俺は超越者(オーバーロード)だった件   作:コヘヘ
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時折、全力で明後日の方向へ、斜め上の発想する元骨。

詳細を聞いたツアーが正気を疑ったそれ。

だが、しかし、確実に『世界平和』に近づくのだ。これが。


閑話 天才魔法少女キーノちゃん(262歳)ドキドキ!潜入工作!!

帝国魔法学院のとある教室。

 

父の意向もあり、私は生徒として学院に編入することになった。

 

 

…という設定だ。

 

ゴウン様が帝国皇帝を脅し、無理やり『貴族の娘』になった私。

 

人化の指輪とかいう強力なマジックアイテムまで使い、

 

発想が全力で斜め上の潜入任務だ。

 

 

 

…本当にゴウン様が考えたんだよな、この作戦?

 

 

 

「皆さん。今日から新しい生徒が皆さんと一緒に勉強することになりました」

 

ああ、私は本当に何でこんなことをしているのだろうか…

 

 

「では、入っていただきます!」

 

いかん!気を付けなければ。

 

ゴウン様の作戦に支障があってはならない。

 

そう、私は飽くまでその辺にいる『天才少女』だ。

 

…父が『アレ』だが。

 

 

「今日からお世話になります。キーア・シルバー・シス・ブレッドです!

 

 これから皆さん宜しくお願いします!」

 

そうクラスの面子ににこやかな笑顔を見せる私。

 

 

挨拶は『本音』だ。

 

 

ああ、『盟主』にな。とっとと死ね。

 

 

「はい。ありがとうございます!」

 

担当教師は何もわかってないのだよな。

 

 

「彼女は何と若干十二歳で第三位階魔法を使える天才なんですよ!」

 

おお…と声が上がる。

 

まぁ、そうだろうな。普通。

 

アルシェとかいう娘にも確認したが、やはり普通十二歳で第三位階魔法とか有り得ない。

 

…私は本来第五位階魔法を使えるが。さらにいえば、260年は生きているが。

 

 

「さらに、何と御父上は、あの偉大なる学長様、

 

 モリアーティ・シルバー・シス・ブレッド様です!

 

 皆さん。決して偉大なる学長様のご息女様に失礼のないように!!」

 

学長様って、そいつあの『教授』だぞ。

 

『時代』の敵だぞ。

 

誰か止めろ。

 

 

…私個人は、ゴウン様がお許しになっているのだ我慢しよう。

 

 

しかし、だ。

 

「「「はい!全ては偉大なる学長様のために!!!」」」

 

帝国魔法学院の全員が『教授』に洗脳されている。…一部除くか。

 

しかし、まだ学長に就任して一月も経っていないのにこの有様か。

 

 

もはや、『手紙』なくてもいけるのではないか?確かに確実な『手』だが。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

一か月前、私は疲れ切っていた。

 

『魔王』の魔の手から王女を救おうとする女神官のリーダー、ラキュース。

 

同調する筋肉、ガガーラン。

 

アンデッドなら『不能』に違いないから王女とアレコレしたいと平然と宣う忍者、ティア。

 

 

五人中三人が『魔王』に無理やり突撃しようとしている。明らかに無謀だ。

 

 

 

…それに『魔王』はおそらく安全だ。

 

 

 

かつて、リーダーの言っていた『存在』と同じなら、

 

弱者を甚振る真似はせず、寧ろ助ける『お人よし』だそうだ。

 

 

…『教授』は喋っていると突然切りかかる『貧乏人』と評していたので、

 

人物像に当て嵌まらない気がする。

 

 

 

なので、真実を確かめる為に、私は奮闘した。

 

が、その度に緊急出動や依頼が入る。

 

…放っておけば民間人に被害が出る可能性があった。

 

 

断れるわけがないだろう!

 

アダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』が!!

 

 

 

ついにようやく、『リ・ブルムラシュール』で怪しい動きがあると聞き、

 

『魔王』との関係かと思い急いで駆けつければ、王女の兵士達、

 

さらに『クライム』が立ちふさがった。

 

 

…『蒼の薔薇』を止めるために。

 

 

倒していくわけにもいかず、もたもたしている間に、

 

『リ・ブルムラシュール』の怪しい『二人組』はもぬけの殻になっていた。

 

 

あのとき、私は悟った。あの王女、完全に隠す気がない。

 

 

ラナー王女自身が私達を、『蒼の薔薇』を『魔王』から遠ざけている。

 

 

『悪』の『魔王』ならこんな回りくどいことするはずがない。

 

 

もう面倒臭くなった私は、王女はもう幸せなのではないかと言ってみた。

 

…火に油を注いだだけだった。

 

 

 

…『魔王』様。助けてくれ。私、アンデッドなのに限界に近い。

 

 

 

そう毎日心の底から祈っていたら、楕円の『闇』が現れた。

 

 

そこに、例の『魔王』が現れた。

 

 

私は歓喜した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「蒼の薔薇のイビルアイ。私は『魔王』アインズ・ウール・ゴウン。

 

 君に取引があって来た。

 

 対価は二つ、まず一つは君の仲間達の暴走を止めることだ」

 

おお!

