「利用者に言われて嬉しいセリフ」を自慢げに言う現場職員に感じること

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利用者に言われて嬉しいセリフは多々あります。

「あんたには何でも言えるし頼みやすい」
「あんたがいてくれたら安心するわ」

等々

現場職員としては介護冥利に尽きるセリフです。

そういうセリフを糧にしたり活力剤にして頑張っておられる人もいらっしゃるかと思いますが、私はこのセリフは対人援助の現場ではとても闇深いと感じています。

今回はその理由を書きたいと思います。



◆理由①「対人援助に「特別」は不要」

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こう見えて、私だって上記に書いたようなセリフを利用者から頂戴することはあります。

内心嬉しいと感じるものの「それはそれ」です。

対人援助法において、自分だけが特別な存在になってはいけません。

残念ながら、現在の介護保険制度では利用者は介護者を選択したり指定したり指名したりすることはできません。
もちろん、その逆も然りです。

つまり「統一した介護」が求められているのです。

ですから
「自分だけが利用者にとって特別な存在になってはイケナイ」
のです。

もちろん、愛想の良さや表情や性格の違いは現場スタッフ個々で違ってはくるでしょうが、それはあくまで付加価値です。

現状では付加価値に対価が発生しない以上、「自分がそうすることで仕事がしやすくなる」というものでしかありません。

もっと言えば、「仕事がしやすい付加価値を共有して統一したケアができるのが一番良い」のです。

ですから、自分だけが「特別」を求め自己満足をしているようでは、組織人としては失格だと言えます。


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◆理由②「利用者の年の功」

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利用者は我々より明らかに長い年月を生き、相当な経験を積んでいる人生の大先輩です。

重度の認知症者は別として、ある程度クリアな利用者は我々ごとき若輩者でコワッパな人間の心を掌握することはお手のものでしょう。

つまり「お世辞や社交辞令を言って相手を気持ちよくさせること」に長けています。

それが、ひいては
「自分を特別扱いしてくれるかもしれない」
という内心があるかないかは別として
「当たり障りが無く、むしろ褒めておけば自分が損をすることもないだろう」
ということも熟知しています。

あなたが言われている褒め言葉は、他の職員にも同じように言っているセリフなのかもしれません。

それが良いか悪いかはさておき、要は
「あなたは踊らされている」
のです。

利用者の褒め言葉に良い気分になり、やる気が出るかもしれません。

「ありがとうと言う言葉があれば何でもできる」
「ありがとうが最高の対価」

という業界の方針に一致します。

しかしよく考えて下さい。

「「ありがとう」だけでは食べていけません」
「あなたの活力は「ありがとう」のセリフがないと発揮できません」
「「ありがとう」を求めるばかりに過剰なサービスを提供してしまいます」


現在の介護保険制度の中では、当たり前のことを当たり前にこなしていれば「ありがとう」の一言くらいは引き出せます。

問題なのは
「自分が良くみられたい」
「自分は特別な存在になりたい」
「自分は他の職員とは能力もサービスの質も違う」

という驕りが存在し、そこに利用者の年の功と業界の訳の分からない方針につけ込まれているだけなのです。



◆まとめ

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介護が必要な利用者に援助を行っているわけですから、「ありがとう」の一言や感謝の心を持って欲しという気持ちもわかります。

しかし、闇を感じてしまうのは
「私は利用者からこんな特別なセリフを頂きました」
「私はきっと利用者にとって特別な存在です」

と言わんばかりに公言する現場職員の存在です。

それって本当に必要ですか?

そういう自負を持っているのなら、現場全体でそう言ってもらえるような情報の共有や対応の検討を行った方が業界のためにもなるでしょうし「本当の専門性」だと感じます。

というのも、私は利用者から特別視されるようなセリフを頂くと、もちろん嬉しい気持ちはありますが、それ以上に「自分のやり方は間違っていたのかもしれない」という反省の思いが湧いてきます。

ましてやそれを自慢げに他人に話す気にもなりません。

本当に大切なのは「ケアチームで統一した介護をどうやって共有し実践していくか」だと思っています。

(追伸)
この考え方は、現在の介護保険制度下での私の思いです。
今後もし、介護のオプションだとか指名料だとか成績によって評価されるシステムが出来ればこの限りではありません。



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