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デニステン選手の死を巡る(ゆづファン的に)不愉快な記事について考えてみる その2
2018年07月28日16:50
今日、朝日カルチャーの田中さんの「特別編」の追加講座の募集がありましたが、今回も見事に撃沈でした(笑) 砂漠期なのでなおさらかもしれないけど、それにしてもすごいわ・・・。こりゃ、ちょっと会場のキャパを考えてくれない限り、大阪の朝日カルチャーでは、田中さんの講座は、今後受講できなさそう(汗)
さて・・・昨日、田村さんの記事について、ゆづファンとしての不満点をあげてみました。
今度は、ボストン事件当時、田村さんがどういうコラムを書いていたのか、振り返ってみます。
同じくNumber Webから。ボストン事件だけでほぼひとつの記事になっていました。
羽生結弦が見せた桁違いの強さ――。世界選手権SPで見せた驚異のメンタル。(20160331 Number Web)
日本時間の3月31日、マサチューセッツ州ボストンで開催された世界選手権の男子SPでは、ソチ五輪王者、羽生結弦がその強さを改めて世界に見せつけることになった。
ショパンのメロディにのって冒頭の4サルコウ、4トウループ+3トウループのコンビネーション、そして得意の3アクセルをきれいに降りて、力のこもった完ぺきな演技だった。110.56という点が出ると、会場は割れるような歓声につつまれた。
公式練習で大声をあげた羽生結弦。
演技直後にミックスゾーンの記者たちの前に現れた羽生は、屈託のない笑顔を見せてこう言った。
「もう気持ちよく滑りました。精神状態は皆さん見てわかったように、ちょっとぐちゃぐちゃでしたけど……」
羽生の言う「ぐちゃぐちゃ」の理由は、もちろんその日の昼間の公式練習での出来事を指しているのに違いなかった。
サブリンクで行われていた練習中、音楽に合わせてランスルーをしていた羽生のステップの筋道の中央でスピンをしていたデニス・テンに、大声で「それはねえだろう! お前!」と日本語で叫ぶという、異例の出来事があったのだ。羽生はその後、得意のアクセルで転倒。悔しそうに壁を手で叩いた。
テンによって繰り返し中断された演技。
練習中に、選手たちが接触しそうになったり、実際にぶつかってしまったりということはたまに起きることだ。だが通常の場合は、双方に非がある、お互い様ということで穏やかに収まってきた。
だが、羽生が感情的になったのには理由があった。
その前日も羽生の音楽がかかっている最中に、2度ほどテンの不注意によって練習を中断され、終わってから注意を促す言葉を交わしたのだという。
公式練習では音楽のかかっている選手が優先とされているが、かといって他の選手は止まって見ている訳ではない。音楽に合わせて滑っていたスケーターが、ほかの選手に道筋に入ってこられてジャンプを途中で諦める、という程度のことは珍しいことではない。だが何度も繰り返されたテンの無神経さに、羽生はブチ切れてしまったのだ。
羽生が怒りを露わにした理由とは。
「あれは多分故意だとは思うんですけれどね……」と羽生は少し言葉を捜した。ビデオで見直して、変だと思っていたのだという。
羽生は昨シーズン、中国杯の6分間練習の最中に衝突事故で大怪我をしただけに、彼自身は以前にも増して周りに注意を払っているように見える。
そんな羽生だけに、自分だったなら他の選手に対して決してやらないであろうことをされたという思いが、怒りになって表れたのに違いない。
だがテンは、本当に故意で羽生の練習を妨害したのだろうか。
困惑の表情を見せたテン。
「確かに前日、(羽生と)このリンクはちょっと狭いよねという会話は交わしました」とSP演技後にミックスゾーンに現れたテンはそう語った。
「でも正直に言うと、そんなにギリギリの危ないところではなかったと思うんです。以前にスケートアメリカで、(町田)タツキとぶつかりそうになって、あの時は本当に申し訳ないことをしてしまったと反省した。でも今回は、そこまでの状況ではなかったと自分では思っているのですけれど……」と戸惑ったように口にしたテン。羽生に怒鳴られて驚いたかと言うと、ためらいながらこう答えた。