 

 

「う、受けます!私もう限界なんです!!あいつらをちょっと黙らせてください!!」

 

『仲間』を売るわけではない。

 

…ちょっと黙って欲しいのだ。

 

アイツらが、私に、毎日どれだけ精神を疲弊させているか!

 

 

「う、うむ。わかった。

 

 というより私を探してくれていたみたいなのに申し訳ない…

 

 まさか、ラナーが私の知らぬ間に接触する機会を全て潰していたみたいでな…」

 

やはり、そうか!

 

 

あの王女、アレが『本性』なんだ。

 

 

『教授』の豹変ぶりを知っている私にはわかる。

 

というかあんな感じだったから、違和感元々あったが。

 

 

ラキュースが悲しむな…

 

 

「すまない。言い訳だった。許して欲しい」

 

そう言って頭を下げる『魔王』。

 

ああ、久しぶりにまともな会話ができるのがこんなに幸せだとは…

 

いかん。そうじゃない。

 

 

「あ、頭を上げてください!

 

 一国の王足る者が軽々しく頭を下げてはいけません!」

 

そうだ。この方が原因じゃない。

 

 

『原因』は『腹黒王女』の方だ。絶対間違いない。

 

 

「ありがとう。では、本命なのだが、いいか?」

 

ああ、もう一つあるのだったな…

 

 

いかん!混乱し過ぎて、『提案』を丸のみしてしまった!

 

相手は『魔王』だ。仲間達が危ないかもしれない。

 

ああ、私は何て愚かなことを…

 

 

「…最後まで聞いてから、改めてどうするか返事をしてくれ。

 

 最初の混乱から察するに、私のせいで、君は相当疲れている。

 

 何なら日を改めてもよいのだが…」

 

…私は何故、この方を疑ったのだ。

 

 

この目の前の存在からは、圧倒的を感じる。

 

…最低でも、『白金の竜王』と同等以上の存在なのはわかる。

 

 

『策』など用いなくても、私達『蒼の薔薇』を強引に引き込めるはず。

 

 

…だから、『取引』なのだ。本当に。

 

 

「お気遣いありがとうございます。今ここで話してください」

 

そう告げる。覚悟はできた。

 

 

「イビルアイよ。いや、『キーノ・ファスリス・インベルン』。

 

 君は『国堕とし』として、法国に狙われているな?」

 

どきん、と動かないはずの心臓がなった気がした。

 

つけている仮面で隠れているが、動揺が隠しきれない。

 

 

…私の本名がバレている。正体もだ。

 

 

「何用か。返答によっては、私も覚悟はできている」

 

『魔王』でも恐れはしない。

 

『蒼の薔薇』の、皆の迷惑には変えられない。

 

 

「対価の二つ目、私は君を法国から守ろう」

 

どきん、と心臓がなった。顔がやたら熱い。

 

…だが、勘違いだ。この方はどう見てもアンデッド。

 

私を求めているわけではない。

 

 

…私の『力』が欲しいという意味だろう。

 

 

「そうだな、私の感情が読み取りにくいか…ではこうしよう」

 

そう言って『魔王』は『人間』になった。

 

もしかして…

 

動くはずのない心臓が高鳴る。

 

 

私の『力』ではないのか?私自身を…

 

 

「これなら、私が本心から言っているとわかるかな?

 

 私は、君を、『法国』から守りたいのだ」

 

ここまで情熱的な『告白』をされたのは初めてだった。

 

胸が高鳴り、顔が、体が熱くなる。

 

アンデッドだからありえないはずなのに。

 

 

私が落ち着くのを見計らったかのようにゴウン様はおっしゃった。

 

 

「そこでだ。君には、『法国』と『とある人物』とで、ある作戦に従事してもらいたい」

 

…私が『法国』と共同作戦?

 

それは有り得ない。私は『国堕とし』。

 

 

彼らからすれば私を滅ぼすしかない。私だってそうする。

 

 

「ああ、そうか信用ならないか…」

 

気を落とされる『魔王』様。

 

いかん!何故私はこの方を疑った!

 

 

「す、すみません!あまりに急な話なものだったので!」

 

私は全力で謝罪をする。

 

ここまで『告白』してくれた殿方を疑うなど女として、何と恥ずかしい。

 

胸がときめく、世界が輝く。

 

ああ、『世界』とはなんて美しい…

 

 

「私は、『ズーラーノーン』の『盟主』を捕らえると『死の神』スルシャーナと約束した」

 

『ズーラーノーン』。

 

 

その名は決して、忘れるはずがない。

 

…私が吸血鬼になった最大の原因だ。

 

 

あの『盟主』が行った、私の故郷を死の国へと変貌させる実験のせいで、

 

私の『負のエネルギーをあらゆる物へ変換する』タレントが暴走した。

 

 

…私は『吸血鬼』となり、タレントを失い、一人ぼっちになってしまった。

 

 

皮肉にも、私に真の意味で、手を差し伸べたのは、あの『教授』だった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

あの時、『教授』は私の目を見て語った。手を差し伸べた。

 

