黒田日銀はこれから窮地に陥る可能性がある

実質は「利上げ」「株買い入れ縮小」政策?

黒田総裁は市場を欺いたのか? 筆者は「日銀は大規模金融緩和の出口に踏み出したが、いずれ窮地に陥る可能性がある」という。どういうことか(撮影:大澤誠)

2018年7月31日、日本銀行は大規模金融緩和の出口へ大きく一歩踏み出した。長期金利を引き上げ、株式の買い入れを事実上縮小するというもので、これは画期的な政策変更だった。

ついに日銀は金融緩和の出口へ大きく踏み出した

ところが、メディアも市場参加者も日銀の大きな政策変更を認識せず、現状維持に近い政策と受け止めた。なかには「緩和の枠組み強化」という日銀の使った文言を真に受けて、緩和強化と受け止めた投資家もいて、株価はいったん上昇、長期金利は大幅低下、円安も進んだ。

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市場の受け止め方はまったくの誤りである。

海外の投資家が、今回の日銀の政策をハト派、すなわち、緩和に傾いた政策となったと判断したのは、事前の緩和終了予測が強すぎた反動だ。

これはある意味まともな予測だった。アメリカは着実なペースで利上げを進め、欧州ですら、量的緩和の終了を宣言し、出口にはっきりと向かい始めた。日本は欧州以上に景気は順調だから、緩和を続ける理由はなく、また量的緩和の規模がまさに異次元で、欧州とは比べ物にならないほど中央銀行のバランスシートが膨らんでいる。

したがって、欧州よりも量的緩和を終了する必要性は強く、欧州よりも早いタイミングで、また急速に量的緩和を縮小するのが、景気調節を目的とした普通の金融政策の観点からは当然だったにもかかわらず、これまで大規模緩和を続けてきた。

このような状況の下、7月に日銀が物価の見通しについて見直しを行うと表明していたことから、政策を見直し、緩和をはっきりと縮小し、長期金利ターゲットの引き上げもありうると、大多数の海外トレーダーは予測していた。しかし、利上げどころか、金利に関するフォワードガイダンスの導入で利上げは少なくとも2019年10月の消費税引き上げの影響が落ち着くまでない、ということで2020年以降になるという見通しとなり、マーケットはいったん円安、株高、金利低下となったのである。

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  • NO NAME3b0ca3db6ba5
    窮地?になるならば、それは国民が被る事になる

    御上と政治家は責任なんて取らずに、税金として負担が増えるだけ

    見えている事です
    up15
    down3
    2018/8/2 19:31
  • NO NAMEaefe9452fb3c
    長期金利はすでに0.145%金利まで上がりましたね。
    投げ売りが出てきてこれに拍車がかかり、評価損がかさんで破綻する銀行が出てくるということもあるのでしょうか?
    ただ、国債の需要は今でも旺盛だと思うので、新発債は順調にさばけて急激な金利上昇にはならないのでしょうか。
    そのへんのところも解説いただきたいです。
    up7
    down1
    2018/8/2 19:23
  • NO NAME9bbd18db19d2
    日銀は、イールドカーブコントロールと称する量的緩和を長期間維持すると宣言し、そのため、銀行に飴を与え、長期金利の調整幅も0.1%厚くした。
    政府・日銀による円安誘導への飽くなき熱意がアナウンスされ、僅かな長期金利上昇は円高に繋がらないとの読みは的中し、直後円高は静まった。市場は新たな均衡点に向かうが、これを混乱とは言わない。政府や経済界の円安継続への期待に応えた日銀は殊勲甲とされるであろう。
    ただ、円安利益に溺れた企業は技術革新や高付加価値化への投資等を怠る。成長停滞の素となり、賃金増加も止まる。一人当たりGDPは、シンガポール、香港に先行され、台湾、韓国に迫られている。
    周辺国は、低賃金雇用拡大を失業率低下とはしゃく日本をゆでガエルと冷笑しているであろう。技術開発から取り残され、低賃金を売り物とすれば、先進国脱落となる。これが、円安目的の金融緩和による本当の副作用である。
    up0
    down0
    2018/8/2 22:59
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