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【社会】

ボクシング不正疑惑 会長、判定に圧力か 審判員「ひいき選手有利に」

 日本ボクシング連盟が管轄する公式戦で不正判定の疑惑が出ている問題で、現役の審判員が本紙の取材に対し、連盟の山根明会長からの不当な圧力を感じ「採点で迷うような接戦では、会長のお気に入りの選手に(有利なポイントを)入れるようにした」と証言した。アマチュアボクシング界で絶大な権力を持つ会長の意向が勝敗を左右していた可能性が浮上した。 (森合正範、中川耕平)

 連盟関係者有志が七月二十七日付で日本オリンピック委員会(JOC)などに送った告発状と、本紙が入手した告発状の添付資料によると、山根会長の圧力で審判の判定がねじ曲げられた公式戦の事例は少なくとも三件あったとされる。二〇一五年に開催された全国大会の決勝では、山根会長が試合前の審判員ミーティングで一方の選手を名指しして「活躍の場所を与えてやったが、結果に出ていない。世代交代だ」と発言。審判員に圧力をかけ、正当な判定をさせなかったとしている。

 また告発状などによると、山根会長はひいきにしている選手や、会長がかつて県連会長を務めた奈良県の選手の試合には自身の指示に従う審判員を配置したり、意に反する判定を下した審判員を怒鳴りつけたりしたこともあった。意に反する判定をした場合、大会途中に帰宅させられたり、次の大会に呼ばれなくなったりするという。

 このため現役審判員はひいきの選手や奈良県の選手の試合が接戦になると、「会長のお気に入りの選手に入れるようにした」と本紙に説明。「会長から怒られたり、帰らされた審判を何人も見ているので従うしかなかった」と話した。

 別の審判員は、不正判定に直接かかわったことは否定しつつも「奈良の選手が負けたと思っても勝っていることはたくさんある。奈良の選手が負けると、試合後のミーティングですごく会長が怒るのでみんな奈良の試合はやりたくないと思っている」と証言した。

 これに対し、日本ボクシング連盟は公式サイトで、告発状について「事実と異なる部分が多くあり、一連の報道も正しい事実関係を反映しているとは言えない」と反論する声明を出した。また一部判定の疑惑が指摘されている試合については「ボクシング審判に対する不信を煽(あお)るものであって断じて容認できません」と不正判定を否定している。

 本紙は山根会長の携帯電話に複数回連絡をしたが、電話に出なかった。

 告発した都道府県連盟の幹部や元選手ら三百三十三人でつくる「日本ボクシングを再興する会」は近日中にも会見を開き、詳細を公表する方針で、山根会長の退会を求めている。

 日本連盟は国内のアマチュアボクシングを統括する団体。山根会長は一一年四月に現職に就いた。〇〇年のシドニー五輪では代表監督も務めた。

 

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