「日本でコスプレがしたかった」――。警視庁大井署は31日、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで、カナダ国籍のキャバクラ嬢ウォン・シャノン容疑者(29)と、建築作業員の佐々木導成容疑者(37)を逮捕した。ウォン容疑者が住んでいたカナダでは、アニメやコスプレがなかなか受け入れられなかったために「日本に住みたかった」と供述しているが、果たして本当なのか? 事情通は異なる背景を指摘する。

 2016年6月、ウォン容疑者らは共謀して、結婚する意思がないのに横浜市の区役所に虚偽の婚姻届を提出した疑い。また、入管にも虚偽の書類を提出したとして、大井署は7月11日に入管難民法違反(虚偽申請)の疑いで2人を逮捕していた。容疑を認めている。

 同署によると、中国系カナダ人のウォン容疑者は留学生として来日。ビザが切れる直前に、東京・歌舞伎町で開かれたコスプレイベントで佐々木容疑者と知り合ったという。

 捜査関係者は「女の容疑者が『日本人の配偶者がいれば長く滞在できる。相場では100万円と聞いた』と持ちかけると、男の容疑者は『70万円でいいよ。月々3万円の分割払いで』と了承。偽装結婚の“契約”を結んだ」と話す。佐々木容疑者が入管や区役所への申請方法をインターネットで調べて、その知識をウォン容疑者に授けたという。

 佐々木容疑者の目的が金銭にある一方で、ウォン容疑者は警察の調べに「ロリータファッションやコスプレ、アニメが好き。安全な日本で稼ぎながら、いろいろなファッションをしたかった」と供述しているという。

 コスプレのために偽装結婚とは、なんとも珍しいケースだ。中国系2世のウォン容疑者は「私が住んでいたカナダでは、ロリータの格好やアニメを好きなことが受け入れてもらえなかった。金髪に染めることさえできなかった」と話しているそうだ。

 あるコスプレイヤーは「海外でもコスプレ人気はどんどん高くなって、レイヤーにも“市民権”が与えられてきています。ただ、日本の田舎ではいまだにロリータの格好に対する冷たい視線はあるし、海外でもそれは同じです。カナダではコスプレができるイベントは日本より少なく、国も広いからイベント会場に行くのにも苦労する。日本の方が活動しやすかったのは確かでしょう」として、ウォン容疑者の言い分に一定の信ぴょう性があると話す。

 だからといって、コスプレしたいがために偽装結婚することはありえるのだろうか。

 偽装結婚事情に詳しい関係者は「バレて逮捕された時の口裏あわせにすぎない。コスプレは後付け」と指摘し「趣味でコスプレを楽しんでいたのかもしれないが、不良外国人が日本で目指すのは安定した稼ぎ。それしかない。自分の戸籍を売って金が欲しい日本人と、日本人の身分が欲しい外国人を結ぶブローカーが両者をつなぎ、仲介料を受け取っている。今回もその類いだろう」(前同)

 仮にブローカーが存在しなかったとしたら、2人は偶然に出会ったのか。警察でも両容疑者が知り合ったとされる歌舞伎町のコスプレイベントの実態は把握していない。

「キャバクラや風俗でよくある『コスプレデー』だって、コスプレイベントのひとつ。そんなところだと思う」(前同)

 歌舞伎町のキャバクラで働いているウォン容疑者が住む西新宿のマンションの住人は「金髪で水商売然とした服装だった。何か後ろめたいことがありそうで、絶対に目を合わせてこなかった。けっこう体格がいいから、朝の4時とか5時に帰ってくるのは階段を上る『ドス、ドス』という音でわかった」と話した。