ロシアの博物館から盗まれた「スタッフ」猫、無事帰還 ソーシャルメディア歓喜

クリス・ブラムウェル、イゴール・サザノフ BBCソーシャルニュース、BBCモニタリング

猫のベゲモートには専属の医者とスタイリストがいる Image copyright Bulgakov House Museum Theatre
Image caption 猫のベゲモートには専属の医者とスタイリストがいる

ロシアの博物館から盗まれてしまった名物猫がその日の内に無事に帰還し、心配していたファンは大喜びしているが、本猫は「不満顔」だという。

モスクワにあるブルガーコフの家博物館はフェイスブックで、博物館に住み着いている黒猫「ベゲモート」が盗まれてしまったと明らかにした。来館していた女性が猫をつかんで走り去ったのだという。

博物館が1日朝に警察に通報したところ、「ベゲモート」はその日の夜に見つかり、ソーシャルメディアで大勢が喜んだ。

「ベゲモート」とは、ミハイル・ブルガーコフの人気小説「巨匠とマルガリータ」に登場する言葉をしゃべる黒猫の名前。13年前から博物館に住み着いた猫に、その名前がつけられた。

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博物館の広報担当によると、戻った猫は元気でけがもないが「不満顔」だという。ただし、「報道陣や来館者の質問は喜んで受け付ける」そうだ。

シベリア猫とペルシャ猫の合わさった黒猫は、博物館で厚遇されている。住み込みの「スタッフ」と呼ばれ、「専属の医師とスタイリスト」がついていると言われる。

ベゲモートが盗まれたと報告したフェイスブック投稿は2800回シェアされ、2400件の反応があった。

ツイッターでは、モスクワ南地区消費者委員会のマクシム・カザンスキー委員長が、「ブルガーコフの家の職員が誘拐された! 猫のベゲモートが見知らぬ女に盗まれてしまった。現在の居場所についてなにか知っている人は、ブルガーコフの家に連絡を」と呼びかけた。

ロシアの報道機関もベゲモート探しに加わった。テレビ局「ドーシチ」はツイートで、盗んだ犯人を「厳しく非難」し、「情報を広めて、猫を博物館に戻そう」と呼びかけた。

ベヘモートの帰還はロシアの全国ニュースになった

ベゲモートの帰還はロシアの全国ニュースになった Image copyright Bulgakov House
Image caption ベゲモートの帰還はロシアの全国ニュースになった

夜になって猫が発見されると、博物館はベゲモートの写真をフェイスブックに投稿し、「怒りの声に犯人たちは怖くなった」のだろうと書いた。

作家アレクサンドル・ペレービンさんは、ものすごく心配していたとツイートした。写真家のイェフゲニー・フェルトマンさんは、猫の発見を知ると「巨匠とマルガリータ」の作品世界になぞらえて、「博物館から誘拐された猫が見つかった。猫は、ボランドの催眠術にかけられたのだと言った」と書いた(ボランド博士は作中で悪魔の化身と考えられている)。

大変な経験をした猫を思いやり、一緒に撮った写真を投稿するファンもいた。

ブルガーコフ、ベゲモート、巨匠とマルガリータとは?

作家ミハイル・ブルガーコフは1891年にキエフで生まれ、1940年にモスクワで死去した。

医師を経て小説や戯曲を書くようになり、当初は評価されるが、スターリン政権下で次第に出版を禁止された。

「巨匠とマルガリータ」は1930年代のソ連における暮らしを描いたもので、生前には出版不可能だった。1960年代になって検閲版がようやく発表された。

1930年代のモスクワとキリスト生誕当時のエルサレムが舞台。「ボランド博士」に扮する悪魔、抑圧された小説家の「巨匠」、そして他の男性と結婚しているものの巨匠を愛する「マルガリータ」が登場する。

物語に出てくるベゲモートは、2本足で立って歩き、皮肉屋で、チェスとウォツカが大好きな大きい黒猫だ。

(英語記事 Cat stolen from Russian museum found after social outcry

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