大副業時代の到来が日本企業や社会に迫るものは何か。昭和女子大の八代尚宏特命教授は戦後しみついてきた日本的雇用慣行の変革につながると話す。副業拡大の真の意味合いと効果を聞いた。
(聞き手は山田宏逸)
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日経ビジネスは、読者が自分の意見を自由に書き込めるオピニオン・プラットフォーム「日経ビジネスRaise(レイズ)」を立ち上げました。その中のコーナー「提言・私たちの働き方」では、「副業のリアル」を議論しています。
提言・私たちの働き方 No.02
副業のリアル お金と時間と場所の現実
副業の効果をより高めるために必要な条件とは何か。その対価と働く時間、場所をはじめとした副業の現実にきちんと目を向け、未来への改善点と最適解を探っていきましょう。実例や様々な意見を聞かせてください。もちろん、途中参加も新たな問題提起も大歓迎です。
いわゆる「良い副業」を広げるために何が必要でしょうか。
八代尚宏・昭和女子大特命教授(以下、八代氏):副業が良いか悪いかと入り口の議論をしているだけではもったいない。副業する・しないは「原則自由、例外規制」という考え方のもと、「どういう副業ならしてはいけないか」というネガティブリストの作成を各企業で急ぐ必要があります。しかもそのリストは、企業の機密を漏らしてはいけない、信用低下につなげてはいけないなど最低限なものにすべきです。
副業には大きく分けて2つあり、1つは昔からあった、自分の専門分野とは関係なく「単に収入を増やす」ための仕事。それはそれで悪くはないですが、政府が音頭をとってあえて推進するほどのことでもありません。やはり大事なのは2つ目の「専門職型副業」。自分のもっているスペシャリティーをいかし、本業以外でも働く機会をどう広げるかですね。
どのような手法が望ましいのでしょうか。
八代氏:労働力不足の時代になると、限られた「人材のシェア」も必要です。この際、雇用契約を2つの会社で結ぶと、社会保険料の事業主負担の問題が出てきます。最初の企業だけが保険料を負担し、副業先がフリーライド(ただ乗り)する。また、労働時間の管理責任などもとても面倒です。副業には雇用保障は要らないので、本業は雇用契約、副業は自営業的な請負契約を組み合わせるのがスムーズではないでしょうか。
「働きすぎ」への懸念もあります。
八代氏:どうでしょうか。自発的に働く副業をそこまで管理・規制しても…という気がします。たとえば夜中までお酒を飲みすぎてしまった場合にも、翌日以降の本業に悪影響を及ぼします。子供じゃないのだから何時間寝ないとダメと規制するのではなく、本業のパフォーマンスが低下した時点で評価が下れば良いのではないでしょうか。職場への届け出を前提として、原則自由だと思います。
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