なぜ炎上?HIKAKINが飼い始めた人気猫種の、知られざる悲しみ

人間の勝手が作りだしたものだった
友森 玲子 プロフィール

かわいいしぐさも痛みが関係していた

スコティッシュフォールドが人気の理由は外見だけではない。性格も穏やかで、愛らしいしぐさにもファンは多い。もっとも特徴的なのは、通称“スコ座り”と呼ばれる、後ろ足を前に投げ出した座り方だ。人間のようなしぐさで、SNSなどにもよく写真が投稿されている。

これが「スコ座り」 Photo by iStock

しかしこの座り方は、脚に体重をかけると痛いため、彼らは苦渋の策として、脚を前に投げ出しているだけだ。また、プレーリードックのように“後ろ足だけで立ち上がる”しぐさも、痛みでジャンプができないがために、立ち上がって遠くを見ているしぐさでもある。“穏やかでおとなしくあまり動かない”のも、脚が痛かったり、関節に異常があるため活発に動けないだけなのだ。

彼らの痛みを理解せずに、そんなしぐさを単に「かわいい」と喜んで写真を撮る人間を、猫たちはどう感じているのだろうか? 撫でられるのが嫌いなスコティッシュフォールドも多く、痛みに耐えながら「そっとしておいて……!」と人間に訴えかけているのかもしれない。

 

海外では繁殖禁止もあるが、日本では……

スコティッシュフォールドには、さまざまな身体的問題が発生するにもかかわらず、「ペットショップで売っているじゃない」、「飼っているけどうちの子は元気だし」と思う人もいるだろう。しかし、遺伝疾患に関しては、さまざまな研究機関や医療機関でも問題視している。イギリスの猫の品種登録団体GCCFは、1974年から、繁殖すべきではないとこの種の登録を取りやめている。

ところが、日本では規制は一切ない。逆に、人気品種の猫ということで、無制限に繁殖が行われている。ブリーダーの中には、軟骨異常が強く出る折れ耳同士の繁殖を禁止する倫理を設けているところもある。しかし、ペットショップの多くは、立ち耳タイプは売れ残るため、折れ耳タイプを仕入れたがる。そのため、もっとも障害が出てしまう折れ耳同士を繁殖させ、大量に人気の品種を生み出す、という流通が止められないのだ。

しかも、スコティッシュフォールドと暮らしている人の中にも、この問題があることを知らない人も非常に多い。私が運営している施設内の動物病院にもスコティッシュフォールドと飼い主が治療に来るが、関節疾患などが多いため、医療費がかかり、介護が必要になる可能性が高いことも覚悟の上で迎え入れたのか、と聞くと、「そんなことは知らなかった」、という人がほとんどだ。

さまざまな治療で、高額の医療費がかかった人の中には、「ただかわいい猫を飼いたかっただけなのに……」と後悔する人もいる。つまり、販売時にペットショップでは、スコティッシュフォールドが持つ遺伝的リスクについて十分な説明を行なっていないことが推察されるのだ。