「正直に言うと、ちょっと。でもみんな緊張していますから、人によって反応の仕方が色々あるのでしょう。誰も怪我しなくて良かったです」と言葉を結んだ。
たまに出てくる「故意の妨害」論。
今回に限らず、ある選手が故意に練習の妨害をした、という議論はたまに出てくる。
1992年アルベールビル五輪では、女子のSP(当時はオリジナルプログラム)の当日の公式練習で、フランスのスリヤ・ボナリーが伊藤みどりのすぐ近くで競技では禁じられているバックフリップを着氷し、明らかに伊藤の精神を乱すためにやったのだと批難されたことがあった。伊藤みどりはその日の本番で転倒をして4位になり、フリーで盛り返したが銀メダルに終わった。
だがボナリーがそのとき何を考えていたのか、それは神様と本人にしかわからないことである。何となく調子にのって、あたりかまわず得意技ですっきりと練習を終えたくなっただけかもしれない(それでも伊藤が大迷惑をこうむったことに変わりはないのだが)。
今回のテンにしても、単にちょっと無神経なうっかり者なのか、妨害の意志があったのか……最終的には本人にしかわからない。筆者がこれまで何度も直接取材をした印象では、テンはそのような策謀にたけているしたたかなタイプの選手には思えなかった。
逆境をモチベーションに変えた羽生の強さ。
だがはっきりしていることは1つある。この不快な一件さえ、モチベーションに変えてしまった羽生の強さはやはり尋常ではないということだ。
「今日は緊張しましたが、いつもより緊張の質がちょっと違って、自分の中で心の中でぐちゃぐちゃしていたというのはありましたが、それも踏まえてこの一番大きな舞台、世界選手権でこの演技ができたのは良かったかと思います」
会見で中央に座りながら、あの演技直後の凄まじいばかりの迫力とは打って変わり、ニコニコと笑顔を見せた羽生。
やはり底知れない強さを秘めた桁違いのアスリートである、と改めて思い知らされた。
読めばわかりますが、最初は、結弦くんに寄り添っているように見せかけながら、「
だがテンは、本当に故意で羽生の練習を妨害したのだろうか
」と疑問をなげかけ、テン選手側のいい分を挟みつつ、「
単にちょっと無神経なうっかり者なのか、妨害の意志があったのか……最終的には本人にしかわからない
」と前置きしながら、「
筆者がこれまで何度も直接取材をした印象では、テンはそのような策謀にたけているしたたかなタイプの選手には思えなかった
」とテン選手をかばい、あたかも結弦くんが神経質すぎるかのような印象操作をしています。今回は、さらにヘイトメールのことまでもちだして、若くして亡くなったテン選手への同情をひいているように見えました。
当時の日本のマスコミは、どっちにつくという感じでもなく、状況を面白がっているように見えましたが、特にテン選手寄りに見えたのが、田村さんのコラムでした。反対に、はっきりと「練習妨害」について言及してくれたのが、宇都宮直子さんのコラムでした。
宇都宮さんは、雑誌「SPUR」のスケートコラム「スケートは人生だ!」の2016年6月号と7月号の2回にわたって、ボストンワールドの結弦くんの状態について書いてくれました。とても良いコラムで、当時の結弦くんの辛い状況が詳細に書かれています。フィギュア雑誌でなく、ファッション誌の片隅に掲載されたコラムなのがもったいないほどでした。その中で、ボストン事件についても書かれた部分がありました。
SPUR 2016年7月号 「スケートは人生だ!」連載第5回より、ボストン事件の部分だけ抜粋します。
ボストン。魔の1日を振り返る
”選手を守るためにも、正規サイズのリンクは必要だ”
今回の世界選手権には「残念だった」ことがまだある。氷の質が悪かったのもそうだし、リンクが狭かったのもそうだ。ボストンのリンクはノースアメリカンサイズといわれるアイスホッケー用のリンクで、国際スケート連盟の規定より幅が4メートル狭かった。そこへ4回転を数種類跳ぶ世界のトップ選手が揃うのである。4回転を跳ぶにはそれなりの助走が必要になる。練習時の狭さは、想像に難くない。
