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伝えても伝わっていない
鹿野川ダムの管理所は、7月7日の午前4時15分から緊急放流を開始する7時35分まで5回にわたり、ダムの操作に関して大洲市にファクスで通知した。さらに、午前5時10分から3回、市長との間のホットライン(直通電話)で緊急放流の可能性を伝えた。2回目の午前6時20分のホットラインでは緊急放流の予定時刻を連絡し、3回目の6時50分には最大放流量の見込みも示していた。
ところが、最大で毎秒6000m3放流するとの情報をホットラインで得ていた大洲市は、大きすぎる数字にどのように対応していいのか分からず、しばらく様子をみる判断をした。
その後、緊急放流の5分前になって避難指示を出したが、住民に対してダムの放流に関する情報は発信していなかった。そのため多くの住民は、放流の影響で肱川の水位が急激に上昇することを認識していなかった可能性がある。
これまで、ダムや河川の管理者から市町村への情報伝達はファクスに頼ることが多かった。しかし、豪雨の際の混乱時には、情報が担当者に伝わらないことも起こり得る。そこで、情報を素早く確実に伝達するため、全国でホットラインの構築が進められている。
愛媛県の肱川でも、国と県、市町村が2016年3月に協議会を設立し、大規模氾濫に備えた減災対策を検討してきた。その一環でホットラインの導入も進めたが、大洲市では十分に生かされなかった。
検証委員会の委員を務める愛媛大学大学院理工学研究科の森脇亮教授は「現行の制度で伝えられる流量の数字だけでは、川の水位や被害がどうなるのかを理解しにくい」と情報伝達の問題点を指摘する。