買いました。
米国株ETFや個別株に比べて、あきらかな「ぼったくり」が多いのが投資信託でした。ダメな理由は以下に集約されます。
- 信託報酬が高い
- トラッキングする指数にロクなものが無い
- そもそもまともにトラッキングできない
- 毎月分配型のタコ足配当商品が多い
こういう商品が多かったのですね。今もすべてが解決されたわけではないですが、つみたてNISA登録商品を中心に、だいぶ良くなっています。いわば、投資信託業界はガラリと変わったわけです。
ただ、急にそういったよろしくない投信を持っている人が乗り換えられたとは考えにくいです。そういう意味では、これからも「ダメさに気づいた人たち」が解約する流れは続くと思います。
「99%の投信はダメ投信」と公言してはばからないファンドマネージャーさんもいられますが、そういうことですね。ただし、資金が減ったということは業界全体の市場が成長していない、縮小したことを意味します。
どこかで切り返して拡大したほうが良いのは間違いのないところです。
投資信託は自分で選ぶ視点をしっかり持とう
朝日新聞系のアエラに秀逸な記事が掲載されていましたので、転載します。
金融庁以上に激怒しているのは投資信託を主力商品として販売する証券会社だ。
「営業現場では、お客様に“投資信託はアベノミクス効果からどんどん伸びています。NISAも税制面で手厚い恩典があります”と、日銀の統計資料などを示して推奨してきた。そのベースデータが誤りだった、しかも30兆円超も少ないのでは、錯誤の勧誘となりかねない」(大手証券幹部)
と頭を抱える。
本当にこんなゆるい勧誘しているんでしょうかね。ちょっと分かりませんが、「みんなが買っているから買いましょう、個人保有残高が伸びていますから。」というのは問題ですね(笑)
推奨のしかたが間違っているんじゃないでしょうか。それこそ錯誤の勧誘です。いや、こういう論理だから2000年代に謎の商品が大量に売れたのかもしれませんね。
いずれにせよ、年収減・社会保障負担額増という、困難な時代を生き抜く私たちにとって投資が欠かせないのは間違いのないところです。みんなが買っているから買う、という視点ではなく、自分なりのリスクリターンを踏まえた資産運用をしたいですね。
そのためには、私たち自身も必要最低限の知識は持っておかなくてはいけませんね。
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