「幅の狭いリンクでは衝突の危険も増します。選手を守るためにも、正規サイズは必要だと思います。世界選手権終了後、羽生が練習時に集中を欠いていたという指摘がありましたが、それは間違いです。羽生が周囲を気にしないはずがない。中国で選手と衝突してケガを負って以来、あの人は人一倍注意を払っています」(城田氏談)
ボストンでは、進路妨害の問題が実際に起きた。羽生には気の毒な状況だったと思う。私見だが、おそらくこの問題はリンクの幅だけでは解決しない。長く、長くこの競技を見てきて、(故意であるか否かは別にして、男女を問わず)進路妨害を「ある」と感じる。
国際スケート連盟は、もうそろそろバランスの取れた策を講じるべきだ。少なくとも、選手間の「暗黙の了解」にいつまでも甘えるべきではない。
批判はしない。でも、声をあげる。問題提起する。
婉曲な書き方ながら、スケート界に「進路妨害がある」とはっきり書いてくれたのは宇都宮さんくらいだったかも。長く、長くフィギュアをみてきた宇都宮さんが「ある」と感じているのなら、田村さんも感じていたはず。1度や2度なら「たまたま」と偶然を主張できることでも、回数が重なれば「故意」だと言われても仕方がない。
「故意」にもいろいろあります。まず思い浮かぶのは「やってやれ」とはっきり意識してなされる「故意」。それとは別に、「未必の故意」というものがあります。「行為者が、罪となる事実の発生を積極的に意図したり希望したりしたわけではないまま、その行為からその事実が起こるかも知れないと思いながら、そうなっても仕方がないと、あえてその危険をおかして行為する心理状態」というもの。
まあ、最大限にテン選手を擁護するとしても、この「未必の故意」の心理状態はあったと考えます。言えるのは「悪意」というのは、本人がはっきり意識している場合だけではない。意識下に潜んでいる場合もあるということ。「未必の故意」・・・これはなかなか曲者です。やってることは同じなのだけど、本人的には「故意」ほどの罪悪感がない。「そんなつもりではなかった」という言い訳もしやすいのです。
私は、田村さんのように「うっかりなのか、故意なのかは神のみぞ知る」とは思っていません。私は、あの進路妨害は、意識した「故意」だと思っています。百歩譲ったとしても「故意なのか、未必の故意なのかは神のみぞ知る」というところがせいぜいです。どっちにしても「故意」には違いありませんし、やってることは同じですが。
テンはそのような策謀にたけているしたたかなタイプの選手には思えなかった
・・・これも、私のテン選手の印象とは違います。ソチ五輪の後、韓国開催の五輪をにらんで、突然テン選手が「自分のルーツが韓国である」ことを主張しだしたり、キム・ヨナの事務所に入ったりしたときは、「あれ、けっこう策略家でしたたかなのね」と思ったものでした。テン選手のピークは2013~2015年あたりで、それ以後は選手としてはあきらかにピークアウトしていました。でも、平昌五輪の「金」に野望をもっていたのは確かだと思います。ただ「真・四回転時代」に、彼がついていけなくなっただけです。
人というのは多かれ少なかれ裏表があります。田村さんの言葉に嘘はないのかもしれない。でも、田村さんに向けた顔だけがテン選手のすべてではないはず。それは、生きていれば、誰しも覚えがあることではないでしょうか。
「死者に鞭打つこと」が本意なのではありません。ただ、ベテランのライターが、結弦くんに対して間違った印象操作をするような記事をあげたのであれば、それに対する反論はすべきだと思いました。結弦くんの名誉に関わることですから。
ボストン事件に関しては、もしまとまったら、続きを後日に書くかもしれません。まだまとまってないのと、楽しくない記事は疲れるので(笑)、少し時間をおくと思いますが。
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