 

「君も『世界』を見よう。きっと『未来』は明るい。

 

吸血鬼だろうが、何だろうが受け入れてくれる『世界』。

 

それが、私の『夢』なんだ。だから、一緒に行こうよ!」

 

 

…そう言いながら真実では、『世界』の『時代』を破壊しようとした『教授』。

 

 

あの時、最後の戦いで、真実が明るみにでて、

 

『時代』の敵となった『教授』と私は戦えなかった。

 

 

たとえ、それが『邪悪』だったとしても。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

…我ながら感傷に浸ってしまった。

 

 

ゴウン様の提案を受けよう。

 

…私の、全ての『因縁』に終止符を打とう。

 

 

「構いません。私の『因縁』に終止符を打ちたく思います」

 

私は覚悟を決める。もはや如何様な作戦でも受け入れよう。

 

 

 

「それでは、対価の二つは必ず果たそう。

 

 …そろそろ何だが。まぁいいか。

 

 君に『とある人物』と協力して、『盟主』のいる場に潜入して貰いたい」

 

ズーラーノーンの『盟主』がいる。

 

…どのような修羅場だろうが地獄だろうが、死ぬ覚悟をしよう。

 

 

全ての『因縁』に結末を。

 

 

…一つ、気になる。

 

「協力者とはどなたですか?」

 

私は素直に疑問を投げかける。

 

ゴウン様を疑うわけではない。

 

…私の実力が足りているのかの方を心配している。

 

 

すると、

 

 

突如、私のいる部屋の扉を破壊する音が響きわたる。

 

…これでは宿中に響き渡らないか?

 

 

 

「おのれ、『魔王』!まさか本当にラナーを暗黒の衣に包ませていた何て…

 

 うらや、いや、許せない!!」

 

ラキュースが顔を赤らめて突撃してきた。

 

 

「え、いや、ちょっと待て、『静寂(サイレンス)』

 

 『魔法最強化・人間種束縛(マキシマイズマジック・ホールドパーソン)』」

 

ゴウン様は、これ以上騒ぎを大きくしないように

 

『静寂(サイレンス)』を発動しているが、あれは意味がない。

 

 

もう十分響き渡っている。

 

 

ゴウン様は、多分相当慌てている。それがわからないくらい。

 

 

ズガンという音を立てそうな勢いで、ラキュースが地べたに転がる。

 

必死に動こうとしているが全く動けないようだ。

 

 

...いや、待て、『静寂(サイレンス)』は神官の使える隠密用の魔法だよな。

 

第二位階魔法とはいえ。

 

 

...ラキュースを助けるべきだと思うが、

 

先ほどの行為は、明らかにゴウン様の自己防衛といえる。

 

 

...どうしたら良いか判断に迷う。

 

 

「…俺は、蒼の薔薇を穏便に説得するように命じたよな?」

 

そう言って扉の先を睨みつける。

 

 

コツコツと何者かの足音がする。

 

 

「いや、ここまで『純情』だとつい揶揄いたくなってね。

 

 大丈夫だよ。

 

 『王女様』をたっぷり可愛がっていることをちゃんと、きっちり教えてあげたから」

 

 

その声はこの行為を一切、悪びれもしていない。

 

…どこかで聞いた『声』がする。

 

 

「おい、『教授』さんよ。本当にクライム食っていいんだな?」

 

ガガーランが目を輝かせている。

 

クライムがヤバい。が、それどころじゃない。

 

…この『声』は。

 

 

「「お姉さま!ショタとロリに満ちた理想郷とは本当ですか!!」」

 

双子が戯言をほざくが、そんなの気にならない。

 

 

「ああ、『全て』約束しよう。大丈夫、そこの『魔王』が保証してくれる」

 

そう言って現れたのは、

 

かつての『時代』の敵であり、『世界』を救おうとした『黒幕』だった。

 

 

 

「お前、ふざけるなよ」

 

ゴウン様が懐から何かを取り出して、ボタンか何かを押す。

 

 

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

滝にでも突き落とされたような絶望的な悲鳴を上げる『教授』。

 

 

苦しみながらも、彼女はゴウン様を睨みつける。

 

 

「やめろ、本気で痛いんだよ、苦しいんだよそれ!

 

 しかも、そのスイッチ、三人で持ちやがってこの『貧乏魔王』!

 

 覚えていろ!覚えていろよ!いつか絶対、絶対に仕返ししてやるからな!!」

 

涙目で床を転げまわる『教授』。

 

 

 

だが、私が今まで見たことがないほど彼女は楽しそうだった。

 

 

 

「やれるものならやってみろ。愛玩動物(ペット)。

 

 貴様は今やハムスケと同列…いや、ハムスケの『後輩』だと知れ」

 

そう言い放つゴウン様。

 

 

 

…私もいつか『ああ』なるのだろうか?

 

それはそれで構わないが。




最後のペットでも構わない発言について、

イビルアイは完全に疲れています。
さらに『教授』とかオーバーヒートして、もうそれで良いかと思いました。
モモンガ様は釈明しました。コイツ大罪人だから、仕方がなくやっていると。






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